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青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない (電撃文庫) 著鴨志田一

【他人に笑われたっていい、自分の誇れる夢を貫いて】



ちょっと不思議な青春物語――シリーズ待望の第10弾“大学生編”開幕!



忘れられない高校生活も終わり、咲太たちは大学生に。新しくも穏やかな日々を過ごしていた、そんな秋口のある日――。

「さっきの本当に卯月だった?」

アイドルグループ『スイートバレット』のリーダー・卯月の様子がなんだかおかしい。いつも天然なあの卯月が、周りの空気を読んでいる……? 違和感を覚える咲太をよそに、他の学生たちは誰も彼女の変化に気づかない。これは未知なる思春期症候群との遭遇か、それとも――?

新しい場所、新しい人との出会いの中で、咲太たちの思春期はまだ終わらない。新たな物語の始まりを告げる、待望のシリーズ第10弾。

大学生になった咲太。穏やかな日々の中、スイートバレットに所属する卯月が空気を読めるようになる事で、未知の思春期症候群と遭遇する物語。 


同じアイドルグループに所属するのどかと卯月。

同じ目標を抱き努力を続けたから、絆と信頼で結ばれた。

しかし、天然の卯月が空気を読めるようになり、関係が崩れていく。

皆と同じが安心出来るという無意識な価値観に傷付けられて。

自由に生きる者を妬む気持ちに苛まれながら。

今までは気づかなくても自分と同じ立場の人間を見た時、自分ってこう見えていたのかを嫌でも理解させられる。
それが尊敬、感心なら良いかもしれない。
でも誰かに笑われ、疎まれ、憎まれていたらどうだろうか。
振れ幅はあるが多少なり嫌な気持ちになる。
みんなや普通といった平均的な価値を求める集団心理という「空気」に汚染され染まっていく。

卯月はその「空気」に汚染され個性を埋没させてしまった。

普通という価値観こそが本来なら必要がないのかもしれない。
人それぞれ普通という価値観で他人を物差しではかり、自分の普通こそが正しいのだと、その価値観で他人を縛ろうとする。
普通、一般常識という物はこの世界には無いのかもしれない。
どれだけ普遍的な意見だとしても、それを受け入れるにはどれだけ共感出来るのかにかかっている。
普通の価値観なんて物は時代と共に移ろう。
だからこそ、普通なんて物に自分を縛らず、自分がどうしたいのかが重要となる。
自分らしさを貫くという事は、敢えて空気を読まない事。
当然、周りから敵視されるが、その自分らしさを貫けばあなただけの個性となる。

同じ大学に通うスイートバレットのリーダー・広川卯月はその事に気付けた。
いつも天然な彼女がみんなを理解したいという思いから空気を読んで周りに合わせていたのだった。 「私も、みんなに笑われてたんだ」叶わない夢を一生懸命追いかけていることに対して、それを笑い物にしてしまう自分に気づいてしまった卯月。

しかし、本当に蔑むべきは、他人の本気の夢を嘲笑うだけで、自分は何もしない周りの人間だろう。

凡庸な周囲の冷笑を跳ね除けるほどの才能がある訳でもなく、そんな姿を自分自身すら信じきれず、叶わない夢を追うすごい奴だと冷笑してしまう。

それでも、一握りの夢を叶える人間に言える事は、どれだけ自分の夢をひたむきに信じて祈るように努力を続けられるかだと思う。
周りはそんな絵空事を笑うだろう、叶いっこないと。
夢ばかり見る人を馬鹿にするだろう。
それでも、そんな周囲の声に負けず、どこまでも自分自身を信じた者にだけ夢は叶う。
叶わない夢もあるのかもしれない。
それでも、夢を追いかける過程は僕達に様々な感情を教えてくれて、夢を叶えるよりも素敵な事に気付ける筈だ。
自分を真摯に省みて、苦悩して傷付いて出した答えはあなたの一生物の財産となる。
その事に気付けた卯月は、きっといつかは夢幻と言われた武道館ライブも叶えるだろう。


皮肉や嫌味を知った卯月は、人とは違う道を歩み、夢を誇る為に邁進するのだ。



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