横山住雄著『織田信秀』の読みどころ解説
戦国時代の尾張国(現在の愛知県)といえば、何をおいても「織田信長」がまず頭に浮かぶ方が多いことでしょう。
しかし、信長の活躍を語る上で、それ以前、黎明期の戦国尾張で台頭し、守護斯波氏の重臣織田氏の支流に過ぎなかった自らの家を戦国大名にまで押し上げた信長の父・信秀の功績は避けては通れません。
信秀は清須城主・織田大和守家の庶流・弾正忠家の出身で、経済・流通・信仰の要地・津島を押さえていたこともあり、その経済力を背景に急速に台頭していきました。やがて尾張を代表する勢力となり、今川義元・斎藤道三といった国外の大勢力とも激戦を繰り広げるようになっていきます。
信長と斎藤道三の娘・濃姫との婚姻、桶狭間での今川義元の死などは、信秀の時代からの動きを押さえておかなければ正確に理解することはできないでしょう。
そんな織田信秀の生涯を一冊にまとめたのが、このたび刊行する横山住雄著『織田信秀ー信長飛躍の足がかりを築いた猛将』(中世武士選書52。四六判・254ページ。本体2,700円+税)になります。
【目次】
序 章 斯波・織田氏の発展
第一章 織田信秀の家系
第二章 織田信秀の登場
第三章 織田信秀の内外政策
第四章 織田信秀の戦略経営
第五章 病床の信秀
第六章 信秀の一族・家臣
附 録 岩倉織田氏の終焉と新史料
『織田信秀』解題 柴 裕之
著者の横山住雄氏は美濃・尾張の中世地方史ならびに禅宗史を研究し、周辺地域に残された多くの歴史・宗教史の基礎史料を丹念に猟集し執筆されることに定評がありましたが、惜しくも令和3年(2021)に逝去されました。
本書は平成20年(2008)に刊行された『織田信長の系譜ー信秀の生涯を追って 改訂版』(濃尾歴史研究所発行。初刊は1993年)を再刊したものですが、再刊にあたっては改題の上、誤字・脱字の訂正ならびに若干の文章整理を行い、新たに関連する古文書・史跡写真を追加するなど、体裁を一新いたしました。
さらに附録として「岩倉織田氏の終焉と新史料」(『郷土文化』第220号、名古屋郷土文化会、2014年)を収録し、織田氏研究の第一人者である柴裕之氏に、本書刊行の意義や研究史上の位置、さらには横山住雄氏の研究の特徴をまとめて「解題」を執筆していただきました。
織田信秀を中心に戦国尾張の情勢を解き明かした本書が広く読まれることを心から願っております。
文責:丸山