ともに生きる。
休日の朝。
爽やかな日の光ととともに、
猫が盛大に私の掛け布団に
おしっこをした。
私が定時刻より遅く起きる時には
しばしばこのようなことが起こる。
こういった時のために
私の掛け布団には
敷布団用の防水カバーがかけてある。
私は防水カバーをかけて寝ている。
睡眠の専門家である知人から言わせると、
控えめにいって、
最低の寝具環境らしい。
でも、冬は案外熱が逃げず暖かい感じは気に入っている。
今日は洗濯するつもりはなかったが、
防水カバーを洗濯しなければならなくなった。
朝日とともに気分よく目覚めた私には
どうってことないささやかなハードルだった。
洗濯機に放り込み、
猫たちの飯コールの喧騒の中で
猫のご飯を準備し順に配膳する。
器を片付け、さあ掃除だ。
猫のトイレ掃除、掃除機をする。
猫の多頭飼いでは毛が物凄い量になる。
今日は休みだし、とラグにもいつもより丁寧に掃除機をかける。
うちのラグはもちろん防水仕様。
猫のおしっこ対策。
すこしかっこいい感じで
デニムっぽい見た目をしており、
触り心地もデニムっぽい。
防水加工になっているのは、裏地で裏がビニールっぽい素材。
また、先ほどラグとはいったが、実はラグカバー。
カバーであるため、ラグの上に被せるもの。
被せた時にズレないようにするためか、
ラグカバーの裏面には、ラグに覆い被せる用に四面にフェルトがついている。
こんな感じで。
非常にありがたい加工であったが、
我が家では、猫がかじりたくなる仕様だったようで、
めっちゃんこ噛まれていた。
四隅はぼろぼろ。
布はちぎられ、糸は出放題。
リアス式海岸のように模られ、見るに耐えない。
ラグにも掃除機をかけながら思う。
「こんなぼろぼろのラグの猫の毛を取っても多少はマシかもしれないけど...でもまあ結局ぼろぼろだな...少しでも綺麗にならないかな...」
諦めつつ、考えた。
ふと思いついてしまった。
リアス式海岸海岸にハサミを入れ、
直線にしてしまってはどうだろう。
思い立ったらすぐ行動に移した。
どうせ、すでにボロボロ。
これ以上悪くなりようがない。
まず最もぼろぼろの場所へハサミを入れた。
あら?思ったより悪くない。
よしこの勢いだ。次の場所へハサミを入れた。
ほう??悪くない。
ええい次だ。
あ、やっぱりいいんじゃない??
最後まで行っとこう。
これだわ、正解。
満足し、ラグから離れ遠目でラグを見てみて初めて気づいた。
どえらい裏地が出てる。
どうせだし、切っちまうか。
フェルトを切り始めた。
この頃から猫が不穏になり始める。
取り憑かれたかのように
どんどんラグを切り刻んでいるように見えたのだろう。
猫が鳴く。
私は切る。
鳴く。切る。
走る。切る。
私の手は止まらなかった。
一心不乱に切り刻んだ。
もっと、もっと、、、!
何かに取り憑かれたジャンキーのようだ。
不穏な猫を尻目に私はまだまだ手を止めなかった。
体感5分ほどだろうか。
全ての面を切り終えた。
切り終えてしまった。
猫が不安げにこちらを見つめる。
鳴いてたのは知ってたけど、夢中になっててごめんね。
と抱くと、まるでバケモノに抱かれたかのような身の塊具合だった。
申し訳ない。
さて、遠目から見てみよう。
ワクワクしながら、でも少し不安もありながら
ラグを見た。
そこにあったのは、アメリカ大陸のような形の布だった。
元は正方形だ。
見事なまでに失敗した。
しかし、防水機能が健在。
捨てるか悩む。
捨てると猫のおしっこが心配。
葛藤し下した決断は、
我が愚かさを受け入れることだった。
これとともに生きよう。
私が生み出してしまった、新たな大陸。
唯一無二のラグ。
まさか、IKEHIKOさん(ラグの会社)もこんなことになるなんて想像もつかなかっただろう。
だって、買って切り刻んだ私ですら想像してなかったもの。
次またラグカバーを買うことがあれば、必ずIKEHIKOにしよう。
元カレみたいな名前とともに今日は寝ます。
おやすみなさい。
おやすみIKEHIKO。