『文章講座植物園』制作にあたって──本誌まえがきより
作品集『文章講座植物園』制作背景のご説明に代えて、巻頭に掲載した「まえがき」を公開いたします。津原泰水先生の代理人を務められている、アップルシード・エージェンシーの栂井理恵様からもお言葉をいただきました。
本作品集を、すこしでも多くの方にお届けできましたら幸いです。
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去る二〇二二年十月二日、津原泰水先生が逝去されました。
本『文章講座植物園』は、津原先生が開かれていた文章講座の受講生が、それぞれの作品を持ち寄って一冊の冊子にしたものです。講座では、受講生の作品に先生が講評をしてくださっており、いずれ完成した作品を冊子にまとめようと企画していました。残念ながらその途上で先生は亡くなってしまわれましたが、先生が熱心に主導してくださっていた企画をせめて形にすべく、受講生の中から有志が集まり、本冊子を制作した次第です。
同じ趣旨の企画としては、二〇一九年発行の『エビス・ラビリンス』がありました。そちらでは、カルチャースクールの対面講座が開かれていた土地に因み、「えびす」を共通テーマとして競作を行いました。第二号にあたる今回のお題は「植物」です。「植物を具体名と共に登場させると、作品に奥行きが増す。この技を是非ものにして欲しい」ということで、津原先生が考えてくださいました。
前冊子は(津原先生の作品以外は)よみうりカルチャー恵比寿の生徒の作品で構成されていましたが、本冊子には、その後津原先生が始められたオンライン講座の受講生も参加しています。前冊子に劣らずバラエティ豊かな作品集になったと思います。
なお、本冊子の制作にあたり、津原先生にも新作を御寄稿いただく予定でしたが、叶わぬこととなってしまいました。代わりに、先生の代理人である株式会社アップルシード・エージェンシーの栂井理恵氏の御厚意を得て、一九九七年に発表された『作家を目指す人たちのための恋愛論』を掲載させていただきました。あわせて、前冊子の収録作『エルビスさんの帽子』も再録しています。
生徒の作品は、少女小説、怪奇小説、幻想小説、一般文芸のジャンルに分け、第一章から第四章までの各章に収録しました。第五章には、津原先生の作品を収めました。それぞれの章には思いを込めて〝Blooming〟〝Toxic〟〝Bizarre〟〝Graceful〟〝Evergreen〟と章題を付しています。
装画には、前作に続き北見隆画伯に素晴らしい作品をご提供いただきました。北見先生は今回、表紙のデザインも担当してくださいました。
両氏に深く御礼を申し上げると共に、ここに謹んで津原先生への哀悼の意を表します。
津原泰水文章講座 受講生有志一同
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若い頃に代々木アニメーション学院で三年間だけ特別講師を務めたのち、津原さんは長く教えることから遠ざかっていました。ところが、二〇一五年に弊社が主催した小説講座をきっかけとして、文章や創作の指導に積極的に取り組まれるようになりました。自分が学び考えてきたことを後世に引き継ごうとするお気持ちが強くなっていたのかもしれません。一方で、執筆に奮闘する受講生の方々にご自身も励まされているようでもありました。
津原さんの意志を引継ぎ、こうして本冊子を世に送り出していただき、ありがとうございます。受講生の方々や本冊子を手に取っていただいた方々が、これからも創作を続けていかれることを願ってやみません。
なお、津原さんが遺した長編や短編、絵本、創作講座、エッセイなどを、今から数年かけて世に送りだしたいと考えています。小説のみならず音楽やイラストレーション、愛読書や参考文献などの記録を残すための公式サイトも立ち上げます。作品に関わってくださる人たち、読者のみなさんたちの声を聴きながら、ゆっくりと着実に進んでまいります。今後とも津原泰水の世界に変わらぬ想いを寄せてくださいましたら嬉しいです。
アップルシード・エージェンシー
著作権継承者代理人 栂井理恵
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