津原泰水文章講座2019→2023

恵比寿・オンラインで開講していた津原泰水文章講座のアカウントです。2023年5月、有志…

津原泰水文章講座2019→2023

恵比寿・オンラインで開講していた津原泰水文章講座のアカウントです。2023年5月、有志による作品集『文章講座植物園』を発売しました。※2019年11月発売の『エビス・ラビリンス』は、お陰様で完売いたしました。※無断転載を禁止いたします。

マガジン

  • 『文章講座植物園』試し読みまとめ

    2023年5月に発売した作品集『文章講座植物園』の試し読みを掲載順にまとめました。

最近の記事

『文章講座植物園』今後の販売予定(9月下旬〜)※10/24更新

9月のライブや文学フリマ大阪にお越しいただいた皆様、本当にありがとうございました! 今後、①通販再開、②文学フリマ東京37での販売 を予定しております。詳細を以下に記載いたします。 ※予定が決まり次第、都度更新します。最新情報は旧Twitterでも発信いたします。 ***** ①10/3(火)〜10/22(日):BOOTHにて通販 10/3(火)より通販を再開いたしました! 再開後は以下リンク先からお求めください。 https://ebisulabyrinth.boot

    • 『文章講座植物園』今後の販売予定(8/18更新)

      BOOTHでの通販は8/18(金)いっぱいでお休みをいただきます。その後、以下2つのイベントにて販売いたします。日付順にご紹介します。 ①9/3(日):ライブイベント「音は言の葉~夢分けの船に居る君と~」津原先生が何度も出演されている「ライブハウス代々木Barbara」さんにて、先生と音楽活動を共にしてこられた皆様によるライブが開催されます。講座の課外活動から派生したバンド〈誰も寝てはならぬ〉も出演し、物販にて冊子を販売いたします。※ライブご来場者様限定 イベントに関する

      • 『文章講座植物園』ご予約分の発送開始&通販再開しました!

        (7/21追記)Twitterアカウントが復旧しました。見守っていただきありがとうございました! ※7/18現在、Twitterアカウントが凍結されております。理由に心当たりがなく、解除のための手続きを行なっておりますが、解決までは本noteアカウントにて情報発信いたします。ご心配をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。 ***** 『文章講座植物園』の増刷分が入荷いたしました! ご予約いただいた皆様へは7/18(火)より順次、発送を開始いたします。詳細はBOO

        • 【朗読】星降りの松(抜粋)

          津原泰水文章講座の受講生有志で発行した『文章講座植物園』収録の武太郎吉「星降りの松」抜粋を、モリノ凛による朗読でお届けします。(イラスト:今村建朗) ※こちらからお読みいただけます。▶︎https://note.com/ebisu_kouza2019/n/n1f58c25172f6

        『文章講座植物園』今後の販売予定(9月下旬〜)※10/24更新

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        • 『文章講座植物園』試し読みまとめ
          17本

        記事

          『文章講座植物園』試し読み 小山智弘「苺ジャム」 

          小山智弘「苺ジャム」より抜粋。作品ごとに異なる挿画もお楽しみください。 *****  種を植えた。公民館の家庭菜園教室を任された。慈善活動を名目に、敷地を私物化していたからだろう。色とりどりの花と野菜があふれていている。道行く人が眺めたり、写真を撮ったり、時に絵を描いたり、図鑑を片手に眺めたりしている自慢の庭だ。自治体のものだが、種の用意も土作りも行った。  教室は4月から9月まで二週間に一度あるそうだ。苗から育てて収穫と種取りを行う。私のような素人が行って良いのかと尋ね

          『文章講座植物園』試し読み 小山智弘「苺ジャム」 

          『文章講座植物園』試し読み 松本寛大「舎利の花」

          松本寛大「舎利の花」より抜粋。 友人の死。彼が残した願掛けの樒の謎。主人公が弔問に訪れた家で明らかになる秘密とは。 ※ 全編をモリノ凛による朗読でお楽しみいただけます。▶︎ Part1 / Part2 / Part3  *****  田村が死んだ。肺の病気だそうだ。  報せをくれた友人によれば、仕事にかまけて体調が優れないのを放っておいたために発見が遅れたとのことだった。まだ五十を出たばかりだった。  田村とは学生時代に知り合った。その時分の田村はやせぎすで髪を伸ばし、暗

          『文章講座植物園』試し読み 松本寛大「舎利の花」

          【朗読】舎利の花(3/3)

          津原泰水文章講座の受講生有志で発行した『文章講座植物園』収録の松本寛大「舎利の花」全編を、モリノ凛による朗読でお届けします。(イラスト:今村建朗)

          【朗読】舎利の花(3/3)

          【朗読】舎利の花(3/3)

          【朗読】舎利の花(2/3)

          津原泰水文章講座の受講生有志で発行した『文章講座植物園』収録の松本寛大「舎利の花」全編を、モリノ凛による朗読でお届けします。(イラスト:今村建朗)

          【朗読】舎利の花(2/3)

          【朗読】舎利の花(2/3)

          【朗読】舎利の花(1/3)

          津原泰水文章講座の受講生有志で発行した『文章講座植物園』収録の松本寛大「舎利の花」全編を、モリノ凛による朗読でお届けします。(イラスト:今村建朗)

          【朗読】舎利の花(1/3)

          【朗読】舎利の花(1/3)

          『文章講座植物園』制作にあたって──本誌まえがきより

          作品集『文章講座植物園』制作背景のご説明に代えて、巻頭に掲載した「まえがき」を公開いたします。津原泰水先生の代理人を務められている、アップルシード・エージェンシーの栂井理恵様からもお言葉をいただきました。 本作品集を、すこしでも多くの方にお届けできましたら幸いです。 *****  去る二〇二二年十月二日、津原泰水先生が逝去されました。  本『文章講座植物園』は、津原先生が開かれていた文章講座の受講生が、それぞれの作品を持ち寄って一冊の冊子にしたものです。講座では、受講生の

          『文章講座植物園』制作にあたって──本誌まえがきより

          『文章講座植物園』試し読み 櫂 十子「シックスティーン・キャンドルズ」

          櫂 十子「シックスティーン・キャンドルズ」より抜粋。作品ごとに異なる挿画もお楽しみください。 ***** 1  新保光四郎が「体幹鬼強糞爺」になったその日は、光四郎の四十回目の誕生日でもあった。  残業終わりの午後九時過ぎ、光四郎はオフィスのある小さな雑居ビルから外に出た。  ぴりりと冷たい空気が光四郎の身体を包み込む。試しに、はぁと息を吐いてみると怪獣の光線のように白い息が伸びた。 「母さんの言う通り、コートを着てくればよかったな」とぼんやり考えながら、薄灰色のスー

          『文章講座植物園』試し読み 櫂 十子「シックスティーン・キャンドルズ」

          『文章講座植物園』試し読み 関野早紀「オンディーヌ」

          関野早紀「オンディーヌ」より抜粋。 ピアノ教室に通う一果(いちか)はレッスン中、十年前の記憶を思い出す。 *****  いっちゃん、本当の本当にあそこに通うの?  幼馴染の言葉が頭の中で何度も響く。あそこ、お化け屋敷だよ。  小学二年生の一果は楽譜の入ったかばんを抱え、教室の庭先にぐずぐずとしゃがみ込んでいた。見上げた初夏の青空にはえごの木が、釣鐘型の可憐な花を無数に連ねている。けれど伸びすぎたその枝はアプローチを塞ぎかけていたし、木陰には羊歯や擬宝珠が好き放題生い茂り、

          『文章講座植物園』試し読み 関野早紀「オンディーヌ」

          『文章講座植物園』試し読み 筒井透子「赤い花」

          筒井透子「赤い花」より抜粋。作品ごとに異なる挿画もお楽しみください。 *****  コピーして席に戻ったら、メールが届いていた。広瀬課長の前任者の沢渡課長からだった。一ヶ月前、十月の異動で本社に戻ったが、本社の統括部門にいるので、今も仕事の連絡はやってくる。さりげなくメールを開けたら、いつもは課内の数人に宛てて送っているのに、今回の宛先は私だけだった。 「おつかれさまです。  週末に異動のお祝いが届きました。ありがとうございます。  ガーデニングに凝っている妻が喜んでいま

          『文章講座植物園』試し読み 筒井透子「赤い花」

          『文章講座植物園』試し読み 武太郎吉「星降りの松」

          武太郎吉「星降りの松」より抜粋。 いなくなるなんて思わなかった。時計の針は動かないのに毎日は淡々と過ぎていく。 ※ モリノ凛による朗読版をこちらからお聴きいただけます。 ***** 「日本の冬は黒すぎるのよ。気の利いた色が欲しいわ」  そう言った彼女が着ているのは、Aラインシルエットのステンカラーコートで、色は鮮やかなオーシャンブルー。フラップポケットが、胸と腰あたり、上下に二つずつ、合わせて四つも付いていて何だか洒落ている。彼女が大きく伸びをすると、コートの裾がひらりと

          『文章講座植物園』試し読み 武太郎吉「星降りの松」

          『文章講座植物園』試し読み 梨皮いつき「薄いグリーン」

          梨皮いつき「薄いグリーン」本文よりカットアップ。 ***** レタスを剥がしていくと真ん中には芯のような部分がある。キャベツみたいに硬くはない。葉っぱになる意欲を秘めた、楕円形の蕾。/「ぼくは、あそこが大好きだ。仕込みのときも、こっそり齧ってる。誰にも渡したくない」/腕の内側を、わたしのそれにくっつけると、あの人は荷物を引っ張るような調子で歩きはじめた。/「守屋さん」あの人の顔が緩む。「君は丁寧すぎて損するタイプだね。こういうのは、勢いでやった方が早く終わるんだよ。決まっ

          『文章講座植物園』試し読み 梨皮いつき「薄いグリーン」

          『文章講座植物園』試し読み あらみきょうや「エキノプス」

          あらみきょうや「エキノプス」より抜粋。 ──花という花に子供の顔が泛び上がり、一様に無邪気な笑みを湛えてこちらを凝視していた。 *****  枝分れした細い茎の先端でそれぞれ紫色の花が球体を形成していて、一見すると棒つきの飴玉が珍妙なディスプレイを施されているようでもある。懸命に手繰り寄せた遠き日の記憶によれば、名を瑠璃玉薊という。  先日、鉢植えが送られてきた。心当りなどまったくなかったので困惑したが、送り主の欄にかつての恋人の名が記してあるのを見て取り、半ば呆れながら

          『文章講座植物園』試し読み あらみきょうや「エキノプス」