フィガロの結婚序曲;どう吹くの?難しいファゴットパート【参考音源あり】
今回は動画の解説記事です。動画は下記。
Figaro Overture ; Bassoon part 「フィガロの結婚」序曲;ファゴットパート
本日、フィガロの結婚序曲の139~171小節の部分だけの録音をyoutubeで出してみました。動画分数36秒!!短い!!
はい、オーケストラの入団試験や音大の試験などでオーケストラスタディというオーケストラの難しい部分だけを抜き出した本(通称;オケスタ)から何曲か演奏するのですが、こんなもんです。あっという間に一つの課題が終わります。しかし、その短いパッセージだけで評価されます。ですからその数秒、数分の中に演奏家は心血を注ぐのです。そして、それが長くなり、一曲丸々演奏する演奏会を聴衆に届けているのです。今回はその一端を紹介できればと思います。
今回の音源
今回の録音は私がウィーンにいた頃、とあるオーディションのために録音したものです(ちなみにその録音審査は通過しました)。今聞けば直したいところもたくさん出てきますが、まあ、良いかと思ってアップしてしまいましたw
本来は最初の部分と中間部分の二つに分かれていたのですが、編集して139~171小節の演奏になるようにくっつけました。今まで何もできずにえびチャンネルはしおりDに頼んでいた私が、このぐらいの編集は自分でできるようになりましたw
ファゴットにとって最重要の「フィガロの結婚」序曲
さて、この動画の冒頭部分。フィガロの結婚序曲の冒頭と同じですが、プロアマともに演奏機会の多いこの曲、やはりファゴット吹きとしては吹けるようにならなければいけませんが、難しいですよね?誰もが最初からスラスラ吹けたという経験はないはずです。
プロのオーディションでもフィガロが出ない方が珍しいです。それだけ万人に難しく、重要なパッセージです。
運指は簡単にしよう
ではまず、運指について。この冒頭を普通の指で吹く人がいるのですが、すごいなと感心してしまいます。いわゆる国際的な運指で吹くと親指が大変すぎます。レでピアニッシモキーを押して、ド#ではCisキーとDキーを押します。私は考えただけでも腱鞘炎になります。
ではどうしたら良いのでしょう?
まずロックを閉めます。ロックキーはピアニッシモキーの隣にあります。
右列の一番下にあるのがロックキーです。普段は開けて吹いていますが、フィガロの冒頭の時はここを上に上げてロックします。ロックすると「カタッ」とか「パタッ」とか音がすると思います。
これでピアニッシモキー(右列、上から五番目)を押す必要がなくなります。最初のレドレドレも、ド#のためだけに親指を動かしてください。
全然簡単になりますよね?
まずはこれだけで、今まで知らなかった人は格段に吹きやすくなると思います。ずっとロックされてますから親指を押さなくても良いのです。指の負担軽減とともに、音ミスも少なくなります。
気をつけるポイント
発音
さて、このレドレドレですが、後から押す人が多いです。クレッシェンドのように押していくのはやめましょう。あくまで一拍目が大事。でも最初は強く出たくない。だから後から音がついてくるのではなく、最初も弱く演奏しながらフレーズの終わりに強くならないように我慢します。
逆にアクセントのように発音が強い人もいます。そうなると弦楽器と合いません。はっきりと出ることは必要ですが強すぎず、アクセントがつかないようにしましょう。
運指
さて、練習法は様々ありますが、付点でのリズムで指の運動をしたり、メトロノームで練習するのも大事です。ただ、音楽的に大事なのは指の回し方です。
どういうことかというと、このフィガロの冒頭ってフワフワしてたり、ボヤボヤしてたり、ユルユルしてるイメージってないですよね?音は小さいですが輪郭はとてもはっきりしてスピード感があります。
ですから小さい音で演奏することに囚われて指もグネグネ、フワフワ回していると曲想に合わないのです。パタパタとはっきり指を回す練習をしましょう。これは一見「何を言ってるんだ?」と思うでしょうが、吹きやすい強さで良いので、指の回し方を「はっきりパタパタ回す」のと「柔らかく回す」とイメージして変えてみてください。それだけで出てくる音の並びが変わると思います。
このフィガロの冒頭で大事なのはピアノ(小さい音)でありながら、スピード感のあるはっきりした運指です。ぜひ試してみてください。意識するだけで全然音が変わると思います。ただ、それによって今までの回し方と違うことから指が回りにくくなるかもしれません。しかし、それも新しい技術の習得だと思ってやってみてください。これだけでも自分の表現力が指回しだけで二倍増えることになりますから。
フレージング(歌い方)
フレージングも大事です。後半156小節目からは冒頭よりもさらに指が難しくなります。冒頭157小節目レドレミファミファソと158小節目ラソラソラは分けて考えます。大事なのは158小節目のラが速くこないように気をつけることです。上りのフレーズがうまく吹け始めるとその跡がラソラソラがおざなりになります。この小節線を跨ぐときにしっかりと意識できるようにしてみましょう。
この録音を聞くと小節ごとに区切っていることがわかるかと思います。特に古典派では区切りが大事です。それを明確につけるかつけないかは別として(実際には区切って聞こえないところもあるでしょう)、頭の中では必ずこの小節線を気にしてください。それによってフレーズも出しやすくなり、舌つきもしやすくなります。
とても細かいことですが、これを意識するだけで聞こえ方は全く違います。ゆっくり練習する時は少し大袈裟にやってみても良いでしょう。うまくタイミングとフレージングがあってくるとセンスの良い流れに聞こえてくるはずです。録音すると「え、プロみたいじゃない?」って思うかもしれません。
タンギング(舌つき)
小説で区切ると前述しましたが、それが舌つきをしやすくなる技術でもあります。タンギングのところでは小節線をしっかり区切っているのがわかると思います。ここで大事なのは「置く」のではなく「区切る」という意識であること。そうしてもそこで区切ろうと思うと音を置いてしまって重くなる場合があります。それだとテンポ感も重くなってしまいます。そこの塩梅が大事です。
さて、このくらいのテンポだとシングルタンギングで間に合う人と間に合わない人がいます。
まず早いシングルタンギングについては動画で紹介しているのでご覧ください。
えびチャンネルVol.38「シングルタンギングを速くする練習法」
シングルタンギングで追いつかない人はダブルタンギングを使わなければいけませんが、ダブルで演奏すると前述の小節の区切りや拍感がなくなりがちです。また、速く演奏できてしまうだけにマシンガンタンギングでただただ速くいってしまいがちです。しっかりとこの小節の区切りを意識して拍感を掴むようにしましょう。
雑にならないように
ちなみに、プロの方は最後の f の刻みの前にクレッシェンドする人はいないと思いますが、ここは基本的にsubito f (スビトフォルテ)、つまり急にフォルテ(大きく)なります。指揮者からクレッシェンドの指示を出されない限りクレッシェンドして f に向かわないようにしましょう。
そして、最後は f だからといって汚く下のラの音を吹き投げないように注意しましょう。最後の二分音符が大きくなりすぎるのも品がなく聞こえます。長いタンギングの後だからこそ、しっかりと丁寧に収めましょう。
いかがでしたか?
文章で書くのはなかなか難しいですが、音源があるので少しわかりやすくなったかと思いますがいかがでしょうか?
難しい部分も練習の仕方や考え方を変えることで全く変わります。今までどうしてできなかったかと不思議に思うくらい改善することもあります。逆に、気をつけることが増えて最初はきつい時もあるかもしれません。でもそれを乗り越えた時、あなたの演奏はレベルが一つも二つも上がっているはずです。
これからはこのようにえびチャンネルの動画に関しての補足説明などもこのnoteを使ってやっていきたいと思います。
また、聞いてみたいことがありましたらぜひリクエストください。
もしためになったとか、面白かったという方は下のボタンからサポートしていただけると嬉しいです!!
それではまた!