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子どもの医療費は公費で良いのか

小児医療受給券を持つことで、医療費はかからないというのが一般的な感覚のようです。しかし、そこには莫大な労力と費用がかかっており、それは税金で賄われています。個人的には、子どもは国の宝ですので、この制度自体には賛成をしています。

公費でいいところ

私が児童精神科を始めた頃には、この公費での支払いという制度がありませんでした。ですので、必要に応じて入院治療を進めたりしてもその費用が払えないということで治療を受けられないことがありました。また、薬代も馬鹿にならないということで、希望されないなんてこともありました。それを考えると、今の制度は多くの子どもたちを救っていると思います。私の知るメンタルヘルスの世界ではそうだろうと思っています。

ちなみに、抗ADHD薬はとても高いです。1錠で400-700円ぐらいします。それの3割負担でも大きな出費になりますが、それもカバーしてくれるのはとてもありがたいことです。ただ、高校生になった瞬間から、高いのでこの薬は・・・と言われることもあります。

公費でよくないところ

一方で、お金の支払いがないということで、医療という行為に対して対価が発生している感覚が乏しくなります。これは治療に向き合うという点ではとても問題です。無料で受けらられる治療、すなわち治療を受ける側はそれが当然という感覚になってきてしまう場合があります。フロイトも多くの対価をその診療でとっていましたし、それが治療の必要性を考える機会にもなっていたと私も思います。

医療機関はどこも苦しいです。新型コロナウイルス感染症でさらに難しい局面に立たされています。自費診療の形式で心理面接などを行っているクリニックも散見します。収益に寄与するように皆が知恵を絞っているところですが、実費が発生すると聞いた瞬間にそのプログラムや検査を諦めることも度々経験します。

子どもの医療はタダという感覚が、逆に治療に向き合わせていないところもあるかもしれません。また、その感覚だからこそ、発達障害を少しでも疑ったら、病院受診をすぐに希望するようになったのかもしれません。

子どもがメンタルヘルスの問題で適切な医療を受けられる時代へ

現在の小児医療費の制度は基本的に賛成しています。ただし、対価を目に見える形で支払うことが少ない現状で、自分の課題に向き合っていく機会を意識して作っていくことがこちら側にも求められているのかもしれません。社会制度は変わっていきます。それに合わせた支援の方法を検討していきたいです。