使える!フランス語辞書 紙版
ボンジューる(ひらがな表記はRの発音です) 、まりです!
フランス語を勉強する時に必須なアイテムと言えば、まずはともあれ、仏和・和仏辞書です。
現在では、いわゆる「紙辞書」の他に、アプリや電子版などのデジタル辞書も加わったことで選択肢も広がり、それぞれが微妙に懐をえぐられる値段でもあり、一体どれを選べばいいのー?! という悩みってありますよね。
現在の仏語学習時間・レベルによっても「使える」辞書は移り変わっていくものですし、使い方も変えていく必要があります。
そこで今回から、紙版・デジタル版いろいろな辞書を見て、違いを比べてみたいと思います。
仏語辞書だヨ!全員集合〜!!と、うちにある紙辞書を並べてみたら、15冊ありました。文法辞典とか料理辞典とか日本語学習者向けフランス語辞典とかギリシャ神話の神様辞典とか(むちゃくちゃ面白い)...
仏語学習歴17年ともなると、さすがにいろいろ集まるもんですな。
バカ辞典特集とか脱線編もやりたくてウズウズしてしまいますが、今日は我慢して、まじめに、様々な辞書を使ってきたわたしが仏語辞書をレビューします!
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1. 二大紙辞書:プチロワとクラウン (←今回の記事 : ※長め)
2. プチロワとクラウン、アプリ対決 英⇔仏辞書のおすすめアプリもあるよ!
3. いよいよ仏仏、まずは何を買うべき?
4. こんな辞書もあります
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1. 二大紙辞書:プチロワとクラウン
まずは仏和紙辞書の二大巨塔から見ていきましょう。
プチ・ロワイヤル仏和辞典 第4版 (旺文社 CD付¥4,320 / CDなし ¥4,104)
クラウン仏和辞典 第7版 (三省堂 CD付き¥4,000+税 / 小型版 ¥3,600+税)
チェック1 : 外観
なんといっても、服部 一成さんの洗練された表紙デザインが文句なしにカッコイイのがプチロワ。エコール(教室)の生徒さんで、服部さんに会われたことがある方がいらっしゃいます。いいな!いいな!いいな!
これみよがしに持って、街を無駄に歩きまわりたい。ジャケ買い待ったなし。小口インデックスの緑の字もすてき。外箱が赤はCD付き、緑はCDなしのタイプで、ネットで聴けるオプションはありません。
一方のクラウン、ミント色は小型版です。普通サイズはピンクなので、日本人男性は手を出すのになかなかの勇気がいるかもしれません。ピンクは女の子色っていう概念は日本独特な気がしますが・・・それにしても、しかし、なんというか、強烈ピンク・・・つらい。(ピンクはロッカーに置き辞書しているので手元になしという痛恨のミス・・・後で写真追加します)
小型版はCDなしで、専用サイトで音声を聞くため若干安くなっています。ただし、縮小したサイズのため文字が小さく、老眼が始まっている方には不向きかもしれません。
チェック2 : 解説・レイアウトなど読みやすさ、使いやすさ
さて、肝心の解説部分なんですが、共に赤と黒の二色刷りになっています。重要語は見出し語が大きく、赤色というところも一緒。発音記号にカタカナで補助の読みがなが振ってありますが、これは、参考にすると強烈になまったふらんす語になっですまうんだげんどな。両書とも英語の意味も書いてあります。
活用ページへの番号は□の囲み番号ですっきりしているプチロワ。対して、クラウンは「活用 61」のように示してあります。これ、巻頭に必ず書かれている使い方ページを読んでから使い始めるように指導を受ける初心者が圧倒的に少ないので、プチロワのように番号だけだと巻末の活用一覧の番号を表しているとなかなか気づきにくい、ってことに配慮されているんでしょう。仕組みを知っていれば番号のみの方がシンプルでいいのですが...
私は、大学の講義や自分のレッスンでは必ず辞書の使い方の授業をやるのですが、先生によっては、やってくれなかったりします。そうすると、学生たちは「なんか番号が振ってある」としか把握せず、ちゃんと使えないまま2年生になっちゃったりするんです! (実際にそういう2年生を受け持って判明)
疑問に思っても、面倒だから追求せずに放置することって結構あるんですよね。そこにひっかかっていちいち調べるかどうかというところで、いろいろ差が出てくるのかも。
さて、話は戻って。クラウンは、一見すると地味なんですが、レイアウトがとてもよく出来ていて探している語を見つけやすい。特に、よく使われる表現やイディオムを見つけるのがプチロワよりも楽です。
実は昨年まで、自分の講義の指定辞書はプチロワとクラウンどちらでもOKってことにしていたのですが、学生たちの間で、目的の語や表現を探し出すのに時間差があることに気づきました。
なんでかな〜と、しばらく私も両方使ってみたのですが、どうやら、同じ情報が書かれていても、リストアップの仕方が違うところに差が出ているようです。
たとえば、croireというとてもよく使われる動詞を見てみると、クラウンはまず現在形の活用と分詞の形が載っています。そして、一番ベーシックな意味が囲みの中に書かれています。これだけでも、さっと理解しやすい。
更に、croire で混乱しやすいのが croire à と croire en の違い。
「〜を信じる」は 前置詞 croire à〜 と書いてあります。しかし、人に対する信頼は、ふつう à ではなく en を使い、
Vous croyez en Dieu ? (あなたは神を信じますか?)
Il croit en ses amis. (彼は自分の友人たちを信じている)
という言い方が固定で使われるんですよね。神様は人であって人でないのですが、en を使います。
※ croire à / en の違いについてはこの記事の下方にマニアックな解説あり
クラウンでは croire à と共に croire en を別の番号を振って小見出しを作っているので目に留まりやすい。一方、プチロワでは例がだだだーと書いてあって、その中に付け足しのように(enを用いて)と書いてあります。実際、教室に来ている高校生の子は、プチロワでこの表現を見つけることができず、croire au Dieuとやってしまいました(croireのミスあるあるです)。こんなことが、紙プチロワでは多々あったんです。
更に、巻末付録でもクラウンは見やすい。例えば、初級でよく使うページのひとつに数詞一覧があります。両辞書とも巻末に数字の表し方のページがあるんですが、圧倒的にクラウンの方が見やすく、親切。
その他、フランスの教育制度の図解や国名と国籍の形容詞一覧などもとても便利です。
極めつけは、巻末に付いている簡易和仏辞書の充実。プチロワ18ページに対して、クラウンは57ページも付いています。初級程度の語彙ならこれでだいたい事足りてしまいます。
また、語幹が変化する第2・3グループの動詞で不定詞(原形)がわからない!という場合、巻末の活用変化索引で調べることも出来てしまうのです!活用になれていない初心者に優しい。
プチロワは、巻末に文法解説ページがあるのですが、ページ数が限られている中にギュウギュウに文法辞典の情報を押し込んでいて、初心者は、ページを見るだけでガッツを奪われてしまいます。経験者には有用なページなのだけれど、そもそも経験者は詳しく書かれている文法書を1冊は持っていますしね・・・辞書巻末で文法を調べるってことは、わたしはあまり無かったです。
というわけで、紙辞書は、初級〜中級の方の場合、表紙が若干残念なれど、使い勝手はクラウンの方がおすすめなんですよね〜。プチロワかっこいいんだけどねぇ。中級以上(仏検3〜準2級程度)だったらプチロワでも使いこなせると思うんですが、活用はだいたい頭に入った中級レベルになったら、もうアプリの方が便利でしょうね・・・
そもそも、今どき紙辞書なんてって思うかもしれませんが、初心者には紙辞書の方がいいんじゃないかなって思っています。というのも、
アプリは書き込みができん!
これが全て、という感じもしますが・・・
(クラウンアプリは書き込みはできないものの、マーカー機能が付いています。)
自分の辞書を(視覚的に)育て易いのが紙辞書の利点です。特に、初心者のうちはわからないことだらけですから、辞書の例文に書き加えて、自分が間違えやすいところをガンガン補足できる方がいいんですよね。
上は私がナント大学で学んでいた時に使っていたフランス語文法の本(というか、辞典)です。(文学部1年生は普通に現代文法の講義があります) 。試験で出るページの付箋はもうぐちゃぐちゃになって破れちゃっています。現役の大学生に混じって外国人がひとり学んでいたんで、こういうことをしなければ覚えられなかったんすね・・・今見ると、当時の下線や書き込みに「そこじゃねーだろ!」とつっこみたくなる箇所がたくさんあります。そういう、破り捨てたい衝動にかられる思い出とぶつかるのも、紙辞書ならではの醍醐味...です...よね...?
辞書をめくるという作業は身体を使うため、その動きが記憶に結びつくということもあります。目的の語や表現を目で追い、ページを手でめくるというような身体の動作が、記憶に有効だっていう話もありますから(医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン 光文社新書)。
次回はアプリでこの2冊が再びガチンコ対決・・・というか、もうプチロワ圧勝なので、それぞれの使い方や、記憶の仕方について書きたいと思います。
アビアント!
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※ 以下は中級以上でややマニアックな内容です
croire à / en の違い
これは上記2つの辞書の解説をそれぞれ見ても、何が違うのかがはっきりと書かれておらず、学習者にわかりづらい。そんな時、仏仏辞書で解決することがあります。Le Robert micro poche 通称ミクロで croire を見てみましょう。
1. croire à une chose : à + 物/事 ということです。例文には
croire aux promesses de qqn (誰かの約束を信じる)
とあります。croire の間接目的語 à+les promesses は 人ではなく「約束」という名詞の複数形。
それに対して、2. Croire en qqn en + 人 と別項目があり、ここには avoir confiance en lui (人を信用する)と同じ意味だという解説があります。例文にも
Il croit en ses amis.
croireの間接目的語はen +ses amis (彼/女 の友人たち) という「人」が来ています。
まず、基本がここにあるんですね。
そのうえで、
3. (Avec à) Être persuadé de l'existence et de la valeur de (tel dogme, tel être religieux)
とあります。ここが、まあこの混乱の元とも言えるんでしょうが、本来、教義や宗教的存在などの価値や存在が確かにあると思うことを述べる場合は à を使うんですね、実存する人や物理的なモノではないので。
Croire à l'Évangile (福音を信じる)
Croire à l'astrologie (占星術を信じる)
なので、現実にどこにでもいる「人」ではないので、口語的に 「サンタを信じる」も Il croit au père Noël と à を使っています。
で、やっと「神を信じる」が、3. の項目の最後に出てきます。キリスト教を始めとする宗教の表す神は人であって人でない、人を超越した存在ですので本来ならば àを使うところなんですが、やはり神の場合はサンタさんと違って
Croire en Dieu (dieuは必ず大文字で単数)
と en を使うんですね〜。
このあたりのことが、仏和辞書では字数制限があるために、ざっくりとしかかかれていないため混乱し、こぞって croire au dieu* とかやっちゃうんですよね...
croire en Dieuは croire à 〜 という使い方の突然変異みたいなもの(誤用から発生?)なので、本来の文法的な解釈からいけば、実はプチロワの方が 項目のくくり方が正しいと言えるんですが、そのへんのフランス然とした保守的なこだわりが、初心者には手に負えないのかもしれません。chevronné (老練な)な感じがして嫌いじゃないんですけどね...
ちなみに、1. の例では J'y crois. と à〜の目的語を中性代名詞に変えることができますが、2. の例で私は友人を信じているを J'y crois. とはできません。中性代名詞で習うように( 習うよね ? )、人はモノ扱いして「それ」と示すことはできないので、à + 人のCOI (間接目的語)も y に変えることはできないですよね!
Je pense à elle (わたしは彼女のことを考える) → J'y pense* は不可
フランス語の目的語は、こんな風に人かモノかってことを基準にすると覚えやすくなるってこと、結構あるんですよね !
それにしても、仏和辞書も元になっている仏仏辞書(ロベールとかラルースとか)の出典を書いてくれてもいいのに、参考文献ページがないのが不満です!
クラウンは初版のはしがきに参考したであろう文献のタイトルを挙げていますが、リスト形式ではないうえに初版1977年のものなので、現代版としては不十分。出版社に問い合わせたら教えてくれるのかなあ?