ドラマの中の筆跡⑤『ショーシャンクの空』天才バンカーのリベンジ
ドラマの中の筆跡⑤『ショーシャンクの空』天才バンカーのリベンジこの映画は私の大好きなスティーブン・キングの原作で
『刑務所のリタ・ヘイワース』が最初の題だった。
映画化されてキングの原作にはヒットした『スタンド・バイ・ミー』に
続くキング映画だ。『グリーン・マイル』もあるけど、今回は
『ショーシャンク』をとり上げる。
ご存知のように、超一流のの銀行家アンディーが妻の浮気現場で
浮気相手のプロゴルファーともども射殺した、というセンセーショナルな
事件だ。状況証拠はすべてアンディに不利なうえ、妻と浮気相手を現場で
殺人ということで終身刑をなる。アンディは無罪を主張していたが、
事件の夜、泥酔していたこともあり、
「浮気は知っていたが、殺そうと思うところで思いとどまった銃は、
捨てた」という主張は通らなかったのだ。
そういうわけで白人ホワイトカラーが刑務所で生き延びるということの
凄まじい現実はアンディの体も鍛え上げた。
刑務所内のボスとして賭博や金品調達を取り仕切るレッドは
アンディの入所の日には早速「銀行家はどいつか?」という
賭けをするのだが、サッとメモ帳を出して賭博する者たちのメモをする
ところなど、モーガン・フリーマンが演じているだけあって
知的なしぐさだと私は感じた。
レッドはアンディの処世術を観察しながらもだんだんと好意を持ち始める。
レッドは刑務所内の「通信販売」の調達屋で、アンディは鉱物が趣味という
ことで石からチェスの駒を掘り出すという口実で小さなハンマーなどを
レッドを通じて購入していた。
しかし、刑務所のグランドには石がなかったので、畑作業班からレッドが
チェスの駒用の石を調達してアンディにわたしていた。
服役中の囚人がゆっくり座ってできるゲームはチェスやオセロだ。
そのゲームをしている時に「秘密の会話」をそっとして情報交換や
お互いの便宜を図る時間なのだ。
↓2回目のプレゼントに添えられたカードだが筆跡が読み易いので採用
アンディに好意を持ったレッドは当時大流行のリタ・ヘイワーズの
ポスターをプレゼントする。そこに添えられたカードの筆跡をみると、
レッドはブロック体大文字小文字混交で、
単語と単語の間が大きく開いている、
縦線の角度は端正、
そのうえ、Redのサインの「R」に観ることのできる
「批評家」サインを見逃すことはできない。
「サッパリしている無欲な男だが頭脳明晰な批評家」という
パーソナリティが読み取れる。
一方アンディの筆跡は本当に優雅だ。特に自分のサインにおいては
優雅さと自分軸の揺らぎなさ、
「y」や「f」には最後まで粘ることができる精神的な強さが現れている。
私はこのサインだけで
「頭脳明晰で、包容力があり、自分軸の整った、粘り強い、そして優雅な」
書き手に恋をしてしまいそうだ。
刑務所ではアンディは会計や投資、脱税のすべてを網羅していることから、
知能戦で戦い抜くこととなる。
まず、控えめながら相手をその気にさせる知識を小出しにして
刑務所のトップから丸め込んでいくのだ。
だんだんと「脱税を上手にできる税務署類を作れる」会計士として
実力を発揮しはじめるのだ。
その間刑務所の中の物置同然の図書室を充実させるために政府に週に一度、
数年後は週に2度の「嘆願書」を書きまくる。
古本屋にも顔を聞かせて図書購入を安価で充実させる。
レコードなどのオーディオ関係も購入し、服役中の囚人たちには
通信高校の卒業を手伝って「社会復帰」に希望を持たせた。
アンディにはレッドという友人ができるが「ただ一つ」のことだけは
レッドに知らせないでいた。「脱獄」だ。
アンディが脱獄してから皆あんぐりするのだが、
用意周到で大胆な計画だった。
アンディは自分の冤罪を晴らすことのチャンスを刑務所の所長に
踏みにじられてから「さらに用意周到に脱獄後の準備をする」ようになる。
だが、誰にもそのことは言わなかった。
失敗は死だと刑務所の所長や刑務官たちに思い知らされていたからだ。
ただ、レッドには必ず尋ねる場所の名前だけは教えていた。
レッドが仮釈放になって、その後の社会復帰に絶望し始めた時に
アンディの言葉を思い出し、めでたく二人はジタワネホで再会する。
冤罪と「希望」を持つことの大切さを教えてくれる素晴らしい映画!
ご紹介できて嬉しです。