青くて痛くて脆い
こんばんわ!cocoです。
今日もゆるゆると小説のレビューをしていきたいと思います。今日の作品は住野よる先生の『青くて痛くて脆い』。
学生ならではの心のぶつかり合いを描いた、私のとっても好きな作品です。
⭐️あらすじ⭐️
主人公の田端楓は人と距離を取りながら生きてきました。他人の生き方を否定しない、踏み込まない。それが彼のポリシー。
そんな彼は、入学したばかりの大学の講義中に、何も恥じらいもなく声を大にして理想論を主張する学生、秋吉寿乃に出会います。
「世界から戦争が無くなればいいのに」といった、まるで小さな子供みたいに理想の世界を夢見る彼女を、楓は「痛くてみてられない」と彼女と一緒にいることに、最初は居心地の悪さを覚えます。
しかし、そんな彼も秋吉の中にある純真さに惹かれだし、秋吉の理想を形にするべく2人で小さな学生団体を立ち上げます。
2人で立ち上げた団体は規模が大きくなるにつれて、当初の目的を忘れ学生生活をうまくやり抜くための打算的な人間が集まるコミュニティとなっていきます。
楓はそんな腐る組織や輝きを失った秋吉に嫌気を差し、彼女のもとから去っていくのでした。
時を経て4年生になり、就活を終えた楓。
学生生活の最後を飾るべく、はるか昔に2人でつくった学生団体を破壊する計画を立てるところから、物語は展開していきます。
⭐️レビュー⭐️
タイトル通りの作品でした。とにかく秋吉も楓も、青くて痛い。
大人になり切る前の相手を受け入れられないもどかしさを、遠慮なく2人がぶつかり合うシーンで上手く描いていて、「わかるな〜」としみじみ思ってしまった。
楓にとっての秋吉は「夢を持ち続ける痛い子」
彼は、そんな彼女が変わっていき「ただの女子に成り下がる」のを見るのが怖くて、彼女と距離をとることで自分の中で「秋吉」を自己完結させようとします。
4年生になって彼女と再会した時、自分の思い描いていた秋吉でなはない目の前の彼女を受け止められず、「俺の知っている秋吉はお前じゃない」と言わんばかりに彼女を罵倒し、現実を受け止められない自分に傷つくシーンが若いなぁ・・って感じです。
大人になると、こんなふうにある意味人に裏切られることを恐れて、人に期待しなくなりますよね。もどかしさを感じなくはなるけど、こうやっていろんなことを受け止められるようになるのが「大人になる」ってことなのでしょうか。
傷つく楓に、バイト先の後輩河原さんが「もともと人は誰でもない。空っぽなんじゃないかな」と話すシーンが、この物語の救いでしたね。
人に期待するとかしないとか、そんなことじゃなくて、根本的に人ってそんなに偉くないし、ちゃんとしていない。
だからみんな一緒で、そんな自分を受け止めて、足りないところを誰かに補ってもらいながら、支え合って生きていくものなんだ。
私も高校時代は友達とよく衝突するタイプだったので、楓に共感できるところがありました。大人になりたいけど、大人になりすぎるのも嫌だから、長い人生の中で立ち帰りたい小説にしたいと思います。