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いまから読むべきマンガ!まだ既刊1巻の良作は、みな女の子が主役?

・はじめに


マンガ雑誌の売り上げはジャンプ黄金期と言われた時代から右肩下がりが続く。だがしかし、WEB上のマンガサイトは膨大に増えて、そこで連載される面白いオリジナルマンガも爆増している。面白いマンガはメジャー出版社のものだけではなくなった。

そんな中で生きのいい旬のマンガを探すのはとても困難な状態である。ほぼ毎日、Kindleとかで新しいマンガを探したり、新刊マンガを紹介している方々のツイートが流れるtwitterのタイムラインとにらめっこして、表紙とあらすじの面白そうなものをそれなりに購入してはいるのだが……。

とにかく、現状まだ1巻しか発行していないがとても面白く、今後が楽しみなマンガを紹介したい。

・一級建築士矩子の設計思考

「会社を辞め、東京亀戸で独立した古川矩子(こがわかなこ)。生来の酒好きである矩子の建築設計事務所は日本酒が飲める立呑みつき。

そんな矩子の最初の客(?)は隣のスナック優雅灯のマダムな純子さん。弟が新築するという家の図面を見た矩子は言う『これを建ててはダメです』。

矩子が話す倒壊の危険、そして素人でも説明を聞けば理解出来るそれは、現状で事前にしっかり審査する法整備がなされていないものだったのだ……。」

メジャー誌でもR18系でも勝気でエロい女の子を描くコトではピカ一だった鬼ノ仁先生。だが、実は一級建築士かつ一級建築施工管理士でもあった。

そんな鬼ノ仁先生が描く本作は超理系マンガ。設計図が描ける、設計・施工を実務でこなしてきた人による図面主体の推理ストーリー。

掲載誌が漫画ゴラクなのに血の匂いがしない。酒の匂いは……(笑)

実測から図面をおこす2話などは既設建築物の設計図を作っていく話だが、壁内から空気の流れ、床下配管まで解説つきで図面を見せてくる。あの技術は魔法だと思っていた。

コンベックスとボールペンと方眼紙、日本の建築・電気関係を陰でものすごく支えている国産フリーウェアJWーCAD(マウスボタン2つ同時押しのアレ)なツールたちと建築・現場知識で「施主」と自分の収入を守る矩子。

方向性は違うが、もはや建設業界の守り神となっている解体屋ゲンを脅かす存在くらいになるのかな。なって欲しいな。「解体屋ゲンvs一級建築士矩子」とか読みたくてしょうがない。

なお、矩子が店で日本酒をかっ喰らい、クラフトビールを求めて彷徨うマンガでもあり、その描写も素晴らしい。実名で出てくる日本酒とビールのチョイスも酒飲みにはたまらない。

・毎月庭つき大家つき

「遠距離はムリと同棲していた彼女に捨てられた漫画編集者の須賀アサコさん。担当漫画家の鳩森ハトさんに相談したが、そんなコトには興味を示さない程にハトさんはアイドルグループのリーダーで『推し』な北野ミヤコの引退に絶望していた。

とある茶店で庭付き平屋な戸建ての入居者募集フライヤー(いや、チラシか)を発見したアサコさん。そんな住宅に内見に行き、若く美人な大家さんと出会ったアサコさん。前の部屋の退去を決め、再度内見と契約に向かったのだが、そこには隠し部屋で居候する気マンマンの大家さんが……。

美人の大家さんの正体は件の元アイドル、北野ミヤコ。美人に弱い面食い、かつ人一倍のお人好しであるアサコさんはやむなく同居を了承してしまう。

身バレもしてしまう案外ポンコツな北野ミヤコとの同居生活。果たしてアサコさんの人生は。そしてアサコさんの面食いに辟易しているハトさんに、ハトさんの推しとの同居な秘密を隠せるのか……?」

登場人物が全部美女、ほんのり香る百合(元々アサコさんは基本ガチ中のガチだが)、そしてみんなポンコツ分高め。つまりこれは「大人のまんがタイムきらら」な作品なのだ、掲載はコミックNewtypeだけど。

とにかく絵が美麗だけど、ポンコツギャグもキレッキレでちゃんと生活感もある美麗さである。アイドルグループでは目立ちそうな170cmの長身であるミヤコ(昔アイアンフリルってアイドルグループのセンターもしていたのでははなかろうか)。普通は若いボケ役のほうが低身長な気もするが、個人的には長身好きなのでとてもいいチョイスといいたい。

百合話だけど現状は前述したとおりほんのり風味。作者のヨドカワ先生の他の作品を読んでみるともっと重いのもあるが、性別関係なく心地よく読ませるにはこれがいいチョイスなのかもしれない。

「大人のまんがタイムきらら」。いや、これってばオバケのQ太郎やドラえもんなどの藤子不二雄先生の居候ギャグマンガの進化の形なのかもしれない。とにかく口当たりよく、心地よく、楽しいマンガである。疲れた時には最高。


・音盤紀行

「場所も時代も違う音盤(レコード)を主とした連作たち。

祖父のレコードを売りたい麻耶奈の元に買い取りに来たのはミヤマレコードの暦美。休日、暦美のホンダCITYに乗ったふたりはジャケットに麻耶奈の名が記された祖父のレコードの謎を追うが……。(追想レコード)

自由のない寒い国の食堂で働くラナ。彼女の楽しみは国外の船が飛ばす海賊放送をラジオで聞くこと。そんな海賊放送で知ったとあるバンドのレコードを手にするため、ラナはひとりの男に会いに行くが……。(密盤屋の夜)

バンド、スタッグスの面々は南の国でトラブルのためにホテルにカンヅメな休暇。見知らぬ街へと脱走したメンバーのうち、ギタリストふたりは聞きなれたギターのフレーズに誘われレコード店へ……。(The Staggs Invasion)

海賊放送の船のDJなニッキーは、たまの陸でBMWイセッタに乗ってレコードを買い出しに行き、イギリスの大学に進学予定のアイノと出会ったりだ。で、海賊放送船は危険がいっぱい……。(電信航路に舵を獲れ!前後編)

アメリカンダイナーな店でジュークボックスと働く女の子アシュリー。客のリードは、仲間が手に入れたカッティングマシンで新曲をレコード化してジュークボックスに入れてもらおうと企むが……。(アシュリーズ・ダイナー)」


青騎士というマンガ雑誌がある。KADOKAWAのハルタから分けたように刊行された青騎士は、ぶ厚いハルタだけでは収録出来ない作品たちを載せるために刊行されたように思うのだけど、ハルタの厚さは変わらずに青騎士は700ページだったりA・B2冊出したり(というかコレが基本になってしまった、隔月なのに)超ぶ厚い。そんな青騎士で出会ったのが音盤紀行。

個人的に大好きな傑作「国境のエミーリャ」に近い流れの「密盤屋の夜」にヤラれた感じだが、もちろんどの話も面白い。単行本描き下ろしのアシュリーズ・ダイナーには素敵な叙述トリックが仕掛けられているが、引っかからなくてもニヤニヤ出来る上質な奴。名作マンガのオマージュも感じる、寂しくも心地よい話だ。

ハルタ・青騎士特有のみずみずしい感じもあり、楽器や車、小物までとてもセンスのいいチョイスな、こだわり溢れる作品である。各作ともラストの余韻が素晴らしく、単行本でその余韻の後に載せられた登場店舗などのカットと説明文も心地よい。

毛塚了一郎先生のあとがきの後にあるヒロイン大集合な1ページオマケマンガは読むと最初から読み返したくなるという素敵なトラップだ。黒田硫黄先生の傑作「茄子」のような素晴らしい連作のマンガである。


・おわりに


最初からそう選んだつもりはひとつもないが、並べると女の子が主役の話になってしまった。個人的な嗜好だろうと言われるとそうなんだろうけれど、でもこのチョイスは間違いないと思う。

とにかくいいマンガに出会うにはアンテナを高く……というかネット等の情報を探す必要が出てきた。ちゃんと合法である無料・会員制マンガサイトもとにかく増えたのだ。表紙買いでいいマンガと出会うのは得意だったハズだけど、これだけ沢山のマンガがあるのは大変……。

今回の中で「毎月庭つき大家つき」は完全に表紙買い。普通なら手に取らないかもしれないジャンルかもだけど、序盤から買ってよかったと思うマンガだった。

一時の幸せを与えてくれるマンガ、明日は何が出るだろうか。

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