
【読書推薦文】海外ミステリー小説:「メインテーマは殺人」
アンソニー・ホロヴィッツのホーソーン&ホロヴィッツシリーズ1作目
「メインテーマは殺人」
ホロヴィッツの作品は実はずっと気になっていました。
本屋に行くたびに「カササギ殺人事件」と「メインテーマは殺人」を手に取っては見比べ、元に戻す。そんなことを繰り返していましたが、ついに今年の春頃ついに一念発起して「メインテーマは殺人」を購入。
読み終えるまでに時間を要してしまいましたが、今回はこちらの本の推薦文を書いてみたいと思います。
あらすじと概要
自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか? 作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる……。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ! 7冠制覇の『カササギ殺人事件』に匹敵する傑作!
語り手はなんとホロヴィッツ自身なんです!
著者自らが見聞きした情報を読者にも共有してくれます。
そして探偵役はホーソーンという元刑事。いろいろあって警察を辞めてしまい、今はコンサルタントという立場で警察や脚本家などに協力しています。
このホーソーンとホロヴィッツが事件関係者に聞き込みを行ったり、事件現場を訪れたりして事件に関する情報を集めていきます。
ネタバレまでは行きませんが、以降は少しだけ小説の内容に触れます。
事前情報なしで本書を読みたい方は読み飛ばしてください。
ここが面白い
①探偵役が元刑事で捜査のプロ
近年の推理小説は、事件に居合わせてしまったアマチュア探偵が謎を解くというパターンが多いように感じます。
その点、探偵役のホーソーンは元刑事で捜査のプロです。
しっかりと手順を踏んで地道な捜査により手がかりを集めていきます。
ホーソーンは頭の回転が非常に速く、鋭い観察眼を持ち合わせています。
途中の推理を説明せずにいきなり結論を述べたりするので、シャーロック・ホームズを彷彿させますね。
~もし中間の推理をことごとく消し去って、ただ出発点と結論だけを示すとすると、安っぽくはあるが、相手を驚かせる効果は十分にある。~
-シャーロック・ホームズ-
リスペクトを感じます。
②探偵役の個性が強烈
探偵役のホーソーンは相手に対して失礼と思われる発言にも躊躇しません。また、近年の探偵の中ではかなり口の悪い部類に入ると思われるくらい傲慢な口っぷりです。
ポリコレや差別的発言に対する配慮は一切ない人物として描かれています。
作中の著者がホーソーンを扱った作品を世の中に出してよいのか頭を悩ませるほどです。
シリーズもののタイトルとしても秀逸
日本語のタイトルだと分かりづらいですが、英語のタイトルが非常に秀逸なんです。
1作目:THE WORD IS MURDER
2作目:THE SENTENCE IS DEATH
3作目:A LINE TO KILL
4作目:THE TWIST OF A KNIFE
残念ながら4作目は前3作との関連性がわかりませんが、3作目までは明らかに連作とわかるようにタイトルに関連性がありますね。
作家らしい文章に関わる文字が使われており、また殺人を連想させる言葉も盛り込まれています。
WORD(単語) ⇒ SENTENCE(1文) ⇒ LINE(セリフ)
MURDER(殺人) ⇒ DEATH(死) ⇒ KILL(殺す) ⇒ KNIFE(ナイフ)?
余興ついでに次の作品名をChatGPTに考えてもらったところ、なかなかおしゃれなタイトルを提案してくれました。
「THE CHAPTER IS CLOSED」
と遊んでいたら、本作を読んでいる最中に5作目が発売されました。
5作目:CLOSE TO DEATH
CLOSEが合っていましたね。「終わり」と「近づく」を掛けているのでしょうか。CLOSEが作家と関わるような単語なのかちょっと判断がつかないですが、おしゃれタイトルであることには間違いないです。
ここが難しい
①情報量が多い
小説の前半は著者自身の自分語りが多くの割合を占めています。脚本家としてのスタンス、次回作品のアイディア、友好関係など。多くの情報が次々と流れ込んできます。
事件に必要な情報なのかそうでないのかが判断できず、一言一句丁寧に読んで非常に疲弊してしまいました。
②事件と関係のない登場人物が多い
著者の自分語りのパートでは多くの実在する著名人が登場します。当然事件そのものには関与していないので、その著名人に興味がない場合は辛抱が必要になりそうです。
こんな人にオススメ
①読者にフェアなミステリーが好きな方
読者に対して推理に必要な情報を全て提示してくれた上で、解決編に入ってくれます。
②イギリスの雰囲気が好きな方
主な舞台はロンドンなのでロンドンの地名がたくさん出てきます。また、ロンドン以外にも港町が出てきたりと、日本とは違った雰囲気を楽しむことができると思います。
③映画やドラマ、演劇の脚本や演者に興味がある方
ホロヴィッツはドラマの脚本も書いているので、そのあたりの話も随所にちりばめられています。
④遊び心を許容できる方
実在する著名人が何人か登場します。さすがに殺人を犯したりというわけではないですが、ホロヴィッツとホーソーンを結びつける役割などを担っています。
⑤ハードボイルドな探偵が好きな方
おわりに
海外ミステリーってなんだかハードル高いですよね。
以前それについて書いた記事もあるので、もしご興味がある方がいらっしゃればご一読いただけると幸いです。