パンチャカルマ体験⑥心身の土中環境を立て直す秋のヴィレチャナ
バスティに続きお店のオープン前にきっとやろうと思っていたヴィレチャナ!10/13-10/16にかけて行うことができたので今回はそのレポートです。
ヴィレチャナは主にピッタドーシャへアプローチするパンチャカルマ。ピッタは私の本丸的なドーシャ。一番近くにあるものはわかるようでわからないものです。
これでひと皮剥けてほしい!と願いながら懸命に取り組んだら、想像以上に若返りを実感し皮の向こうに残っていたピュアな心身が顔をのぞかせてくれました。バスティ編に続き、ぜひご覧ください。
1、最高の若返り法、ヴィレチャナとは
ヴィレチャナ=催下法(さいげほう)
パンチャカルマで2番目に基本的な解毒法で、治療の目的は胃や小腸、肝臓、胆嚢で憎悪したドーシャを刺激して胃腸管に運び、最終的にはドーシャを直腸を経て身体の外に排出させることを指します。
(©️『浄化療法とアーユルヴェーダマッサージ』
主にピッタ(火。消化・変換のエネルギー)にアプローチするので、
・ピッタ過剰の病気
・ピッタ体質の人
・カファの混ざったピッタ性の病気
などに適応があり、ダートゥ(構成要素)の中でもラクタ(血液)や血液の病気の治療法とされています。そのためピッタが増えやすい夏の終わりから秋にかけて行うことが多いです。
ちなみに、6月にバスティした時の話はこちら(①〜⑤)
バスティによって
・肌が全体的に白く艶が出た
・身体全体に張りが出た
・疲れにくくなった
などなど、良いことがたくさんあったのですが、パンチャカルマの後の心身は本当にナイーブなのにも関わらず、私は店の立ち上げ期間ということもあって行動が不規則になっており、
・8月は超一大プロジェクト並みの北海道出張料理
・銀行で人生初の大型融資へ申し込み、交渉したり資料作ったり
・テナントの大枠の設計を決めていき大きな決断を次々する
といった感じでいくら元気になったとはいえ案の定体力以上に動きすぎた感じがありました。
大丈夫かな…と心配しながらもヴィレチャナの2週間前くらいからはペースダウンしつつ、ギリギリ調整して行くことになった出張先に到着。
その日の夜に蕁麻疹を出しました。
この日は3日前から東京で冷たい雨が降ってすごく寒くなっていました。私は引っ越し先がまだ片付かない中出張用の荷物を梱包したら、今回は商品販売もあったことでかなりの荷物になってしまい、行商みたいな大荷物を背負って、三連休の京都まで…
・大荷物を背負う
・人ごみを移動する
・寒暖差の激しい季節
この3パンチに加えて、カレー屋さんでちょっと大きめのミールスを食べた時、いつもアレルギーの元になりやすい魚をちょっと口にしてしまった。
カレー屋さんを跡にして3時間くらい経ってからカフェで温かい飲み物を口にした途端顔がカッと熱くなり、その後は全身の湿疹。
4年ぶりくらいの本格的な蕁麻疹に情けない思いもありつつ、旅先の宿でひとりぼっちで発作に苦しむというのは非常に辛いものがあります。
もう10年近くアーユルヴェーダを勉強してきて、どうしてこんなことが繰り返されるのだろう?とか、せっかくバスティで綺麗になった肌がまた跡だらけになったらどうしよう?とか、弱っているので涙が出てきます。
長々書きましたが、こんなことがあっても、ヴィレチャナは前述の通り「ピッタとラクタドーシャ、ラクタの病気に効能のある治療」です。
今後はこういう反応が出にくくなるように、来週ヴィレチャナをやるんだ!と気を取り直し、その日は養生してよく寝たのでした。
2、セラピストが寄り添う前処置の3日間
毎日ハタイクリニックに通ったバスティの時とは違って、今回は
・アーユルヴェーダサロン「SHIRO&Ayurveda.」で3日間の油剤化(アビヤンガ、シローダーラー、カルナプルナ)
・4日目に自宅でヴィレチャナ
というセット。
その10日くらい前にハタイで先生に診察してもらい、油剤化が始まるまでの食事で気をつけることや、ヴィレチャナの日の注意点を聞きます。
食事は概ねこんな感じのもの。
・生野菜・塊肉・魚介類・乳製品・揚げ物・辛いものなどを除く
・温かく、できたてで、消化に軽いもの
・程よく油分があり、食べ過ぎに注意しながらちゃんと食べること
が私の場合の前処置期間の食事でした。
けっこういろいろ食べられるので嬉しい!
で、SHIROのまりちゃんの所に3日間通います。
毎日アビヤンガ・シローダーラー・カルナプルナ受けられていいなあ!と思われそうですが、毎日受けるのはそこそこ疲れます。
その上今回は、ヘッドマッサージとシローダーラーでブラフミータイラ(ブラフミーのオイル)がついた髪の毛は「洗髪禁止」。
小雨も降ってて気温も低下していたから頭は冷えるし、そもそもオイルで頭が濡れていると重たくて、体がだるくなります。そしてタオル巻きっぱなしだからどこにも行けない(行く気もしないけど)
そんな中、まりちゃんが毎日車で送り迎えしてくれて、施術しながらも励まし、細やかに私の肌や体温や状態を観察して先生と相談してくれたことは何よりの力になりました。
パンチャカルマは患者はもちろん、セラピストやドクター、みんなで一丸となってチームで取り組む治療です。信頼関係が構築されていること、それぞれが体力を保ち、ドクターの指示に従って従順に動くことが大切。
まりちゃんのようなセラピストの友人に恵まれたことに本当に感謝です。
3、ドクターのSMSを何度も読み返し頑張る中心処置
そして4日目。ちょうど日曜で仕事の連絡も落ち着く日、天気もそこそこで静かに迎えました。
ヴィレチャナは催下法なので、要は「お手洗いで下す」薬剤を服用します。
これは私が処方された舐め剤。
これを前日に「ノンオイル・有機のレーズン200gを1.5リットルの水に浸しておいて朝攪拌して作るレーズンジュース」で割ります。
舐め剤を溶かしたジュースを朝一で飲み、残りのレーズンジュースはそのあと1日かけて飲む飲み物になります。私の場合は、これ以外は夕方まで何も飲んじゃダメでした。※人によっては白湯OKだったり、常温の水だったらOKだったりする。これは薬剤や体質、体調によってドクターが判断する。
前の晩に及川先生からスマホのSMSにメッセージがありその通りにスタンバイ。1日の間に起きた排便の時間帯・状態・体調・そのほかなどを全部記録し夕方先生に報告するためです。
朝、先ほどの泥水のような飲み物350ccを、東の方向を向いて座り、落ち着いて一気飲みします。一気飲み…した!したら先生に報告。
すると程なくして「お疲れ様でした。このあと45分後に最初の排便があります。それは普通の便。そのあとは催下が始まりますので全て記録し、また夕方報告してください」とのこと。
先生が遠隔で見ているんじゃないか?てくらい、ピッタリ45分後に最初の排便があり、そこからは不定期な間隔で合計15回、夕方にかけてトイレに行くことに。もちろんずっと便が出ているわけではなく、古典書どおりにいうと
「まず初めに液状の便と尿を排出し、次に粘液、さらに黄色っぽいピッタ(胆汁)を排出する」。胆汁までは出なかった気がするけど、粘液は出ました。
他の人のヴィレチャナ記録とかも見ていたけれど、私は比較的楽な方だったのかもしれない。日曜で静かだったし、ベッドの上で本を読んだり、Netflixを観て過ごしました。
何回もお手洗いに行くと当然冷えるので、腹巻をし、暖かい衣服を着て靴下を履き、ブランケットをかけてのんびりとした気持ちになることを考える。
それでも最後の方は
・めまい
・頭痛
・足の急激な冷え
を感じて、ひとりぼっちだし、大丈夫かなと不安になってくるけれど、ちょうどタイミングよく夕方になって先生に報告。いくつかのSMSをやりとりして、明日からの食上げなどの指示をもらい終了しました。
先生に「小林さん、よく頑張りました」となんども送ってもらって、日曜でお休みなのにこんなに細やかに対応していただき、頭が下がる。同じメッセージを何度も読み返してその度に胸がジーンと熱くなり、頑張ることができました。
繰り返しますがパンチャカルマはチーム戦。みんなが今、私が私を大切にすることを全力で助けてくれているということに心から感謝をして、自分自身はドクターに言われたことを従順に守る必要があります。
4、スロータスがきれいさっぱり!重要な回復期間
これは先生に報告するために個人的に作った回復期間の観察と食事。
ヴィレチャナはバスティ以上に「心身のスロータス(消化の通り道)を綺麗さっぱり洗い流した状態」そのあとに何をどのペースで入れるかがとても大事です。
私の場合はヴィレチャナ終了後の晩御飯と翌日の朝・昼・夜は重湯からスタート。
翌日まではまだフラフラしているので、むしろこの重湯くらいでちょうどいい。これとお白湯だけとって、じっとして過ごしました。
2日目は米を食べてよし、
2日目の途中から米に豆を加えて食べてよし、
3日目は米に豆を加えた所に芋も加えてOKと増えていきます。
ヴィレチャナから4日目。ついに塩解禁になり、塊肉やその他消化に重たいものはもちろん避けながら、好きなものを食べてよくなりました。
この日の朝ごはんは本当に美味しかった…
美味しいとは味があること…涙
一覧表にも書いた通り、回復期間に感じた身体の変化はいいことばかりではありませんでした。
・圧倒的に疲れやすい
・長く歩くと身体がギシギシし、硬直する
・耳が中から圧迫されたような痛み
・知らない人とたくさん話したりできない
・唇・指先や顔の肌がカサカサになり、冷えやすい
などなど。
でもこれは当然で、排便から始まり粘液まで出し切った私の身体からはある意味これまで私を支えていた「酸化した油」が全て出てしまったので、身体が柔軟性を失い、ギシギシ・固まる・痛み・乾燥・コミュニケーションによる疲れといった、油分低下によるヴァータ性の症状が出たということ。
ゆっくり時間をかけて綺麗な油を入れて、酸化しづらくなるよう配慮していく切り替えのタイミングです。
一方、良かったことももちろんたくさんあって、
・心身が軽快になった
・頭の回転がとにかく速い
・判断を素早く的確に行うことができる
・理不尽なことへの怒りが以前のように湧いてこない
といった精神的なことから
・体重が4kg落ちて1.5kgほど程よく戻り軽快
・顔の肌がめちゃくちゃ白い
・シミが3つくらい減った
・腹部周りに残っていた蕁麻疹の跡が消えた
などなど
6日目の今日は何はなくとも心が深い感謝で満ち満ちていて、道端で人と目が合うだけでニコッと笑ってしまうほど。
前回のバスティの時には小さな台風のような音が集まってきて、それが出て行ったあとの静かで穏やかな心とそこから生まれる優しい創作意欲に「これが私のヴァータか」と感心したものですが、今回見つけた私のピッタは「世の中で何が起きても、そういうものだと受け入れるサットヴァな心」でした。ドーシャへの理解がまた一つ深まったことへも感謝しています。
5、若返りとは土中環境から立て直すこと
パンチャカルマ中に読んでいた『土中環境』という本にこんな一節が出てきました。
7日目の今日、ハタイクリニック でヴィレチャナ後の再診で及川先生がこう言ってくれたことと一致します。
バスティの時はバスティで、ヴァータへの理解以外にもたくさんのことがわかったけれど、今回はピッタさんこんにちは!しただけでなくて、私の心身のスロータスが絵に描いたように細かな脈の先の先まで想像することができたし、健全な通気浸透水脈を作るための回復期間なんだなと思いました。
これを読んでくれているeatreat.のお客さま同様、私も本当に辛い時には「すぐに全てを解決してくれる薬ってないものかな」と思うことがあります。
先日のじんましんの時にもそう思いました。
でも皮膚科に行くタクシーの中で思いとどまって「先生にちゃんと説明して、ステロイドはやめておこう。気道が腫れてないから大丈夫。よく分析して、ゆっくり立て直そう」そう考えることができました。
(※気道まで腫れる発作の時は命の危険に至ることもあるため、すべての人に当てはまる行動ではありません)
ものごとには必ず原因があって、一方で意味はありません。
「今ここ」を見つめ、今とそこまでの軌跡の点を辿り、心身が変化してきたその流れに落ちていた石を拾い上げて観察する。自分の中に綺麗な水を入れることも大切だけれど、綺麗な水を見つけることばかりに夢中にならないで、その水脈を見直すことから始めましょう。
最後に、このようなパンチャカルマの体験は、信頼するドクターとセラピストに恵まれ、時間・お金・体力を差し出し、それが実現する感謝の気持ちを胸に従順にドクターに従って過ごすことによって実現します。
パンチャカルマに興味を持ち、やってみたいなと思う方は、まずは治療院の扉を叩き、ドクターやセラピストと信頼関係を構築することから始めてくださいね。