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最終巻直前、ヒナまつりを日本代表マンガにしたい理由

ハルタに連載していて、アニメも好評だった「ヒナまつり」の最終巻、19巻が8月12日に発売される。あの3人娘がアイドルする程に可愛くなっての大団円。お見逃しなく……で、終わってしまってはイカン。個人的に「ヒナまつり」を日本代表マンガにしたいのだ!

日本を代表するマンガ、いや、もう週刊少年ジャンプのトップこそがそれだろうという人は多いと思う。実績では間違いないでしょう。でも、長く海外と日本で爆発した「ドラゴンボール」も「NARUTO」も現代の日本が舞台のマンガじゃない。他の海外で売れているマンガでも、現代の日本が舞台なマンガは「DEATH NOTE」「SLAM DUNK」など少数ではないでしょうか。

少し前ならば、この話題でマンガ読みが推すのは「こちら葛飾区亀有公園前派出所」だったと思います。下町の風景を土台に、東京を描き、時事ネタも多く、なんでも扱っていた「こち亀」。まあ、今の現役マンガならば、このワクは、さらに国際問題も網羅した「解体屋ゲン」が最適かもしれないですが。

ここまで読んでいただければ判ると思いますが、自分の勝手な日本代表マンガ選考基準は「現代日本を伝えているコト」です。現代日本が舞台じゃないとなんて狭い視点と言われそうですが、そこはちょっと拘りたいのです。

そして次に「マンガとしての幅が広いコト」、さらに「日本の読者力が伝わるコト」も挙げたい。

「マンガとしての幅」。読んだりアニメを見た人ならば知っているでしょうが、「ヒナまつり」は「ファミリーSFハートフル極道シュールギャグ」です。知らない人には何それって感じでしょうが、ちょっと作品内容を纏めます。

「芦川組のそこそこ稼ぎのいいインテリヤクザ、新田義史(特技:家事全般)のマンションに現れた、未来から来たサイキック少女のヒナ。ヒナの能力に怯えて強引に始まった同居生活だが、次第に家族の絆が芽生えてくる。ただし、ヒナは順調にゲーム廃人への道を歩み、新田は壺への異常な愛を……。

ヒナを処分に来たサイキック少女のアンズだが、ヒナとのハイエンド?なサイキックバトルに負けた後、ホームレスたちと中華屋の夫婦によって、天使のような性格の貧乏性の美少女に育ち、立派なラーメン屋を目指して屋台を引く。

もう一人のサイキック少女、マオは無人島に現れてしまい、流浪の人生を経たが、中国の拳法道場で(超能力というズルで)頭角を現し、日本で「超人フィットネス」の看板娘となって芸能界に進出。が、長年の幸薄生活でメンタルがヤバイ感じに。

そんな3人+1の活躍?の横で、ヒナの学友、三嶋瞳は周囲のダメな大人の勧めで中学生にしてプロのアルバイターに。生真面目な性格が災いし、いつのまにか経営者へと自分の意志とは関係なく成長し(体は成長しないのに)、その影響力は世界的となり、サイキック少女たちの能力すら凌駕する最強の……戦わないけど。スナイパー能力ものび太並みなのに。本当はただの新田大好き少女。

そんな人々は、ホームレスやヤクザと共に現代日本でボンクラな日常を歩んでいたが、実はサイキック少女たちの未来の日本はダメダメな世界。未来の日本を救うのは、ロックージョン!

……は、なにそれ?(イギリスの哲学者かしら?)」

ついに「ファミリーSFハートフル極道経済シュールギャグバンドマンガ、ムー要素もあるよ!」になってしまった「ヒナまつり」。もはや闇鍋というぐらいの要素ですが、作者の大武政夫先生はその材料で、学食のラーメンを伝説のラーメンに作り替えたのです。おおよそ日本のマンガの要素をほぼ詰めて、ぎっしり詰め込んで(スポーツ分少ない?空手部マンガだよ)。

……なんとマンガとしての幅が広い!そして、ちゃんと全ての要素が機能している!

最後に、「日本の読者力が伝わるコト」について。掲載誌の「ハルタ」はあの「コミックビーム」から分岐した雑誌。いや、扱いは雑誌じゃなくコミック扱いらしいのだけど。新人主体のオサレな「コミックビーム」というか、ぶっちゃけ煮詰め込た「昔のアフタヌーン」と言ってもいいのです。

新人漫画家を、熟練または先鋭化したマンガ読みの前に立たせるという、奴隷市場のような、恐ろしい場な気もするけれど、その中で100話の連載を果たしたマンガ。熟練または先鋭化したマンガ読みの中で鍛えられたシュールな「ヒナまつり」、そのシュールさをちゃんと受け止める読者がいてこそ育ったマンガでもあるのです。

※ アニメは話のビックアップも、「あいったー」なアクションの多い演出も、初見の人にとても解りやすい作りだった。計算されたOP・EDも良く、スタッフに恵まれた作品だったと思います。

ちなみに、日本のマンガは欧州のマンガに比べて幼稚、社会問題を描け!とかいう話を良く聞くけど、そんなモノは手塚治虫先生の時代から、今もちゃんと描かれているモノ。社会問題を直接的にだけ描くほうがマンガ表現としては幼稚なのだと個人的には思っています(もちろんそこに優れたマンガもありますが)。

「ヒナまつり」はホームレスの問題も作内に出てくるけれど、アンズに過度な貧乏性を植え付けてしまった人たちという、その後もずっと使われるオチをつけて、しっかりと物語に馴染ませています。

絵。大武政夫先生の絵柄は、ラーメンの匂いとか、ガードレールの錆び臭さが感じられる、とても日本な劇画的な絵。作品が続くにつれてサイキック少女はちゃんと萌える美少女になって行ったけど(笑)。街の人々も色々な顔をもつ、個として素晴らしい表情で描かれているのです。

以上、大きく三点の理由で、当ブログでは「ヒナまつり」を現代日本を描いた2020日本代表マンガとして認定したいのであります。

……あと、ずっと瞳派だった自分を最後の最後でアンズ派に「も」した、あのライブのワンカットは個人的歴史に残るワンカットだったのです(笑)


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