無いものへと歩む、一歩目。
見つからない。探しても見つからない。今日一日ずっと探したまだ見つからない。あったと思う。記憶にあった。あたしはSNSを血眼になって探しまわる。
だんだん、不安が襲った。
無かったの?
最初から、無かった?
欲しいあまりに夢を見たのか。期待しすぎて頭が少しおかしいのか。だいぶ、おかしいのか。でも、あの人にイイネしてもらえて、舞い上がって何枚もスクショを撮った。
昨日、それを自慢しようとして、スクショが無いことに気づいた。
友達……、いやたんに、いっしょに学校にいるだけの学校でだけの今だけの同行人の女たちが「なにそれw」「コッワw」「そんなに好きなんー?www」相応の一撃を私の脳髄に叩き込んだ。
そうだよね、こんな浅い関係だもん。ここぞと弱みを露わにしたら殴るよね。そうだね。そういう関係にすぎない。
あたしら、目の熱さをこらえながら、おっかしいなあ、夢!?かっこわらい、ッて感じを一生懸命に演じた。
でも、バレバレだっただろう。ミホとララミは仲が特にいいから、こんな関係じゃなくて友達になっているかもしれない。今頃は鍵付きの裏垢で「きしょ」「オタク害悪だわ」なんて会話してるかも。そう思うと、ますます私は躍起になって目をガンびらきにして、あの人のイイネ欄も私のイイネ欄も、なんか、ない? そういうの一度に検索する方法。オタクなんかじゃないからあたし、わかんないよ!
ちがう。ちがう。ほんとうにあったの。泡みたいに消えてなくなる、どっかのバカなドリーミー病み垢女みたいに病んでない。あたしは病んで妄想とかそういうタイプじゃない。
ただ、あの人もあたしを気になってるなら、へえ、いいじゃん。そう思っただけ!
それだけ。
それだけ。
もしかしたらイイネを取り消したのかも。でもそれじゃスクショが無いのはおかしい。夢を見たのを、本物と間違えてる?
そんな気が刻一刻と真実味をおびえくる。
いらない。そんな真実なんて。いらない。必要ないしほしくない。
あたしは、目玉を血走らせて、スマホが暗転するたびにそんな醜い女と出会う。誰こいつ。このキモオタ最悪害悪チ○。
……あたしは、深夜3時をまわったころ、加工アプリをダウンロードした。
それから、ネットで見つけた、ネットに書いてあった手順通りに『そう』した。だってあたしはオタクじゃかい。チ○じゃない。あのひとに、無視なんて、されてない。
翌日、仮面をかぶった女たちが、なんだすごいじゃん、とあたしの肩に馴れ馴れしく腕をまわした。
「やだー。高見くんからイイネこんなキテんじゃん」
「昨日のなんだったのさ」
「こんなイイネもらいまくってんの、ミッチョンだけじゃねえ?w」
「スクショ、SDカードに移してノーパソにバッグアップしてたん。忘れてたわ! ごめ! サイコーでさ、もー忘れてたわ。自分にビックリだよもお!」
ビックリだよ。ビックリだよ。ビックリだよ。ビックリだよ。ビックリだよ。
さいあく、な、泡姫だわな。あたし。最悪なオタク病み女子の一歩目?
最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪
END.
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