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いくつになっても冒険心と心細さ

いままでそこそこ、旅をしてきた。
日本国内が主だが海外も少し。両親や大人に連れて行ってもらった旅もあれば自分で計画を立てて向かった旅もある。
どれもそれなりに思い出がある。
一緒に行った人と語れば「そうだったねぇ」となるし、地図を見れば「ここも行ったなぁ」と数珠つながりに記憶が蘇る。やはり非日常のこと、完全に忘れ去ることはなかなかない。

そのなかでも特に『忘れられない旅』となると、それはイコール「苦労した旅」「困った旅」。
今まで数々の困った旅経験はあれど、一番に思い起こされるのは学生時代の小豆島の旅である。

小豆島は瀬戸内海に浮かぶ香川県の島。映画『二十四の瞳』や『八日目の蝉』のロケ地であり、オリーブや素麺、醤油なんかも有名。瀬戸内国際芸術祭で知った人もいるだろう。

坂手港にある『スター・アンガー』
夜にはライトアップされる
瀬戸内国際芸術祭公式HPより


本州からは岡山や神戸、姫路からフェリーで2、3時間と手頃な距離。
体力・時間の有り余ってる学生は考えた「自転車で一周しよう」と。

結果として計画半ばで体力が尽きた。
小さくとも島は島。アップダウンが地味にきつい。夏の暑い時期に行ったのもアホの極み。
今でこそ自転車旅人口は増えたが、当時はそれほどメジャーなものではなく、そもそも小豆島の人口も少ない。
誰ともすれ違わない。
あまりにも孤独。
道、合ってるのか? 体力、もつか??
どんどん不安になる。
景色を楽しむ余裕も後半にはすっかり消え失せて気力もポッキリ折れ、結局途中でバスに乗ってスタート地点の坂手港まで戻ったのであった。
マルキンのしょうゆソフトクリームは涙の味……。

しかし失敗はそこで終わらない。
本州に帰還するためにフェリーのチケットを事前に購入していたは良いが、効率を求めるあまり(?)夜間発早朝神戸港着の便だったのである。当時から20年近くたった今ではどうか知らないが、待合所はフェリー到着直前まで施錠されてしまい、一人締め出されてしまった。

島の夜は暗い。
街とは比べ物にならないくらい、街灯が少ないのである。
夏なので寒さに震えることだけは幸いだったが、体力はもうゼロどころかマイナス。
小豆島の治安がどうなのかなんて知らない、判断できない。
万が一なにかあった場合、自転車(パッキング済み)という大荷物を抱えて逃げられる自信がない。
一人勝手な旅に出て、計画の甘さ故に何かあったらどうしよう、死ぬに死にきれぬ。

真っ暗闇に一人ぼっちで恐慌状態に陥っていたのだと思う。それも無理ないほどに、港の闇夜は暗く寂しかった。

結局、あまりの恐ろしさに港に建っていた謎の建物(おそらくどこかの職員待機所かなにか)を訪ね、事情を話し船が来るまで隅っこで待たせてもらった。
電灯の明るさにどれほど安堵したことか。
そうして深夜に到着したフェリーに乗り込み、旅はなんとか終わった。無事、だとか終わりよければ、とはとても言えない。終わり良くないもの。

今回の記事を書く際にあらためて地図やGooglemapで調べてみたところ、その建物は今も変わらず建っているようだがやっぱりなんの建物なのか分からない。連絡先を聞いて後からお礼くらい言っておくべきだったよな、と今なら思う。重ねて未熟さが恥ずかしい。
あの時不躾なお願いを聞いてくださった方々には深く感謝している。本当にありがとうございました。


楽しかった思い出というのは往々にしてその時点で最大値。
人に語ったり写真を見返したり、ためつすがめつ楽しめるものなのは間違いないけれど、より強烈なのは苦労した記憶である。
この手痛い小豆島旅行の経験もあって、今では最初から無理ない計画を立てること、リカバリー出来るように下調べをすること、計画通りにいかなくても気にしすぎないこと、を学んだように思う。
つくづく人は、というか自分は痛い目を見ないと分からない。
だが学ぶことが出来ればそれで上々。
であれば失敗旅は、自分にとって一番の忘れられない旅であることに間違いはない。


#忘れられない旅

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