『母性』を鑑賞して
母と娘の複雑な親子関係を描いた作品ということで、母との関係に悩み・苦しんだ過去がある私は、自分の抱いた苦しみが何かしら解消されるのではないかと期待を込めて、映画館のチケットを買いました。
共感できる過去を持つ人には、胸が締め付けられる映画ですので、じっくり見て噛み締めてほしい。
共感ポイント①:母親がどうすれば自分のことを好いてくれるのかわからない苦しみ。
作中で娘(永野めい)が、母(戸田恵梨香)に喜んでもらうことを期待して、母の仕事を手伝ったり、学校での自分の勇敢な行動について報告したりしますが、母にそっけない態度をとられます。
母がどうすれば喜ぶか、同じ女性でこんなに近くにいるのに、分からないものですよね。作中の母(戸田)は、自分がまだ*自分の母親の娘*で、自分の娘(永野)は母親に愛されるための小道具的な存在に思っていたから、すれ違いが起きていたと思いますが、普通の親子関係でも分からないものだと思います。
例えば、私は勉強ができて有名な大学に行こうとした際に、母に「人のことを馬鹿にしているんでしょ」と強く叱られた経験があります。
私としては、「有名な大学に行くから親も鼻が高い」と思い込んでいたのに対し、母は、娘が自分が歩んだことのない道を娘が歩み、離れていく恐怖心を抱いていたのだろうと思います。
身近な関係で、遠慮もないが故に、親子関係を拗らせてしまう人も多いでしょう。
共感ポイント②:母になる≒娘でなくなることへの恐怖
この恐怖心については、この映画がまさに言語化してくれたメッセージだと思いました。
私も今となっては母と仲が良いのですが、結婚をして子供を持つことを考えた際に、なんとなく*母から卒業しなくてはいけない*寂しさがありました。
ずっとお母さんに守られていたい、でも子供を産んだら、自分自身よりも大切にしなきゃいけない存在が現れてしまう。
作中でも母が最後、娘の妊娠を聞いて嬉しそうに微笑み、その後当たり前に子供部屋に入っていくシーンがありましたが、娘が自分から卒業し、自分も娘に戻ることができた喜びを示しているのではと思いました。
子供ができた際に、どこかポジションを取られるような寂しさは、この自分の母親からの卒業を意味しているのかと、この映画を見て認識できました。
共感ポイント③:母の過去と娘の過去の食い違い
同じ出来事でも母親と娘ではだいぶものの見え方が違うと思います。作中でも母の回想と、娘の回想はだいぶ異なりましたが、人間は自分の信念・考え方をそう簡単に変えられないからこそ、過去を都合よく捻じ曲げることでストーリーとして消化すると思います。
よき母、よき娘、といったソーシャルプレッシャーに耐えながら、自分はそれに適うように頑張っている。自分を認めてあげたい。
作中の母も、ある意味良き娘・良き母の両方でいるために、自分の回想を捻じ曲げたのだと思います。
私は今、25歳で、結婚・出産など、未来に対してさまざま思考を巡らせていますが、改めて安直な思考で子供を持たないようにしようと思いました。
娘から卒業することは、心地よい母との関係性を崩すことにもなるので。そう考えると、人間は親にならない限りずっと子供でいられるのかもしれませんね。