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お地蔵さん

ふんわりほっぺのお地蔵さん。
 私の家の前、道路に面して立っています。
道路は桜並木で、花のころには、それはそれは美しく、お地蔵さんを飾ります。何といっても、桜吹雪が、お地蔵さんに舞い散る景色は、息をのむほど美しい。
レンガ風の歩道には、足を止めて、お地蔵さんに見とれる人が絶えません。

保育園のお散歩のかわいらしい子供たち。ノンノさん、ノンノさん、と呼び掛けていきます。

  毎日欠かさずやって来るおじさんは、リハビリ中なのでしょうか。去年は片足を引きずりながら、ゆっくりゆっくり、歩いてきていましたが、この頃は、ずいぶん、歩き方がスムーズになってきました。そして、ご自分でつんだのでしょうか、両手に野の花をしっかりつかんでいます。初めのころは手も不自由だったようで、片手で花を持っていたのですが、最近は両手にしっかりと力を入れて持っています。花を、お地蔵さんの前の花立に入れて帰っていきます。

何らかの理由で、不自由になった手足のリハビリに、自宅からお地蔵さんまで散歩をしているのでしょう。

通学の時間帯を外してしまった、中学生が息を切らして走っていきます。

一人ではまだ通学できなくて、毎朝、父親に手を引かれて学校に向かう小学生。

みんなと反対方向へ行く、特別支援学校の生徒。

朝も昼も夜も、道行く人を温かく見守るお地蔵さん。どこのどなたか、小銭や、キャンディを供えるかたも。

皆に愛されるお地蔵さんですが、ある日事件が起こりました。

 ある朝、お地蔵さんの首がなくなって、首なし地蔵になっていたのです。どうやら、ギャンブル好きの人が、お地蔵さんの首をもって、かけ事に向かったのではないかということでした。昔から、ばくち打ちがお地蔵さんの首を懐に入れてかけ事に向かうということよくあるそうなのです。考えてみれば、この辺りは、競馬、競艇、競輪とギャンブルに事欠かない街です。

 けれど、首のないお地蔵さんは、とっても不気味.あんなに、愛されていたお地蔵さんの無残な姿。すぐに、石屋さんに、新しいお地蔵さんを作ってもらいました。それが今のお地蔵さん。私が知っているだけでも、三代目。もしかしたら、江戸時代からあるようなので、もう何代目なのか、わからないくらい。

首を取ったばくち打ちはどうなったのか、たまに考えます。

これからも、町の人を見守ってくださいね。私の家族も。

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