移住より定住!市民サクセスでいこう!
全国で繰り広げられている移住促進事業に対して木下さんがスパッと言ってくれました。さすが狂犬です。
本当に街の行く末にとって重要なのは未来の担い手となる子どもたちを増やすことであり、無差別にお金をばら撒いて「投票券を持つ人」を集めることではないはずです。
また、たとえ子どもが生まれたとしても、住みたくない街や戻りたくない街では、担い手を引き受ける人がいなくなってしまいます。
したがって、穴の空いたバケツに水を注ぐような状態を是正することが先決となります。
移住促進事業の課題
移住促進事業の問題点は、『移住したら100万円!』のような不可解なインセンティブにより、既存住民の満足度が低下することにあります。
残念ながら、このような移住施策は狩野モデルにおける逆品質、すなわち実施すればするほど既存住民の満足度が下がる状態になっています。
ただし、多様性は歓迎されるべきです。
この不可解で短絡的なインセンティブさえなければ、移住自体を否定はしません。
国からの補助がある以上、逆品質にならないように注意深く実施することが重要です。
パーソル総合研究所が、会社都合以外の移住経験者7,866名に対して実施した調査は移住パターンを「Uターン型」、「Jターン型」、「Iターン型」、「配偶者地縁型」、「多拠点居住型」に分類しており、大変参考になるデータです。
思い切ってUターン移住と配偶者地縁型移住に振り切る
結論を言うと、移住促進事業はUターン移住と配偶者地縁型移住(配偶者のUターン移住)の2つのパターンに限定し、これらの満足度を最大化するためにリソースを集中投入することが適切な施策です。もちろん、他の移住パターンを拒否するわけではありませんが、インセンティブを与えるなどの積極的な誘致は不要という意味です。
目標を達成するためには「何をやらないか?」が重要となります。
以下のグラフの通り、「地域生活の幸せ実感」も「住・生活満足度」もUターン移住と配偶者地縁型移住以外は移住者平均を下回ります。
Uターン移住者の中で住み続けたいと考える人の割合は50%以上ですが、Iターン移住者では約33%にとどまっています。これは厳しい数字であり、この状況を考慮すると、ここに投入される血税は投資というよりは浪費と言えます。
そのため、サービス業において有名な『1:5の法則』と『5:25の法則』に則って施策を進めることが効率的です。
※『1:5の法則』は、新規顧客に販売するコストが既存顧客に販売するコストの5倍であるというものです。一方、『5:25の法則』は、顧客離れを5%改善することで、利益が最低でも25%改善されるというものです。
市民サクセスでいこう!
カスタマーサクセスの概念を地方自治体の政策に応用した『市民サクセス』が成功の鍵であると考えています。まず、解約率(転出率)の改善に注力し、続いて出生率の向上やUターン促進に力を入れることが重要です。
最優先すべきは既存市民の満足度の向上であり、次に出生率の向上、それができてやっとUターン促進です。
子供を産みたいと思えない、産みやすい環境が整っていない街にUターンを促すことは望ましくありません。
魅力的な企業が増えれば、黙っていても自然にI・Jターン移住者も増加します。
そのため、行政はUターン移住者と配偶者地縁型移住者に焦点を当てるべきです。
最も重要なのは、民間企業にI・Jターンで就職・転職した人々がその地域に留まりたいと感じるよう、市民の満足度を高めることです。
予算、労力、時間は限られています。そのため、これらの資源を効率的に使用することが不可欠です。