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勉強の時間  自分を知る試み28

経済の力関係


近代の商取引は基本的に合法的な仕組みに則って行われます。国家間の同盟とか協力とか支援などもまあ同じです。

国によって法律は違いますが、グローバル化した今の世界では、国際法や国際裁判所や国際機関もありますし、国家間の取り決めや行為はメディアが取り上げますから、そんなに不正やインチキはできません。

ただ、国際政治の場合、欧米先進国にせよ、中国やロシアのように先進国より専制的で覇権主義的に見える大国にせよ、他国に援助したり協力したりするときは、それなりの損得勘定、戦略がありますから、利害対立とか同盟・協力という名の支配みたいなものが発生します。

それが政治の現実だと言えばそうかもしれませんが、21世紀になっても経済力やそこで活用される技術や資源だけでなく、古代や中世と変わらず武力が大きくものを言う世界がそこにあります。

じゃあビジネスの場合は、もっとフェアな経済活動なのかというと、そうでもありません。

仕事でなんらかのビジネスに関わっている人ならわかると思いますが、合法的な商取引でも、事業者は少しでも自分に有利に事を運んで、売上げや利益を大きくしようとします。

市場の状況や、技術力とか資金力とか業界での力関係によって、強い側と弱い側が生まれます。



利益を囲い込むということ


ひとつひとつの取引自体は合法的で納得感があるものでも、それを積み重ねていくにつれて、強い側はより有利に利益を拡大し、成長し、そうでない側は努力しているわりに儲からず、事業を維持するのがやっとだったり、徐々に衰退していったりします。

自由経済だからしょうがないじゃないかと言えばそれまでですが、巨大企業や強力な強みを持ったことで急激に成長する企業が得る巨大な売上げや利益は、なぜそれらによって囲い込まれるんでしょうか?

それは企業が閉じた機構だからです。

お金は常に世の中を巡っていますが、強い大企業の売上げや利益はその企業のものであって、そこと取引している多くの中小企業群のものではありません。

契約や取引が合法的に行われたとしても、力関係によってより多くの売上げや利益がより強い企業によって囲い込まれます。それによって強い企業はさらに成長していくことができます。



国家による経済の囲い込み


こういうことを言うと、大手企業のサラリーマンの中には、「じゃあ自由経済はだめで、ソ連みたいな社会主義の方がいいのか?」みたいなことを言う人がいます。

もちろん僕も独裁的な党や国家が権力を囲い込むソ連型の国家社会主義は、自由主義経済よりだめだと思います。

それは国家が活動のすべてを固定された枠の中に閉じ込めてしまい、創造的な発明も魅力的な商品やサービスの開発も、生まれなくしてしまうからです。

何も生産しないで、管理する共産党と国家の委員や官僚たちが権力を握っているので、どれだけ国家が激励しても、国民は決められた通りにしか働きません。

そういう管理された社会は、秩序に従っていれば仕事も生活も保証されるというメリットがありますが、「頑張って働けば、世の中も自分たちの暮らしもさらによくなる」といった夢とか希望はありません。

その点、自由主義経済、資本主義は変化する可能性を常に持っています。

資本主義は、次の新しい可能性に投資して、利益を生み、そこからまた新しい可能性を見つけて投資するという成長によって維持されるからです。

変化しなければ、新しいことが起きなければ、資本主義は死んでしまいます。

つまり、党と国家が主導する国家社会主義が静的でいわば死んだシステムなのに対して、少なくとも資本主義は動的で、生きています。

資本主義経済が機能してきた近代の歴史で色々問題は起きましたが、とりあえず世の中が便利になったり、健康で衛生的で楽しい生活が送れるようになったり、もたらしたメリットも大きかったと言えます。



自由主義の行き詰まり


しかし今、資本主義が促進してきた進歩や拡大によって、地球規模で環境が破壊され、富の格差が社会的に、あるいは国際的に拡大し、固定化されて、かつての身分のようなものになりつつあります。

テクノロジーによって人間が仕事を奪われたり、専制的・強権的な国家が力を伸ばしたり、国家間の対立が生まれたりしています。

自由主義経済によって変わってきた世界はもう自由ではなくなりつつあるのです。

この事態は自由主義の「自由」という意味の再定義を要求しています。

自由が国家や巨大企業、巨大資本のパワーを増大させていくだけの自由になっているとしたら、それはヨーロッパの古代や中世の国家あるいはカトリック教会が権力を行使した時代と本質的変わらないでしょう。

かつては武力や宗教の力によって囲い込んだパワーを、今は経済の仕組みが囲い込んでいるだけの違いです。

世界経済は成長を続け、グローバル化した世界は活気に満ちているように見えますが、それは数字の上だけの話で、実際には巨大企業や資本、国家による富の囲い込みが、世界を膠着状態に陥らせています。

この囲い込みの仕組みをほどかなければ、かつて恐竜が巨大化した末に滅亡したように、今のグローバルな秩序は大多数の人間を不幸にしながら衰退していくことになるでしょう。



新しいフロンティア?


地球環境が人の暮らしに不向きなくらい悪化したり、資源が枯渇したりといったことが起きる前に、富と権力を持つ国家や企業やエリートなどの勢力は、宇宙に新しい生活圏を開拓し、移住するかもしれませんが、大部分の人間は住みづらい環境の中で減少していくでしょう。

うまいこと地球脱出組に入ることができても、かつての地球のように緑や水や空気に恵まれた星は近くにありませんから、宇宙ステーションや密閉された基地のような環境で暮らすことになるでしょう。

新しい時代に順応する人たちは、その頃までにバーチャルな現実にも順応し、密閉空間に引きこもったまま、ほとんどの行為をバーチャルな空間で行い、それなりに楽しむことができるのかもしれません。

恋愛や性行為もバーチャルな空間で行われる部分が増え、自然な恋愛も性行為も減少していくでしょう。

生殖は医療化・経済化し、国家あるいはコミュニティの制度として、有志あるいは報酬による志願者たちによって行われていくかもしれません。


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