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児童精神科に愛情論は不要

この記事は色々と気になりますが、特に最後に書いてある一段落がとても気になります。

もちろん自傷行為がエスカレートしたり長期間続くようであれば、一度専門医に相談することをおすすめします。しかし、それまで様子を見ていく上では、子どもをたくさん愛してあげることが一番の対処法です。決して「これだけ愛しているから大丈夫」「ここまでしてあげてる」とは思わずに子どもをたくさん抱きしめ、たくさん愛してあげましょう。

私が児童精神科医をする上で師匠に言われたことの一つに、「愛を語るな」というものがあります。

「もっと愛してください」、「愛情が足りません」と言われてしまったら、どんなに愛情豊かに育ててきても、なかなか反論できないものです。それは愛情とは主観的なものだからです。こういうことを全面に出してく治療者は、自分の治療がうまくいかないことを、愛情が足らないというロジックで置き換えているだけではないかと思います。もっと自分の治療を論理的に自己批判的に考えるべきでしょう。

専門家であれば、病態を論理的に説明し、どのような治療が、いかなる理由で必要かを説明しなくてはなりません。愛情が足りないから抱きしめてあげてください、では全くの情緒的な世界であり、主観的な評価です。こういった治療者は、うまくいけば、「ほら言ったとうりでしょ」、というでしょうし、うまくいかなければ愛情不足論にすり替えます。

子どもの問題行動を評価するには、その子の発達的な特徴や家族構成、そして育ちと考えていく必要があるでしょう。抱きしめるという行為一つをとっても、一部の自閉スペクトラム症のお子さんは、感覚過敏で抱きしめられることが嫌いかもしれません。どうしてそれがこの子に必要なのかという論理がなく、愛情不足という論理で全て抱きしめて解決というほど、人の心は問題は単純ではないでしょう。

外来をしていると、愛情論で子どもの問題を指摘されて、深く傷ついてきた保護者に出会うことがあります。その言葉の重さを発言した助言者たちは思い知るべきだと思います。

 アラフィフになった今、愛情論で子どもの問題を述べるべきではないと深く思いますし、それは虐待であっても愛情論でなく、アタッチメント理論をしっかりと理解して説明できるようになっておくべきでしょう。