「働き方の意識改革」は取組の充実だけでは促されない
働き方改革の取組は、教育委員会、学校、教職員一人一人とそれぞれの取組がある。今回は教育委員会の取組から、働き方改革の課題の1つを考えてみる。
大きな予算を伴う取組、例えば、スクールサポートスタッフやスクールカウンセラー等の配置・増員については、教育委員会でないとできないことである。教育委員会が、財政部局にその取組の必要性と意義を説明し、国の補助をうまく使いながら、戦略的に予算を勝ち取らなければならない。 県全体の予算は決まっている。県の事業は教育委員会の事業だけではないので、他の部署とパイの分け合うのである。
一方、予算を伴わない取組でも、教育委員会が号令をかけてくれると、学校や教職員が働きやすい環境になる取組がある。例えば、「週1回以上の定時退庁日の設定」「夏季休業中の学校閉庁日の設定」「部活動の休養日の設定」「事務負担軽減のための調査・提出書類の削減・統合(ICTの有効活用)」「校内研修の柔軟化」などである。県下一斉で取り組むことによって、自治体や学校による格差はある程度是正され、どの地域に異動しても、取組の公平性がある程度担保される。また、保護者や地域の方々への学校に対する理解にもつながる。
教育委員会の仕事は、環境を整えるだけではない。働きやすい環境を整備した結果、学校においてどのような成果や課題がでてきたのかを把握・検証し、次の施策につなげていかなければならない。また、学校における効果的な取組等を広めていく仕事もある。
難しいところは、働きやすい環境を整備したり、県下一斉に号令をかけたりしても、実際に具体的な取組を行うのは、学校や教職員一人一人であるがゆえ、底上げはされるものの、学校間等の格差が広がっていくことである。
環境等が整備されても「教育委員会も含め、教職員の働き方に対する意識改革」が促されないと、その環境や取組を効果的に活用できないことになる。
働き方改革の意識改革を促すためには、「働き方改革は、何のために行っているのか?」「ワークライフバランス図る必要があるのはどうしてか?」「今、わたしたちに求められている教育は何か?」など、取組という木だけではなく、全体像にあたる森を俯瞰してみることは非常に重要なことだと考える。どちらかというと、今は「木を見て森を見ず」的な傾向があると感じている。
例えば、職員室にワンペーパーの学習指導要領のグランドデザインを掲示しておく。これが「森」にあたる。取組ばかりに目が向くことを避けるため、必要に応じてグランドデザインを振り返り、今、行っている取組はどこにつながっているのかなどを考える機会をつくる必要があると感じている。「木も見て森も見る」ことを繰り返すことで、働き方への意識改革が促されると考える。