見出し画像

アーティストがマネージャーを雇う意義

マネージャーというと一般的に一番最初に思い出すのは、タレントさんのマネージャーでしょうか。複数人を一人で受け持って、スケジュールの管理、イベントの企画や準備、撮影の同行、未来を語り合うなど、、そういうことをしているのかな。タレントさんのマネージャーさんとお話をしたことがないので、実際どんなことをしているのか私にもわからないのですが、なんとなくこんな感じなのではないかなあなんて思います。

とはいえ、マネージャーというのは他にもおりまして、モデル事務所のマネージャー、カメラマン・ヘアメイク事務所のマネージャー、文化人が多く集まる事務所のマネージャーなど、結構色々な事務所があって、マネージャーと一言で言っても結構幅広くいらっしゃいます。恐らくやっている事は大きく変わったりはしないのではないかと思うけれど、それぞれのジャンルにそのジャンルなりの暗黙のルールみたいなものがあって、それに長けた方達です。

私の場合はヘア&メイクアップアーティストとフラワーアーティストをやっていて、どちらもメディア出演が多い方達なので、アーティスト活動とタレント活動の両面がある人達をマネジメントしています。

私がマネジメントという仕事で独立できたのは、とてもひょんなことでした。「もっとヘアメイクのことばっかり考えていたいから、手伝ってくれない?」と、そういう依頼だったのです。正直最初は、言っている意味がわかるようなわからないような。でもそれは早々と「あーそういうことか」と思うようになりました。

アーティストに来るお仕事の依頼は様々

どんな仕事でもお問い合わせから始まるけれど、「アーティスト」という肩書きの人たちに来る仕事に関しては、何をやってほしいかというのが超絶ざっくり依頼がきます。

ヘアメイクの場合は、タレントさんのヘアメイクをしてほしい、ウェディングのヘアメイクをしてほしい、雑誌の企画でモデルのヘアメイクをお願いしたい、雑誌の企画に監修者として出てほしい、うちのブランドのイベントに出てもらえないか、一緒にコラボ商品を作りたい…など。

フラワーアーティストの場合は、イベントでの装花をお願いしたい、ブランドノベルティを作ってもらえないか、ワークショップをやってもらえないか、ブランドとのコラボレーションは可能か、インタビュー記事に出演してもらえないか…など。

私がマネジメントする二人の業務依頼内容はだいたいこんな感じです。

依頼慣れをしているところはある程度しっかり依頼内容を決めて連絡をくださるけれど、ほとんどのところがあまり慣れていなかったり、「何ができるか」ということ自体がアーティストによって違うこともあるので、本当にざっくり連絡が来てしまいます。なので、まずは先方のやりたいことをヒアリング、その上でアーティストができることを提案し、受けられるようであれば落とし所を作って行くという感じになります。

フリーランスで仕事をしている方はこれを一人で全てやることがほとんどだけど、アーティストの皆さんにはこれが結構負担であることは、今の仕事をするようになってすごく理解ができました。

お仕事依頼の問い合わせに対するやり取りは超重要

よくフリーランスあるあるで言われるのが、仕事を受けた後、色々打ち合わせも重ねたつもりだったけど、どんどん想定と違っていって結果すごく大変だった、ギャラ以上の仕事になってしまったというもの。これに関しては、アーティストも同じようなことに出会うようです。ライターさんやデザイナーさんもそうだと思うけれど、「作品を作る」という仕事の人は特にこれに出会いやすい。もちろん仕事を全うするために自分では色々聞いたつもりなのに、なんか違ってしまった、自分の本領を発揮できなかったという状況になることが多々あったと聞きます。

多くの場合、作品を作る仕事の人たちに問い合わせをする人というのは、自分でそれができないから頼むわけですが、依頼をする人は「相手の領域、技術がわからない」ということが多くて、それに対して依頼をされる側は「相手の希望と自分の求めらる技術のすり合わせがうまくできない」ということが多発します。この溝を埋められないまま話が進んで行くので、結果締切だけ来てしまってどちらにとってもパーフェクトじゃなかったということが起きてしまう。これがフリーランスあるあるの根源。私はそう見ています。

アーティストってやっぱりアーティスト

じゃあそういうことがないようにするためにはどうしたらいいのかって考えると、私は自分の仕事を通して、「アーティストはクライアントと自分の間に誰か一人エージェントをおいたほうが安全・安心・ハイクオリティの確保につながる」と思うようになりました。

表現することが世間に認められて「アーティスト」という仕事でお金を稼げる人たちというのは、やっぱり表現者です。彼らにとっての大事な場所は「作品をハイクオリティで提供すること」。もちろん相手の希望をしっかり聞くのも大事だけれど、それを聞いた上でどういう作品に仕上げるのかというところが一番大事なわけで、ヒアリングの部分に大きな時間を割いたりストレスを抱えたりするのは、やっぱり負担が大きいんだなと思います。

ましてや自分が作り出すものなので、自分の技術に遠慮が出たり、相手に寄せ過ぎてしまったりすると、逆に相手にハマらなかったりする。それもそれでお互いにもったいないことに。

だからこそ、問い合わせに対するコミュニケーションの部分は、自分の技術を知ってくれている「信頼できる誰か」に任せた方が、物事がスムーズで、ストレスが少なく済むはずなんです。

私のマネージャーとしてのやり方

他のマネージャーさんたちどういう感じかわからないですが、私に関して言えば、私はマネージャーであり、エージェントです。

元々広告代理店で仕事をしていたので、クライアントの要望を一旦全部聞いて、どういう形で返すかというのはとても得意なところでした。広告代理店で知識で勝負する部署にもいたし、営業もやったからこういう能力が搭載されたという感じですが、クライアントも、業務発注する社内スタッフも、自分も三方良しというのは昔からのモットー。誰か一人でも「なんかピンとこなかったな」という状況で仕事を終えるのは嫌なので、そうならないように立ち回るように。それが今でも生かされていると思います。

アーティストサイドに立って、アーティストのできること、仕事状況、将来性なども見込んだ上で仕事を受けて、クライアントサイドに立って、希望を全てヒアリングして、それに対してアーティストが提供できるもののイメージをざっくり伝えておいたり、こんなこともできますよ!という、アーティストに対して想定していなかった新しい提案をする。こういうことをしていると、お互いに「良い仕事にできた」と思って終えられることが多いはずです。

私はエージェント体質なので、クライアント側の事情をしっかり聞いた上でアーティストを説得することもあるけれど、その結果としてアーティストサイドがやったこともないことにチャレンジできたり、結果として次に繋がる仕事を得られたりすることもあるので、それはそれで良いかなと。アーティストも外部からの刺激で新しい自分に出会うこともあるので、そういうのも面白いなと思います。

マネジメント料はストレス軽減の外注費

フリーランスで仕事をしていると、作品を作る仕事の人たちはアイディアで稼いでいるので、あまり仕入れ経費がないという人もいるのでは。もし利益が出てしまって困るなあ、という人は、自分の作品作りの過程にストレスを感じることがあるならば、外注としてマネジメントを雇った方が良いように思います。格段にストレスは減るんじゃないでしょうか。

自分と合うマネージャーと出会えるかというところはあるけれど、私は今後フリーランスが増えていくだろう今の世の中で、きっと私の仕事はもっとやる人が増えるだろうなと思います。ざっと見ているだけでも「困っている人が結構いるなあ」って思いますから。

メールのやり取りだけでも大変、契約書の話になったら難しすぎてわからない、ギャランティの交渉がうまくできない、お金は大切なはずなのに請求書を作ったり入金管理をするのは面倒…とか「小さな困ったなあ」を集めて、それを解決できる人に任せるとずいぶん違うはず。

あと、フリーランスだからこその「ひとりぼっち」というところからも抜け出せるはずです。愚痴はあっても、フリーランス同士であって話すのでは「あるある」くらいにしかならないけど、日々一緒にいてくれる人がいるからこそ解消できる愚痴っていうのもあるじゃないですか。そういうのも共有できますよ(笑)

もっと自分の仕事のことばかりを考えていたいなら、雑念・雑事を払うために外注するのはオススメ。経費のうまい使い方もフリーランスなら考えてみては。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?