「だあーいすき!」
長女は里芋のお味噌汁が好きです。
まんまるな顔でまあるいお芋を食べていると、三女が聞きました。
「里芋、好きなの?」すると長女は、
「だあーいすき!」と元気な声で答えました。
本当に里芋が大好きなんだなあと伝わります。
「だあーいすき!」という声を聞いた人は、なんだかとても幸せな気持ちになります。
そして、里芋のお味噌汁を作った私も、うれしくなります。
楽しい食事の時間です。
長女は小さいころ、本当に「食べない子ども」でした。
偏食というよりも、食事に関心がなく、ただただ、目を三角にして、とんがっていました。
じっとしておらず、走り回り、追いかけまわす方はへとへとになりました。
一日中走って、夜は寝ないでいるのに、「食べない」のです。
とにかく育てにくい子でした。
児童精神科医に相談したら、
「ポテトチップスしか食べていない子もいるからねえ。」という答え。
食事の無理強いはよくないので、何とか、食に興味を持ってもらいたい一心でした。
当然、長女はがりがりに痩せていました。
今の長女からは想像もできにくい姿です。
中学3年の時、特別支援学校に転校してからのことです。
週に一度「畑学習」の日がありました。
甲州街道に面して校庭が狭い学校でしたので、隣の市の特別支援学校の敷地を借りて、畑を作っていました。
隣の市の特別支援学校は、米軍基地の跡地で、敷地がとても広かったのです。
「畑学習」の日は、朝からリヤカーを引いて、甲州街道をえんやらえんやら、隣の市の特別支援学校の畑に行きます。
日中は畑作業をして、そこでお弁当を食べ、また、リヤカーを引いて、えっちらおっちら、学校まで帰るのです。
畑学習の日に、お弁当におにぎりを持たせてみました。
それまで、長女は、お弁当といえば、ツナサンドしか食べなかったのです。
小さなおにぎりでしたが、たくさん歩いて、屋外でたくさんおひさまをあびたせいでしょうか。
初めておにぎりを食べたのです。
中学三年生で初めておにぎりを食べたのです。
それでも食べるペースは遅くて、長野への宿泊学習の帰りは、松本駅で配られたお弁当を、八王子に着くまで食べていたそうです。
かつて苦行であった食事は今では楽しい時間になっています。
「あしたのきゅうしょくは、なあに。」と献立表を見ながら聞いてきます。
園から帰ってくると楽しみにしているおやつです。
おやつは毎日ところてんです。
私も聞いてみました。
「ところてん、好きなの?」もちろん返事は
「だあーいすき!」