児童精神科医の気になる論文:新型コロナウイルス感染症と年齢
児童精神科の外来をしていると、とても心配している子もいますし、正しく理解している子もいます。ニュースなどを見ていて、若い人はかからないと思い、子どもたちの多くはコロナにかからないと思っている子もいるようです。世界中の研究者たちが新型コロナウイルス感染症と戦うために日々研究を重ね、多くの知見が集まってきています。今回はそのうちの一つの論文を見てみたいと思います。
1. Davies NG, Klepac P, Liu Y, et al. Age-dependent effects in the transmission and control of COVID-19 epidemics. medRxiv. 2020:2020.03.24.20043018. doi:10.1101/2020.03.24.20043018
この論文のスタートは、COVID-19の確認された症例の分布は、年齢に強く依存しており、小児の症例は特に少ないことがわかっています。ここから始まります。先程、私が述べたことと一緒ですね。
このような特徴を示す理由として、年齢が低いほど感染しにくく、感染しても臨床症状が現れにくいためと考えられると指摘しています。この研究では報告された症例の年齢分布、および親密な接触者間での感染を調査した研究データに適合した動的伝播モデルを用いて、COVID-19に対する年齢特異的な感受性、およびCOVID-19の完全な臨床症状を呈する感染の年齢特異的な割合を推定しています。
結果
20歳未満の人は20歳以上の人に比べて感染しやすく、10~19歳では感染の79%が無症状または不顕性であるのに対し、70歳以上では31%であることがわかりました。もちろん、他の研究と同様に流行中に得られたデータにより、この結論が変更される可能性も指摘しています。図にあるようにこれは日本に限ったことではなく、世界のあらゆる国で起きている現象と言えるでしょう。
この結果はCOVID-19の感染を軽減するための学校閉鎖の有効性について、他の呼吸器感染症に比べて学校閉鎖の効果は低いかもしれないと指摘しています。また、予想される臨床症例の世界中での負担についても考える必要があるでしょう。
ただし、この論文ではどうして子どもに感染が少ないかは解明していません。それについては他の論文でいくつか指摘されていますので、後ほどご紹介したいと思います。