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「解体屋ゲン」97巻!中国爆破解体案件
・はじめに
ついに解体屋ゲンの毎月発売が終わる。
電子書籍での刊行タイミングによって、電書バトでの単行本発売話数が連載と大きく離れており、毎週連載なのに毎月1日に新刊が出るという、考え方次第では魔法のポケットのような状況だった解体屋ゲンだが、この97巻でついに連載話数に単行本が追い付いた。
毎月ゲンつき野島つきの幸福は終わるが(作者陣営はなにかしらのサービスを企てている気配もあるが)、その分さらに内容が面白くなるコトに期待したい。まあ、期待しなくてもそうなるマンガなのだけど。
そんなワケで、ある種の区切りとなる97巻の内容を纏めたい。
・第949話~第953話 スピード解体(2)~(6)
「中国でのマンション大規模爆破解体のためにゲンと谷、そして結城はシミュレーション作成に没頭する。結城は産業スパイなのだが。
一方、五友爆破には映画バカ二人と野島が来所していた。慶子から中国での爆破解体記録のために三人も連れて行くという慶子だが、映画バカたちも野島すら……。
中国に行く光は1棟分の現場監督を任せてもらえると聞いて張り切る。五友爆破というかゲンもちゃんと将来を見据えているのだ。
結城はシミュレーションに没頭するゲンと谷を陥落するため色仕掛けを仕掛けるが、常時着エロと一部で話題のゲンにはまったく通用しない。そして谷とゲンは知ってか知らずか……。
シミュレーションを終えたゲンたちは中国、西南島へ。
住友崑崙の手によって既に工事の準備は進んでいた。爆破を担当する三社による会議の中、ゲンとジョージと共に参加する爆破技師のウェンディは爆破の順番を自分からと提案するが、ジョージによって一斉同時爆破を提案される。
ウエンディはハリウッドで自分達以上の実績を持つとジョージに言われ驚くゲン。ウェンディはホテルで自分の不遇な過去を回想する。ジョージは得意の「ピンチこそチャンス」で成功を目指す。
そして一斉同時爆破解体は行われた。
その素晴らしい爆破解体は中国のオンラインゲーム規制により全てを失うハズだった一人の男を救ったが、それは誰も知らない。ウェンディ、ジョージ、ゲン達はそれぞれの方法できっちりと仕事をやりとげた。ゲンの爆破には謎があるのだが……。
爆破の後、ゲンは柄にもなくジョージに日本の爆破解体技術を海外にアピールしてくれと頼む。ゲンの誘いに乗り日本に向かうジョージ。
映画バカ二人と野島は慶子たちから中国土産と土産話をもらう。そして自分達が行う予定の爆破解体記録撮影を谷のドローンで行った話を聞き、涙する。映画バカの価値は……。
なにか……に目覚めたらしいゲンはジョージと谷を大日本化学工業に連れて行く。そこでは社長の曽我が新型爆弾を用意して待っていた。ゲンの無茶苦茶な要求に対して曽我が作った新型爆弾とは、そしてその実験結果は……。
会社では野島が皆に中華料理を食べたのかと聞く。慶子と有華は日本にいた野島を気遣って隠そうとしていたが、あっさりと状況を話す男が。中華に飢える修羅と化した野島。お待ちかねの野島変顔劇場が始まる。
そしてジョージはゲンの頼みに応え、シンガポールで曽我の作った新型爆弾の発表会を開く。ゲンとの夜の共同作業で作った原稿のラストとは……」
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中国での大型爆破解体案件という前巻ラストを含めた6話構成のシリーズ。現在の中国の歪な経済成長を描きつつ、日本での大型爆破解体案件への準備を描く。そこな映画バカと野島のギャグパートを含めつつ、相反するライバルだったゲンとジョージの関係を一段も二段も進める話だった。
そして私利私欲を抑えて世界の爆破解体の全体的な底上げを目指すゲン、それに賛同する谷と曽我、そしてジョージ。今の世界への憂いである、ラストのジョージの秀逸なセリフ、素晴らしい。
・第954話「不安と懐具合」
「止まらない不況にため息をつく慶子。建築資材の値上げと戦争を憂いるトシとヒデ。鉄太までも戦争の心配を。そんな状況は曽我の新型爆弾にまで……。
そんな中でコロナ不況によりゴンの知り合いの九保田が居酒屋を畳むことに。保証金のために格安で店をスケルトン(内装・設備の全撤去)してくれとゲンに頼むゴン。慶子がクローバー事業部として解決策を……。
どうにかゴンの案件をクリアしたゲンは不安を忘れる為に皆で高級焼肉を食べようと提案するが、慶子の脳内での計算が出した答えは無理。慶子とゲンのバトルを前にゴンがひとつの提案を。
皆は高級焼肉を食べられるのか、そしてネイチャートシの活躍とは……」
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コロナ不況での居酒屋の閉店騒動と焼肉宴会の成否の二段構成をゴンを使ってうまく纏めた肩の力の抜けた回。だがしかし、コロナ不況と素の不況、世界的な資材不足と全ての値上げ、そして戦禍という打つ手のないものへの庶民の闘いの回でもある。
ゴンの提案も不況からの話。資金難で手も足も出ない九保田はゴンと慶子に救われたが、居酒屋を手放すコトについては変わらない。
庶民は肉とビールでいっとき不安を忘れ、活力を得て、幾分かの知恵と勤労でそれでも生きていくしかないのだ。
・955話「多能工と専門職」
「クレーン職人のヒデとドライバーの光。もちろん他の仕事もしているが、多能工を目指したいと言う。
そんな二人のためにゲンが居酒屋大山に招いたのは大日本化学工業の曽我。花火好きから花火職人を目指し、落ちこぼれからなんとか工業高校に行くが、望みの会社は……。
しかしその会社、大日本化学工業で曽我は新たな仕事のために邁進した。その結果、花火バカの曽我の役職は今……。
そして思い起こされるゲンの無茶な注文の数々……」
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三つ子の魂百までな火薬バカ、曽我の一代記。ゲンとの付き合いも長く、ゲンが何を目指しているかをもしかしたらジョージよりも知っているかもしれない曽我。
谷と双璧を成す解体屋ゲンのドラえもんな曽我にスポットライトが当たった回である。多能工と技能職は目標なのか、結果なのか。なんにしろゲンの考えに賛同して私利私欲どころか会社の収益増加すら抑えているだろう曽我さんにもっと良いコトがありますように。
ジョージのシンガポール演説がゲンからの大きなプレゼントではあるけど。でもそれも収益のチャンスを……。
・956話「老舗の嫁」
「休日の昼食を考える有華と野島。そんな二人がいた有華の部屋に、有華の母が家出をしてやってきた。ビジネスホテルに泊まるという母は和食の店を開きたいとのたまう。
家出の理由は有華の実家、本納呉服店の閉店とそれによる従業員の解雇であった。たまの湯の老人たちに閉店後の土地の売買を相談する有華の父と祖父。ロクはゲンに相談しろという。
母の懐具合を覗いた有華はその状況に驚く。役員報酬のわりに貯金が少ない。そこで浮き上がる呉服店の闇とは……。
そして、いつしか問題は男女の闘いへと変質していく」
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コロナ禍での倒産はついに有華の家、老舗呉服店にまで。外出を我慢するご時勢で、浴衣や訪問着などを中心とする和服の売り上げが落ちないワケがない。元々和装自体が減っていて、礼服や旅館などの商売以外での和装はサザエさんのフネくらいではないかと思う状況なのに。
で、話のほうは呉服店の闇を経由して女性の権利論争に。論争というか話し合いの余地を作ろうとするゲンに対して女性陣が一方的に主張するだけなのであるが、どうなるの……。
・おわりに
そんなこんなな解体屋ゲン97巻。
月一発売を終了しようが、もう100巻の大台まであと僅か。連載のほうでは大きな山をひとつ超えたが、まだまだ解体屋ゲンには面白さ右上がりのまま頑張って欲しい。
面白いマンガは多い、本当に増えている。だが存在が必要なマンガは僅かである。日本に今一番必要なマンガは解体屋ゲンなのだ。これは自信をもって言える。
さらば毎月のゲン!!だがこれからも刊行は続くのだ。是非お手元に。