サービス業界の【あからさま】な区別は廃れていくのか?
ホテルマン時代のミス
僕はキャリアのスタートはホテルマンだった。
かれこれ30年ほど前の話になるが、
僕はベルボーイをしていた。
入社してほどない一年目の出来事だが、
表題の「区別」を分かっておらず、
ミスをしたことがある。
全国を飛び回っていたある専門分野の医師の方。
チェックインカウンターに行列が出来ている所、
到着されたその医師の方は、行列に目もくれず、
フロントカウンターへ行くや否や
「キー!(鍵)」と一言おっしゃった。
行列が出来ているくらいなので、
フロントクラークは全員、お客様との対応中。
並んでいるお客様も、いぶかしげに見つめていた。
周囲の否定的な気持ちを察した僕は思わず、
「恐れ入ります、皆様お並び頂いておりますので・・・」
と一言かけてしまった。
「君は何を言ってるんだ!」
大声で一喝された。
すごすごと引き下る僕。
他のお客様の手前、一応お声はおかけした。
と、カッコはついたかなと思ったが・・・
実はこの方、超がつくほど常連客。
本来であれば来館された際に、
顧客にカウンターまでお越し頂くことなく、
フロントから鍵をベルボーイが受け取って、
お部屋へご案内して差し上げるような、
特別扱いをするべき方。
多忙で、対応すべき先輩ベルボーイをすり抜けて、
新人である僕はそれを知らず声をかけてしまった。
という経緯だった。
顧客とすれば、フロントまで足を運ばせたのだから、
いつものサービスを受けられず、
怒りこそすれ、注意されるなどもっての外だった。
ベルボーイの重要な仕事の一つに、
常連顧客のチェックイン作業をアシスト。
という項目があることを初めて知った。
入社して一カ月も経たないうちの出来事だ。
上司から大目玉を食らったのは言うまでもない。
区別は「あからさま」である必要
「あからさま」に区別をする。
例えばホテルでいえば、
皇室の方や国賓の方のようなVIPの場合、
入り口に各部署のスタッフをずらりと並べてお迎えすることもあった。
ホテルのスイートルーム
航空会社のファーストクラス専用ラウンジ
ちょっとズレるかもだけど、
遊園地のファストパスも「あからさま」な区別になると思う。
世の中のサービスと言われるもの全てに、
区別は存在する。
その種類は数多あれど、「ヒト・モノ・場所」
に分類できるのではないかと思う。
しかしながら、前述のチェックインにおいては、
チェックイン業務のDX化により、大差なくなった。
ヒトによる「あからさま」な区別は、
デジタルに置き換えられていく。
それが時流で、当然の成り行きだ。
「あからさま」は挨拶だけでも
僕は飲食業が生業だったので、
イメージしやすいのが飲食店、
とりわけ街に根差したお店と思う。
DX化の波の中で、ヒトによる「あからさま」を
残していけるのが小規模店舗。
これはやりすぎると周りのお客様の顰蹙を買うので、
時には周りに分からないように。
という手法も必要だけど、
例えば「いらっしゃいませ」が、
「おかえりなさい」に変わるだけで、
あからさまな変化を顧客は感じれる。
サービス業界の「あからさま」な区別の未来は、
人の温もりを如何に伝えるか?という、
原点回帰にこそ答えがあるような気がしてならない。
だけどそれをもAIがやる様になったら、、、
僕のようなサービスで生きてきた人種は、
いかに温もりを伝えるか?
の知恵を絞らなければならないと、
時代の狭間でつくづく思う。
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