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トンネルを抜けたら日常だった。最新魔法少女は高IQ「ホレンテ島の魔法使い」

・はじめに

『魔法少女まどか☆マギカ」によって魔法少女の位置づけが変わってしまった。それまでの「魔法少女はほんわかした街で暮らす中、いろいろな事件を解決していく」から、「魔法少女は命を落として当然の殺伐とした世界で、巨悪と戦う駒のひとつ」に基本フォーマットを変えてしまったのだ。』

以前に書いた「まじもじるるもの記事」の一文である。

魔法少女の「基本フォーマット」は描き替えられたかもしれないが、しかし日本のマンガ文化の中でも結構な割合を占める魔法少女。もちろん多種多彩に存在する。そんな中に降り立った、旧フォーマットをベースにしつつ最新の形を見せつけてくる魔法少女マンガが「ホレンテ島の魔法使い」である。


・あらすじ

『東京からフェリーで行ける絶海の孤島、謎の島なホレンテ島……その実態は島に伝わる魔法伝説をベースに、テーマパーク的街づくりをして観光資源としている島である。観光客を「魔法使い」にするテーマパーク。

そんな島に真面目に魔法使いを探しに訪れた主人公の貰鳥あむ。観光で来た夜に空飛ぶ「魔法使い」の影を見たあむは、単身ホレンテ島に移住する。

バイト先の帽子店には猫の着ぐるみを来ている?店長な「先生」と同い年の尾谷こっこがいた。レストランの店員の亜楽かるて、書店の娘の都橋詠、島のガイドの裳之美ユシャと仲良くなりながら、今日もあむは「魔法使い」を探すのであった。

なお、テーマパークでお客に魔法を授ける(設定の)接客員は、もちろん「魔法使い」と呼ばれている……呼ばれている……。』


魔法使いを探す日常ギャグ系萌えマンガ……なくもなくないジャンル?とも思えるのだけど、それだけじゃないのがホレンテ島の魅力である。


・欧州風テーマパーク的中心街と日本の田舎が並ぶホレンテ島

欧州風?なテーマパーク的中心街の外れにあるトンネル。そのトンネルを抜けると現代日本の田舎の街。魔法使いを探すあむとかるてたちのミーティング場所は、おしゃれなレストランとかではなく、トンネルの向こうのラーメン屋台「美人薄命」である。テーマパークと日常の境界線。実は「境界線」がこのマンガの肝なのだ。そして、異世界なのは境界線のどちら側なのか?


・魔法(を探す)少女は高IQ

基本的にキャラクターの頭が良い。魔法使いを探しに来たヒロインなんて普通はどう考えてもポンコツだが、本編のあむは「学校の転入試験も楽勝だった」という。その後のあむの行動も本質を掴むコトが多く、みるからに頭が良い。魔法探しの相方のかるては、とてもロジカルに物事を考える。他のキャラについてもみんなそう。セリフが多いマンガだが、無駄なセリフはないし、ギャグとガチのメリハリもよく効いている。


・魔法(を探す)少女は音楽IQも高い

アパートの部屋が隣だったかるての部屋に行ったあむ。いきなり始めたのは置いてあったギターの弾き語り。もちろんギターの持ち主のかるても即興であむの歌に乗れる程の実力者。詠も歌えるし、ユシャは手回しオルガン奏者。こっこ……って、1巻の後半では全員でミュージカルをする回もある。完全に韻を踏んだ歌詞で構成されるミュージカルシーンはこのマンガの真骨頂でもありつつ、その歌こそが魔法使いにつながるアイテムなのだ。アニメ化必須だ!


・魔法(を探す)少女たちは魔法少女

お客も魔法使い、テーマパークの接客員も魔法使い。だが、察していただければ分かるとおり、このマンガには本当の「魔法使い」が存在している。しかも主人公のあむの周りにも……そう、彼女や彼女は「自分が魔法が使える理由」を探すためにあむと「魔法使い」探しをしているのである。その為には同級生が店番をする本屋であんな本を立ち読みするコトだって問題ないのだ。


・魔法と科学の境界線

SF作家アーサー・C・クラークが定義したクラークの三法則。

1.高名で年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。
2.可能性の限界を測る唯一の方法は、その限界を少しだけ超越するまで挑戦することである。
3.十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。

(Wikipediaより引用)

ホレンテ島はこの三法則を肉付けして話を構成しているフシがある。とくに1巻掲載分の後の連載からは3と2の解説をしているように構成される。魔法に対しての裏打ちをそのまま本編の肉にしているのだ(科学者は今のところ出てこないが)。ここに高IQ設定が効いて、とても読み心地が良い。そして魔法のロジックを科学的に理解するコトで彼女たちの魔法も進化していく。


・さいごに

正直、1話の時点で結構重要な提示をしたトコからスタートしている「ホレンテ島の魔法使い」。作者の谷津先生は、勘のいい読者には直ぐ分かる形を骨にして、かつそれを読者の予想を超える形で提供するコトに自信をもって描いていると思われる。

連載しているのは「まんがタイムきららMAX」。芳文社のきらら系は萌えの一大文化を形成した後に、さらに新たな萌えの系譜を広げる様々なマンガを世に出している。ゆるキャン△や球詠のように傑作の1つとなるマンガとなって欲しい、その資格はあると思うが、どうなるのか?!

期待しているマンガである。連載ではそろそろあの「魔法使い」が登場するようだが……。





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