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個人経営飲食店の弱者の戦略 Part.2 ~ホールサービス編~
上記から続くPart.2では、
ホールサービスを主題に書きます。
Part.1でも言ったが、弱者の戦略は人しかない。
例えば強者のサイゼリヤは必要最低限のサービスをしていればよい。
すなわち、お客様を迎え、席を伝え、オーダーを聞き、
料理をお出しし、下げ物をし、会計をする。
それが最低限のベースである。
では、弱者の戦略はそこに何を加えて、
何を諦めるか?を絞らなければいけない。
お客様をファンにする。
全てはそこに行きつくように店も自分も作り上げる。
そのために必要なこと。
お客様を迎える時には
いらっしゃいませ。は言わない。
スタバで有名な方法だが、これはとても有効だ。
スターバックスは、有名な3rd placeというコンセプトに則り、
いらっしゃいませ。と言わない。
必ず、挨拶の、
おはようございます、こんにちは、こんばんは。である。
これを真似すると、お客様から挨拶を返されることもある。
かつ、会話のきっかけとなることもある。
不思議なもので、挨拶を交わしたがゆえに、
その後のコミュニケーションがスムーズになることを幾度となく経験した。
時にはその挨拶がきっかけで、スタッフがお客様に興味を持つこともある。
お客様のリアクションで、嬉しくなる経験をするからだ。
人に喜んで貰いたい素質がある人が、挨拶で覚醒したこともあった。
常連様であれば、名前を呼びながら挨拶することもある。
「〇〇さま、こんばんは~!」といった感じだ。
来てもらって嬉しい。が伝わるイントネーション、抑揚は必須だ。
名前を含めるかは人によってだが、嬉しいであろう人と、
そうでない人は注意して見分けなければならない。
背景は何か?
オーダーを取り終わって、一番最初のドリンクが出た時に、
お客様は何と言って乾杯しているか?を聞く。
絶対に逃してはいけない瞬間であり、
僕がスタッフに必ず教えることの一つだ。
乾杯には主旨が必ず言われる。
いつも来てくれるご家族連れであったとしても、
「おめでとう~」という事もある。
そのお食事の背景は何なのか?
を知れば、おのずとサービスは変わる。
むしろ変わらなければならない。
例えば前述のおめでとうは何なのか?
が分かって誕生日だったとすれば、
簡単なデザートプレートをチョコのメッセージ付きで、
食後に無償でご提供することもある。
同席者がオーダーすれば普通に行われているので、
皆さん自身が経験したこともあるかもしれない。
が、サプライズでお店からとなれば、絶対忘れない人生の1ページになる。
そうやって、人生の節目に関わっていくことが出来ると、
ますますお客様に愛してもらう事が出来る。
会話ではなく、聞き役。
お食事中にお客様との会話は弾むべきだ。が、
それは決して他をないがしろにすることではない。
全体のお客様の満足度を見ながら、
それぞれに小刻みにテーブルの出入りを繰り返す。
会話は振る。からの帰ってきた言葉をひたすら傾聴する。
時には後で、さっきのこれですけど・・・
と、言い足りなかったであろう言葉をさらに引き出す。
べったりくっついて話を傾聴しすぎても、
実は満足度は得られない。
そのお客様と話している姿は、周りにも見られている。
全て満遍なく見るが、お客様には自分(達)が一番大切にしてもらった。
と、どうやれば感じてもらえるか?を観察し実行しなければいけない。
その一番は、経験上【傾聴】の場合が多い。
お客様の「話し足りない。」が必須だが、
周りからの目と、同席のお客様の感情など、
色々な弊害があることを忘れてはいけない。
まとめると、
会話にコストをかける。
という考え方だ。
これは大手には絶対にできない。
だからこそ、やりがいがある。
お客様の中には一定数、
「俺(私)の話を聞いて欲しい。」
という需要が存在する。これを拾う。
もちろん、こちらも興味を持たなければいけない。
その姿勢がお客様に伝わるからこそ、愛される。
余談だが、友人にすべき三人というアメリカのエスプリをご存知だろうか。
曰く、【医者・弁護士・バーテンダー】らしい。
聞き上手は、人生において欠かせない友という事だ。
絶対にブレてはいけない。
そうして愛してくれたお客様に、慣れてはいけない。
これが難しい。
お客様はある時、ある一瞬で愛から覚めることがある。
その瞬間はいつ来るか、何が引き金か分からない。
けれども、帰り際にこちらが?マークを感じるときは、
得てして当たっていることが多い。
何が引き金か聞ければいいが、
残念ながら聞けないことの方が多い。
だからこそ、絶対にブレてはいけない。
自分がブレていなければ、逆に言うと諦めがつく。
今まで保ってきた距離感を死守する。
お客様は友達ではないし、恋人でもない。
そして例え本当にお客様からの恋心を感じる瞬間があっても、
スタンスを変えてはいけない。
恋には応えないが、愛には応えよう。
(しかしスタッフが女性の場合は注意して欲しい)
お見送りは徹底する。
僕がやっていたお店は路面店ではなく空中階だった。
が、お客様がお帰りの際は、必ず階下迄お見送りに行っていた。
帰り際の余韻を持ってもらうためだ。
そして、帰り際に仲良く話していたとしても、
必ずお辞儀をして、感謝を述べて、お見送りする。
そのメリハリがお客様に効いていたと思う。
そして季節を問わず、
角を曲がる(見えなくなる)まで必ず見送っていた。
それを分かっているお客様からは、
冬には、寒いからいいですよ。
と言ってもらえるほどだった。
もちろん、それでも変わらず見送っていた。
このお見送りは、他にとてもいいことがあった。
それをよく見ていた近所の学生が、
アルバイトしたいと言って来てくれたことだ。
その学生いわく、
「毎回必ず楽しそうに見送っていて、
お客様も名残惜しそうに帰って行って、
そんなサービスをしたいと思いました。」
と、言ってくれた。
大事なのは、やると決めたら
「全てのお客様に必ず行う」ことだ。
自分だけされなかった。
という事故が起きれば、今まで積み上げてきたことが全て崩れる。
そういう覚悟を持つべきだ。
コンセプトを浸透させるには、相応の覚悟がいる。
何を諦めるか?
諦めることとは、いわゆるDX化の波に、
安易に乗ってはいけないことだ。
特にお客様との接点は、非効率でも死守しなければならない。
テーブル上での端末オーダーは勿論、
会計自動システムは論外。
予約システムはアナログでもいい。
ただ、お客様がウェブ予約を求めることが多くなってきているので、必要範囲で使用すべき。
とにかく、
お客様との接点、非効率を死守する。
それが肝だ。
以上で、この章を終えることにする。
つづく。
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