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【海外ミステリー】極上の犯人当てが楽しめる「ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ」
数年前から気になっていたアンソニー・ホロヴィッツの著書「メインテーマは殺人」を昨年10月に読み、そこから続け様に続編を読み漁りました。
「メインテーマは殺人」の記事を投稿したように、他の作品もそれぞれ記事にして投稿しようとも考えましたが、せっかくのシリーズものなのでまとめて記事にしてみることにします。
なお、犯人や事件内容には触れませんが、本の内容を少しだけ書いています。何の情報もなしに読みたいという方はご注意ください。
ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ
「メインテーマは殺人」から続く計5作品は「ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ」と呼ばれています。
探偵役に元刑事のダニエル・ホーソーン、ワトスン役は著者自身であるアンソニー・ホロヴィッツが担っています。
ホロヴィッツ自身が物語の語り手を担い、ホロヴィッツの視点で事件との遭遇、ホーソーンが事件の謎を解く様子を描きます。
現実世界の出来事も多く登場するため現実と架空が曖昧になり、あたかもホーソーンという架空の人物が現実世界にいると思ってしまいます。
シリーズの魅力
極上の犯人当て(フーダニット)
この「ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ」、多くの人が述べていますがなんといっても醍醐味は犯人当てです。
ワトスン役であるホロヴィッツの視点から、ホロヴィッツが得た情報は全て読者に提示されます。
犯行現場、容疑者のアリバイ、被害者の行動。
果たしてそれらから論理的に推理を組み立てて犯人を特定することができるか、毎作楽しみにしています。
また、容疑者が多いのも魅力です。登場する関係人物がみんな犯人となりえる動機を持っており、知れば知るほど全員が疑わしく思えてしまいます。
ちなみに私は解決編に入るまでに犯人はこの人だ!って推理しますが、一度も当たったことはありません。探偵としての素養が足りないのでしょうか。。。
とことん不遇な著者自身
著者自身が物語に登場し、事件に関わる。もし私だったら物語の中で自分を少し盛ってしまいそうですが、ホロヴィッツはそうではありません。
むしろそこまで卑下しなくても良いのにと思うくらい徹底的に無能さを馬鹿にされ、次から次へと不運に見舞われます。
ホーソーンからはそんなこともわからないのかと軽蔑の目で見られ、説明を求められてイライラされる。
事件を担当する警察官からは仕事をできなくするぞと脅されて情報提供を強要される。
自分の作品にはケチをつけられ、イベントでも優遇されない。
これにはシャーロック・ホームズシリーズへの尋常ではないリスペクトを感じますね。有能な探偵と対比するために無能に描かれる助手=ワトスン。
ホロヴィッツは現実世界で無能だと思われても良いのでしょうか?
と、ちょっと心配になります。
各作品の概要と簡単な感想
ここからは各作品の概要と簡単な感想を書いてみます。
第一作目 「メインテーマは殺人/THE WORD IS MURDER」
記念すべき一作目は「メインテーマは殺人」です。
自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか? 作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる……。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ! 7冠制覇の『カササギ殺人事件』に匹敵する傑作!
脚本家のホロヴィッツのもとに、刑事もののドラマの脚本監修として以前から付き合いのあるホーソーンが自伝書を書いてくれというような依頼があります。
自伝書といっても半生を振り返るようなものではなく、一緒に事件を調査し犯人を特定し、その過程を本にするといったものです。
ホーソーンとホロヴィッツがコンビを組んで事件を解く、ではなくホロヴィッツが頑張って事件の謎を解こうとあれこれ頑張りますが、ホーソーンはそんなホロヴィッツを尻目になんのその、という感じです。
著者が脚本家というところもあって、文学の知識がてんこ盛りでした。
舞台がイギリスのロンドンということもあり、海外事情が知れるのも醍醐味の一つですね。
第二作目 「その裁きは死/THE SENTENCE IS DEATH」
続く二作目は「その裁きは死」です。
実直さが評判の弁護士が殺害された。裁判の相手方が口走った脅しに似た方法で。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた謎の数字“182”。被害者が殺される直前に残した奇妙な言葉。わたし、アンソニー・ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンによって、奇妙な事件の捜査に引きずりこまれて──。絶賛を博した『メインテーマは殺人』に続く、驚嘆確実、完全無比の犯人当てミステリ。
前作に引き続きホーソーンから事件を知らされてホロヴィッツは事件調査に同行しますが、前作よりも2人で行動する時間が長いです。
ホーソーンは自分のことを語りたがりませんが、少しずつどういった人間かが見えてきます。
容疑者として日本人が登場するので、日本人としては「日本人と日本の文化を登場させてくれてありがとう!」と少しばかり嬉しい気持ちになりました。
第三作目 「殺しへのライン/A LINE TO KILL」
三作目は「殺しへのライン」です。
『メインテーマは殺人』の刊行まであと3ヵ月。プロモーションとして、探偵ダニエル・ホーソーンとわたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは、初めて開催される文芸フェスに参加するため、チャンネル諸島のオルダニー島を訪れた。どことなく不穏な雰囲気が漂っていたところ、文芸フェスの関係者のひとりが死体で発見される。椅子に手足をテープで固定されていたが、なぜか右手だけは自由なままで……。年末ミステリランキングを完全制覇した『メインテーマは殺人』『その裁きは死』に並ぶ、〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊!
今作では初めて事件が起きていない状態でホーソーンとホロヴィッツの2人が行動を共にするところから始まります。
1作目の「メインテーマは殺人」のプロモーションも兼ねて、イギリスとフランスの間にある島で開催される文芸フェスに招待されたため2人で参加することになります。
作者であるはずのホロヴィッツは誰からも関心を持ってもらえず、ホーソーンの話ばかり盛り上がる。不憫でなりません。
作中でも現実と同じく「メインテーマは殺人」が発売される予定になっているのが不思議な感じですね。ホーソーンは架空の人物なのに、まるで実在するような錯覚に陥ってしまいます。
第四作目 「ナイフをひねれば/THE TWIST OF A KNIFE」
4作目は「ナイフをひねれば」です。
「われわれの契約は、これで終わりだ」彼が主人公のミステリを書くことに耐えかねて、わたし、作家のホロヴィッツは探偵ホーソーンにこう告げた。翌週、わたしの戯曲を酷評した劇評家の死体が発見される。凶器はなんとわたしの短剣。かくして逮捕されたわたしにはわかっていた。自分を救ってくれるのは、あの男だけだと。〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズの新たな傑作!
前作までは文にまつわるタイトルでしたが、4作目にして少しタイトルを変えてきましたね。何か意味があるのでしょうか。
そして今作ではついに著者であるホロヴィッツ自身が容疑者として逮捕されてしまいます!
どうやら誰かにはめられたようですが、一体誰に恨みを買ったのか、はたまた偶然なのか。
証拠不十分で警察から仮釈放されている間に事件の真犯人を見つけなければならないという、今までと違って時間に追われる展開になります。
個人的にはこの時間的に追われる展開が、前作よりも緊張感があって良かったです。
今作ではホロヴィッツが脚本を手掛けた舞台が上演されますが、劇評家からこっぴどく批評されてしまいます。またしても不憫なホロヴィッツ。。。
第五作目 「死はすぐそばに/CLOSE TO DEATH」
現時点での最新作、「死はすぐそばに」。
ロンドンはテムズ川沿いの高級住宅地で、金融業界のやり手がクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。理想的な住環境を騒音やプール建設計画などで乱してきた新参者の被害者に、容疑者の住民たちは我慢を重ねてきていた。誰もが同じ動機を持つ難事件を前に、警察は探偵ホーソーンを招聘(しょうへい)する──。あらゆる期待を超えつづける〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ第5弾!
次回作のネタが切れてしまい、仕方なく過去の事件を題材にすることに承諾したホーソーンは警察を退職後に手掛けた事件の情報を小出しで教えてくれ始めました。
今回はホロヴィッツ視点ではなく、過去の事件を第三者の視点で描くという新しい試みが取り入れられています。
そしてついにホーソーンについての物語も明らかになってきたので、どうなっていくのか気になるところです。
おわりに
1年に1冊、毎年9月10日付近に新刊が発売されています。今年も同じペースだと考えると2025年の9月10日付近、7か月後が待ち遠しいですね。