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【クラシック入門】復活のコラールを聴き比べてみた【金管とコントラファゴットの厚み】

クラシック音楽の面白さの一つに「聴き比べ」というのがある。かつてはレコード、CD、MD、そして最近ではyoutubeなどで様々な音源を検索でき、比較することができる。
この技術の進歩は素晴らしいもので、私が学生の頃はCD全盛で、ダウンロードの定額サービスなどもなかった。ネット通販もそこまで浸透しておらず、自分の足でタワーレコードなどに行って様々なCDを財布と相談しながら買っていろんな曲、いろんな演奏を聴いたものだ。

それが最近では様々な音源がネットに転がっている。ナクソスの定額サービスもあるし、youtubeでは無料で様々な演奏が聴ける。私も最近、新しい曲の音源を探すときはまずyoutubeで聴くことが当たり前になっている。そんな時代が与える音楽家への悪影響もあるのだが、それはまたの機会に書くことにしよう。 


コロナ自粛ならではの動画

さて、自宅で過ごすことを要請されている昨今、音楽家の中では遠隔合奏が流行ってきている。とは言っても実際は生の合奏とは携帯が全く違って、それぞれの録音された音や、クリック音(メトロノーム)を聴きながらそれぞれのパートを録音して合成するというものだ。

この手のものは私個人的には全く面白くないものばかりだと感じる。録音の質もまちまちだし、アンサンブルではないからそれぞれがテンポに合わせた固まった演奏になる。

しかし、その中でニューヨークフィルハーモニックの公式ページで出したものはなかなか興味深かった。

マーラーの交響曲第二番「復活」の第五楽章のコラールを金管打楽器とコントラファゴットで遠隔合奏している動画がありました。

このシーンは不安に駆られるような曲想が急激に静まり、急に天から降ってくるようなトロンボーンのコラールが始まるのです。私がこの曲で一番好きな箇所です。
ポイントは、この動画で初めて知った方もいるかもしれませんが、トロンボーンとチューバ以外にコントラファゴットが入っているのです。コントラファゴットがいるからこそのこの厚みのあるコラールなのです。まずはニューヨークフィルの名手たちによる遠隔演奏をお聴きください。

いかがでしょうか?

コントラファゴットが入った瞬間音が厚くなる感じがするでしょう?ファゴットはその音自体が聴こえてなくても倍音を増やして音を豊かにするそうです。


ニューヨークフィルハーモニック

さて、では実際のフルオケでの演奏となるとどうなるのでしょうか?
同じニューヨークフィルの演奏でご覧ください。アメリカの五大オケの一つ。
トランペットは長くニューヨークフィルに君臨した名トランペッター フィリップ・スミス、トロンボーンは今も現役首席の名奏者ジョセフ・アレッシ。
会場は本拠地のエイボリーフィッシャーホール。

弦楽器や木管楽器、打楽器も勢ぞろいすると素晴らしいサウンドですよね。

アメリカはサウンド重視とよく言われます。とにかく豊かで鳴りの良い音を求める傾向があります。ですからそれぞれの楽器の音が非常によく混ざり合っています。それでいてしっかりと歌って音楽的なメリハリがしっかりしています。

さて、ではここから聴き比べです。youtubeで調べるとこのコラール部分だけを抜いた動画がいくつかありました。それぞれのオケの特徴やサウンドの違いがありますので三分ほどの場面を違うオケでお聴きください。


ロイヤル コンセルトヘボウ 管弦楽団

オランダの名門オーケストラとして有名なコンセルトヘボウ管弦楽団。ウィーンフィル 、ベルリンフィルと並んでヨーロッパ三大オケと言われることもあり、実力、人気ともに世界トップクラスです。
会場は本拠地アムステルダム コンセルトヘボウ。


ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

言わずと知れた世界トップの人気を誇り続ける世界に大オケの一つベルリンフィル。
トランペットが今までの動画で見るピストントランペットではなく、ドイツ系のオケが使用するロータリートランペットです。
会場は本拠地ベルリン フィルハーモニー。


ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

正月のニューイヤーコンサートで有名で、長らく世界トップの人気と実力を誇るウィーンフィル。
画質と音質が少し悪いですが、演奏の違いはわかると思います。ウィーンフィルはロータリートランペットに加え、ウィンナホルンというウィーン独自のホルンをしようしています。
会場はザルツブルク音楽祭の主会場であるザルツブルク祝祭大劇場。


ぞれぞれの個性

いかがでしたでしょうか?世界トップクラスのオケそれぞれの演奏はうまいだけではなく、表現や響きなどそれぞれの個性が感じられたと思います。

私は個人的にはやはりウィーンフィル のコラールが一番自然な和声感に聴こえるけど、ニューヨークフィルの混ざり合いながら開放的に響くのも好きです。ウィーンフィルの魅力の一つに、こういう大編成においての音圧があります。ウィーンフィル はこの四つのオケの中で一番音量は小さいオケなのですが、音圧があります。金管を支える弦楽器の分厚さ、ウィンナホルンの独特の圧力が迫力をさらに感じさせます。

コンセルトヘボウは柔らかい響きを根底にスケールの大きい響きを作っています。そして透明感のあるサウンドです。しかし、力強さという面では他の三つよりも少なかったかもしれませんが、そこも個性。好みの問題です。

ベルリンフィルは一番好き勝手やってる感じで最初のトロンボーンも一番統一感はありませんが、その自由な表現をそれぞれがすることで作るサウンドがベルリンフィルです。それだけに人数が多ければそれだけの表現が混ざり合ってうねるようなサウンドになります。


日本のオケは??

海外贔屓なやつめ!!と思いましたか?
もちろん最後に日本のオケも紹介します!!
現在、日本のオーケストラは武漢コロナの影響で窮地に立たされていますが、これを機にこういった演奏の配信をたくさんして欲しいものです。なぜベルリンフィルをはじめ世界のオケが配信をしているのに日本のオケは発信していかないのかは疑問でした。私が見落としているだけでしょうか?しかし、この情勢によって様々な日本のオケの演奏がネットに溢れると良いなと思ってます。

NHK交響楽団

最近の演奏だと、youtubeにあったのはN響のみでした。
そう、長い間、日本でトップのオケと言われているN響です。
この動画は全曲入っているので開始位置をコラールにしました。下の動画をクリックするとこれまでと同じコラールから開始します。そのまま曲の終わりまで行きますので三分ほどで止めたい人は止めてください。
この動画はしっかりとコントラファゴットを写しているところが秀逸です。演奏会のカメラワークには定評のあるNHK!!
会場は本拠地NHKホール。


いかがでしたか?

さあ、それぞれ聴き比べてみていかがでしたでしょうか?それぞれ好きな演奏は違うと思います。ニューヨークフィル、コンセルトヘボウ、ベルリンフィル、ウィーンフィル 、N響。そこにはそれぞれオーケストラの伝統があり、個々の個性、アンサンブルなど千差万別です。別にどかが素晴らしいというのではなく、それぞれ素晴らしいのです。しかし、好みは生まれます。途中描いたのは私個人の好みで語っており、正しい感想ではありません。あなたの感想はあなた自身にあり、正しいか間違っているかなんてことはないのです。ここで違いを知った方は、自分の好きなオケの他の曲も聴いてみてはいかがでしょうか?または他の曲でも聴き比べをしてみてください。そして「なんとなくこの演奏好きだな」と思ったら、それがあなたの好み。そこからクラシックを聴いてみるのも一つの方法です。

さあ、今回はマーラー「復活」のコラールでの聴き比べでしたがいかがでしたでしょうか?
あなたはどれが好みでしたか?


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蛯澤亮
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