見出し画像

弱さは力。弱い人は人の力を引き出す。

もうすぐ、私の76歳の誕生日だ。
歳を重ねてよかったことの一つに、弱くなったことがある。
気力も弱くなったし、体力も弱くなった。

強くないので、弱音もはけるし、仕事もさっさとこなせない。
自分の気力体力に自信がないから、強がりは言えない。
若い人たちが、きびきびと仕事をこなしている姿を見ると、尊敬の念を抱く。
みんな偉いなあ。
本当にありがとうと思う。

何でもできると思っていた傲慢さは、すっかりどこかへ落としてきた。
障害のある長女の、大変さがよくわかり、毎日、電車とバスを乗りついで通所する長女は、本当に偉いなあと感心している。

体力もなくなってきているから、すぐにごろんとして横になる。
私は、フローリングの床に横になるのが大好きである。
食器を洗っただけでも、疲れるから、ごろんとしていると、長女がお皿を拭いて戸棚にしまっているのが見える。
母が弱くなると、手伝うものなんだなあ。

ずーっと強い母親でいたけど、弱い母親になってよかったなあ。
気持ちも楽だし。
自分のできないことがわかってきたから、上手にサービスを使ったりする。
何でも自分で抱え込まないから、知り合いの人たちが増えていく。

今、私が優先してやることは、心を穏やかに過ごすこと。

なんでこんなことを考えたかというと、映画監督の伊勢真一さんの記事を新聞で読んだからだ。
てんかんと知的障害の姪の奈緒ちゃんのドキュメンタリー映画
「大好き~奈緒ちゃんとお母さんの50年~」が完成した。奈緒ちゃんシリーズの5作目である。
1作目の上映の時、東中野のポレポレ座で伊勢監督にお会いしたことがある。
上映の後、監督とお話ししたい人はカフェにどうぞというので、ウキウキしてフェへ行った。
監督は尋ねた。
「映画に力はあるだろうか?」
私は真っ先に答えた。
「映画は生きる力になります。」

あれからもう5作目。
奈緒ちゃんには波の会(てんかん協会)のキャンプでお目にかかったことがある。
私の長女と同じ年。
その頃のお母さんたちは、みんなパワフルだ。
だって、何もないんだもの。
なんでも自分たちで作らなければならなかった。卒業後の作業所も、居場所も。
奈緒ちゃんのお母さんも、私もみんなパワフルで強かった。

奈緒ちゃんのお母さんは、心臓の手術をして、今は、奈緒ちゃんに手を引かれて坂道を上っているのだそうだ。
よくわかる。

監督は語る。
「弱いものほど力があるんだよね。
弱い人は誰かの手助けが必要だから、その誰かの力を引き出す。
引きだす力を持っていることってすごいよね。」

時に面倒と思う相手に関わることで、自身の力が引き出される経験。
これはすごいことだ。

長女はたくさんの人の力を引き出してきたのだ。
長女の周りにいる人たちが、みな、やさしくて、穏やかで、素敵な人たちであるということ。
これは偶然なんかでなくて、長女が引き出してきた力の数々なんだと思う。


いいなと思ったら応援しよう!

ecco
よろしければ、サポートお願いします。老障介護の活動費、障害学の研究費に使わせていただきます。