【読書推薦文】読者や視聴者にフェアなミステリー:「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」
私はミステリー、推理小説を読みますが、フェアな作品が好みです。
ここで言うフェアな作品とは、読者にも事件の謎を解く機会が与えられていることを指します。解決編でいきなり読者の知らない情報が出てきて、事件の謎をあっさり解決してしまうような作品は少しがっかりしてしまいます。
私は脳を使うことに喜びを感じるタイプの人間なので、自分でも読み取った情報から推論を重ね犯人やトリックを予想します。答え合わせをして当たっていれば嬉しいです。
もし間違っていても納得のいくものであれば、またそれも良い作品に出会えたと嬉しくなるものです。
ぽっと出の人物が犯人だった、実は抜け穴があった、殺人ではなく事故だった(複数の殺人のうち1つが実は事故だったという場合は除く)といった真相は期待するものではありません。
読者に対して探偵役と同じ情報を与えてもなお解決編で読者の予想を裏切り衝撃を与えることができる、これがミステリー作家に求められる技量だと私は思います。
ノックスの十戒やヴァン・ダインの二十則を厳密に守れとは言いませんが、可能な限りは読者にフェアな真相を用意してほしい、とミステリー愛好家の端くれとしては願ってやまないものです。
と、ついついミステリー評論家っぽくなってしまいましたが、楽しみ方は人それぞれなのでこれはあくまで私一個人の意見です。軽く読み流していただければと思います。
私はしっかりした読書感想文を書けないので、今回は読書(視聴)推薦文という形でミステリー小説(ドラマ)を1冊(本)ご紹介させていただきたいと思います。
「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」
はいはい、最近流行りのノックスの十戒をあえて破ったメフィスト賞向きのミステリね。霊能力で犯人を捕まえるのかな?表紙が可愛らしい女性なので、きっと男女がイチャイチャしながら謎を解くパターンに違いない。
と思って「このミステリーがすごい!」に選ばれた作品でありながら手を出していませんでした。
ところがドラマを観てびっくり。
これは…視聴者にとってフェアな素晴らしい作品だ!
視聴者にも事件解決の手がかりを提示してくれているはずなのにわからない。観てる途中で「やられた!」となりニヤニヤが止まりませんでした。
表紙で買うのをやめてスミマセン。後悔ここに極まる。
ドラマ視聴後に原作と関連作品を購入して改めて城塚翡翠シリーズを読みました。
「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」は相沢沙呼先生の作品であり、2020年版の「このミステリーがすごい!」に選ばれています。
そんな大作を私が改めて紹介するのはおこがましいですが、私のように表紙やあらすじに対して先入観を持ってしまいスルーした方もいらっしゃるのではないかと思い、改めて推薦文を書くに至るわけです。
~あらすじ~
いわゆる霊能力者である城塚翡翠と、推理作家の香月史郎がタッグを組んでいくつかの事件を解決していきます。霊能力で得た情報をヒントに、論理的に事件の真相を導いていく。その裏では連続殺人鬼・「透明な悪魔」による連続死体遺棄事件が続いており、警察はお手上げ状態。もはや頼れるのは霊能力くらい…
といった内容になっております。
若干少なめではありますが、読者や視聴者にもちゃんと情報が提示されており、我々にも事件の謎を解くチャンスは十分にあります。
何が重要な情報なのかを判断し、推論を重ねて結論を導き出す。ぜひ真相当てにチャレンジしてみてください。
この記事でネタバレをするつもりはないので、もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら本もしくはドラマでこの作品をお楽しみいただけると幸いです。
なお、読むとき(観るとき)の注意点としては「読むのを途中で止めないこと」。
ぜひ可能な限り多くの情報を読み取り、最後までご覧ください。