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なぜ海外ミステリーはハードルが高いと思ってしまうのか
アンソニー・ホロヴィッツ著:「メインテーマは殺人」を購入してから半年以上経過し、遂に読み終えることができました。
アンソニー・ホロヴィッツのホーソーン&ホロヴィッツシリーズ1作目。ホロヴィッツの作品はずっと気になっていましたが、なかなか海外ミステリーということで手が出せていませんでした。
最初の10ページにわたるプロローグを読むのに思った以上の時間を要し、完全に疲弊した私はしばらくこの本のページを進めることがありませんでした。
ようやく訪れた1週間の休暇を機に再び読み始めて読了!に至るわけです。
読み終えた喜びから当初は本書の読書推薦文を書こうと思っていましたが、ふと
「なぜ海外ミステリーは読み進めるのが遅くなるし、購入すること自体のハードルが高いのか」
という疑念が頭の中をよぎりました。
「メインテーマは殺人」の読書推薦文は別の機会にして、本記事では「なぜ海外ミステリーはハードルが高いと思ってしまうのか」について考えてみようと思います。
「海外ミステリーはハードルが高い」と思ってしまう理由
我々日本人にとって、海外ミステリーって読むのに労力が必要で内容を理解するのにも時間がかかったり、難しかったりする気がしませんか?
好きな人は好きかもしれませんが、購入するのを躊躇してしまう人も少なくないと思います。
なぜ海外ミステリーは難しそう、ハードルが高いと思ってしまうのか?
大きな理由を3つ挙げ、それぞれについて考察していきます。
が、いつも部下に対して「結論から報告しろ」と指導している手前、先に結論を述べておきますね。
結論の根拠が気になる方は読み進めていただけると幸いです。
≪結論≫
文化・土地柄・人名の違いから、読み飛ばすべき文や単語の判断がつかないため。
①文化の違い
まずは文化の違いでしょう。生活習慣、交通機関、交通ルール、食事のマナー、宗教観などなど。
これらの事柄についての事前知識がない場合、登場人物がどのような性格でどのような生活を送っているのかを把握するまでに時間を要します。これは物語を読み進めるうえでの前提条件になってくるので確実に押さえておく必要があります。日本のミステリーの場合はよほど常識から外れた登場人物が出てこない限り、そこまで労力を要することはないでしょう。
それと、読み進めるうえで特に困るのがジョークなのか本気なのかわからないことです。登場人物のセリフをそのまま受け取って良いのか、はたまたジョークなのか。日本のミステリーであればある程度文脈から判断することができますが、文化が違うので文脈から読み取ることは難しい場合が多いです。セリフの一言一言を吟味しなくてはならなくなり、非常に疲労感を感じることになります。
②土地勘の無さ
次に土地勘の無さです。ここではその土地についての詳細の情報を知らないと定義しておきましょう。
例えば同じ「海沿いの古風な街並み」であっても、日本と海外(他の国)では全然違います。
日本の場合は海に向かって下り坂になっている細いアスファルトの道、ブロック塀に囲まれた瓦屋根の平屋が並んでいる風景が思い浮かびます。
これが例えばイギリスの場合はどうでしょうか。道は海に向かって下り坂?それとも海岸線に沿って起伏の小さな道が続いている?素材はアスファルトなのか石畳なのか。建物は木造?石造り?屋根の素材は?
イギリスの海沿いの街並みの風景を知らないと想像がつかないですね。
アメリカの場合となるとイギリスよりも歴史が浅いので、もっと想像がつかないですね。そもそも古い街並みがあるのかすらわからないです。
このように風景描写がある場合、すぐに想像できなかったりぼんやりとした想像で済ましてしまいがちになります。そうすると必要な情報がこぼれてしまったり、そもそも物語への没入感が薄れてしまいます。
③登場人物の名前
そして登場人物の名前です。日本人の名前は仮に似ていたとしても漢字が異なるのである程度の区別ができます。しかし、アンソニー、アンドレア、アマンダ、アイリーン、ダニエル、ダミアン、ダイアナといった登場人物が出てきたらどうでしょうか。
横文字の名前がなれない上に、パッと見ただけでは読み間違えてしまいそうです。注意を払って名前を読まなくてはいけません。
ちなみに私は「メインテーマは殺人」を読んでいる最中、登場人物の名前を途中から勘違いして見当外れは推理をしてしまいました。勘違いしたのは私の責任ですが、やはり横文字で頭文字が同じ、文字数も近いと読み間違えてしまうものです。登場人物の名前にもっと気を遣わなくてはいけませんが、疲れてしまいますね。
結論
冒頭でも述べましたが、前述した3つの事柄から結論を導き出します。
「文化・土地柄・人名の違いから読み飛ばすべき文・単語の判断がつかないため」
私は特にそうなのですが、小説を読んでいる時に無意識に文字を読み飛ばしています。一人称、二人称、三人称、語尾、相槌、事件解決に不要な恋愛描写(例外もありますが)。読み飛ばすと必要な情報(単語)だけを拾えるので、脳の処理負荷が低くサクサクページをめくることができます。私の場合は100ページ/時間といったところでしょうか。
ところが海外ミステリーの場合はそうもいきません。読み始めてからしばらくは知らない単語が頻出し、登場人物の行動原理になれるまでに時間を要します。登場人物が増えるたびに区別するのに苦労し、挙句の果てには主人公の名前まで間違えて読み進めてしまう場合もあります。
正しく物語を読み進めるためには、1単語1単語を吟味しながら丁寧に読む必要があります。安易に読み飛ばすとすぐに展開についていけなくなってしまいます。
1単語1単語を丁寧に読むという行為は大きな疲労感を伴います。1ページあたりの疲弊度を日本のミステリーを1とするのであれば、海外ミステリーは5~8くらいあると思います。
無意識に読み飛ばせない
↓
脳のリソースを多く使う
↓
疲弊する
↓
日本のミステリーより疲れると感じる
↓
海外ミステリーはハードルが高い
このようなからくりで、疲労感から「海外ミステリーはハードルが高い」と思ってしまうのではないでしょうか。