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第1章/第3話 白熊家は『武家』だった?-金曜日の夜は幸せだった?-

今日は待ちに待った金曜日。白熊家では毎週金曜日は家から徒歩10分の、【ばぁちゃんち】に泊まりに行く習慣がある。

祖父母は私たち三兄弟、つまり孫を溺愛してくれていたため、泊まりに来る事をいつも心待ちにしていた。
学校が終わり帰宅してからさっさと宿題を済ませ、夕食を平らげ【ばあちゃんち】に行くのだ。
しかし、、、1人ではない。もちろん、アニキ達も一緒に泊まりに行くのだ。アニキ達も怖い父から週一解放されるために。。

ピンポーン♪インターホーンを鳴らす。
『こんばんは〜』皆明るい気持ちで【ばあちゃんち】へ入る。
祖母『さあさぁ、お菓子でもお食べ。飲み物は麦茶かコーヒーもあるけれど好きな物を飲みなさいな。』
白熊三兄弟『ありがとう!ばあちゃん』
祖父『よぉきた、よぉきた』
祖父も祖母の後ろから孫たちを優しい眼差しで見守っていた。ちなみに祖父は木刀造りの職人だった。
さっそくお邪魔して、祖父母とたわいもない会話をし孫たちは通称ゲーム部屋に移動した。
まず、私が兄弟に言われなくともテレビゲームをセットする。私たちの唯一共通で好きなゲームソフトは、サッカーゲームの【ウイニングイレブン】だった。当時はJリーグが始まりサッカー人気に火がつき始めている時代であった。
さっそくサッカーゲームを始める。しかし、私は三男だったため、もちろんゲームも優先度は低い。アニキたちがコントローラー2つを独占し、白熱して試合を始まるのだ。途中、ゲームで熱くなり始め、長兄太志は試合に負けるとイラつき始める。
太志『おい、誠、隣に座れ
誠『う、うん』
後方でくつろいで座って傍観していた私であったが、なぜか、太志の命令で真横に正座で座り、緊張しながら試合を見なければならなくなった。

ピッピッピ〜、試合終了。太志が負けた。
ボコッ!
誠『イタッ!
八つ当たりで横から突然パンチが飛んでくる。
え!?突然のことで理解できずに、私はドサッと畳に倒れ込んだ。
太志『お前のせいで負けたじゃないか!クソ野郎が
また始まった。理不尽な太志のふてぶてしい言動、今日は暴力までセットだ。
殴られてもただただ太志が怖くて何も言えぬ私。
太志『今度はお前の番だ、やってみろ』(お前は一体何様なのだ)
次は私の出番でコントローラーを借りる。
ピッピッピ〜、試合終了。勝ってしまった。
私はゲームが大好きで、横で兄弟の試合を見ながら、妄想していたこともあり、兄弟の中でサッカーゲームセンスは抜群だったのだ。

太志『チッ。どうせまぐれだ。なぁ正樹?』
正樹『まあ、俺が誠と決勝だから潰してやるよ』
トーナメント形式で勝ち進んだ私と正樹が決勝戦をする。
正樹『この試合にお前が勝ったら、このゲームをお前にあげるよ
誠『本当に?言ったからな!』
正樹はブラジル代表、誠はフランス代表。
いよいよ、決勝だ。前半戦は拮抗し同点で折り返し後半戦に入る。
誠『ジダンいけー!』フランスのレジェンド、ジネディーヌ・ジダン選手が好きだった私は、ジダン選手をトップ下に置き中盤を支配し試合をコントロールしていた。
白熱するなかついに決勝ゴールをフランス代表が得点したのだ!
誠『よっしゃー!俺の勝ちだー!イェーイ( ̄▽ ̄)』と歓喜の声を上げて喜び、約束通りゲームは貰えると思い正樹に確認すると、
正樹『いや、あそこでファールを取らなかった審判がおかしかった、こんなの無効試合だ!』と約束を反故し始める。
誠『話が違うじゃないか!このゲームは勝利した俺のものだ!』と食ってかかる。
太志『くだらねぇ、くだらねー。そんな美味しい話があるかよ。誰がお前なんかにやるかよ
正樹『そうだそうだ。お前にはまだ早いんだよ〜』
なんて理不尽だ。アニキという生き物は三男の発言や功績など全く認めないのだ。
だんだんエスカレートし、涙を流しながら我を通し言う事を聞かぬ私に、ついにイラついた正樹と喧嘩になり、一方的に潰されるのだ。(ゲームでは勝ててもいつも喧嘩では潰される)
その夜はすすり泣きながら布団で眠った。

いつもこうなのだ。そうやって理不尽な環境で育つ私は、自然と強靭な忍耐力を鍛えていくのだった。

-第3話完-
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