『戦国期阿波国のいくさ・信仰・都市』の刊行経緯・読みどころ
皆さまこんにちは、戎光祥出版の丸山です。
2月の新刊、石井伸夫・重見髙博・長谷川賢二編著『戦国期阿波国のいくさ・信仰・都市』が刷り上がって参りました。まもなく刊行となりますが、刊行に先駆けて本書刊行の経緯や読みどころを紹介いたします。
本書の目次は下記の通りです。
第一部 いくさと政治
Ⅰ 細川氏・三好氏の権力構造―畿内・阿波からの視点 古野貢
Ⅱ 江口合戦後の細川晴元 馬部隆弘
Ⅲ 阿波国衆の中の三好氏の立場 新見明生
Ⅳ 天正前期の阿波三好氏と大坂本願寺・紀伊雑賀衆 山下知之
Ⅴ 長宗我部元親による阿波国支配の様相 石尾和仁
Ⅵ 長宗我部元親の阿波侵攻と西阿波の国衆 中平景介
Ⅶ 天正七年阿波岩倉城合戦の歴史的意義―三好・長宗我部戦争の転換点をめぐる考察 森脇崇文
Ⅷ 阿波公方の成立と展開 天野忠幸
第二部 流通・信仰・都市
Ⅰ 勝瑞城館の池庭の栄枯とその背景 重見髙博
Ⅱ 阿波の戦国文化史―細川成之・三好実休を中心に 須藤茂樹
Ⅲ 四国遍路と熊野信仰の関係をめぐる再検討 長谷川賢二
Ⅳ 石造物から見る戦国阿波の流通と信仰 西本沙織
Ⅴ 戦国期の阿波における仏教系諸宗派の展開と武士・民衆―曹洞宗・浄土宗の動向を中心に 石井伸夫
Ⅵ 中世後期阿波国一宮氏の歴史的変遷 福家清司
Ⅶ 阿波九城の成立と終焉 宇山孝人
コラム 一宮城跡発掘調査の成果と課題 宮城一木
Ⅷ 阿波国絵図にみる近世初頭の徳島城下町と阿波九城 平井松午
まずは本書刊行のいきさつを。
2018年3月に、石井伸夫・重見髙博編『三好一族と阿波の城館』(図説日本の城郭シリーズ7)を刊行いたしました。書名のとおり、同書は戦国時代の阿波国で活躍した三好一族に関係する城郭を取り上げ、その特徴を探るという内容だったのですが、同書の編集を進める上で改めて戦国期の阿波を勉強したところ、三好氏はもちろん、主人である細川氏、さらには阿波(平島)公方、そして隣国土佐から侵攻してきた長宗我部氏、関ヶ原の戦い後に入部してきた蜂須賀氏と、政治史的にとても面白い地域だと再認識するようになりました。
そこで、阿波戦国史を政治史的にまとめた論文集を作りたいなと思い立ち、『三好一族と阿波の城館』の刊行後に同書の編者である石井・重見両先生にご相談したところご快諾いただきました。
さらにお二人からは、戦国期の阿波は信仰や流通・産業面も大変面白いので、そのあたりも取り上げることで戦国期阿波の特徴・画期を俯瞰できるような内容にしたらどうかとご提案いただき、お二人に加え長谷川賢二先生にも編者になっていただきました。
各執筆者の選定は編者の皆さまにお願いし、現在徳島県で活躍されている研究者のほか、県外の研究者にも加わっていただくことで、最終的に目次で示したような、政治史のみならず流通・都市・信仰・城郭と幅広い分野を論じた、大変意義深い書籍になったと思います。
各論文では、文献史学・考古学・歴史地理学それぞれの立場から、文献史料、出土遺物や遺構、現存する石造物、国絵図等の図像資料などを素材として、さまざまな角度・視点から阿波戦国史の課題を検討、論じていただきました。
「はしがき」にも書かれていますが、阿波中世史研究は今とっても「熱い」です。本書では新たな事実をいくつも明らかにしていますし、現在進行形で研究が進展しています。本書を手に取っていただき、そのような「熱」をぜひ感じ取っていただければ幸いです。