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未来永劫成長し続ける世界半導体市場


【筆者の週刊エコノミスト寄稿記事】
経済・企業世界経済総予測2023
半導体市場が落ち込んでも、長期で伸びるこれだけの理由 豊崎禎久
2022年12月19日有料記事
~引用~
2023年の半導体市場はマイナス成長となるが、データセンターや電気自動車の需要は手堅く伸びていく。その一方で半導体メーカーの優劣が変わる可能性がある。
世界半導体市場統計(WSTS)が2023年の半導体市場の見通しを対前年比4.1%減の5566億ドルと発表したが、これはかなり楽観的な予想だと考えられる。筆者はより悪化するシナリオを考えており、23年の世界半導体市場は12%減になると予想している。
※2023年世界半導体成長率をパブリックに分析を公開して的中させたのは私のみでした。

現在の半導体を取り巻く環境は良くない。半導体の需要をけん引するのは、アプリケーション(応用製品)である電子機器の需要だが、これまでけん引役だったスマートフォンの需要が落ちている。
次に、新型コロナウイルス感染症は完全に終息していないが、ある程度落ち着いてきた。リモートワークをやめている企業が増え、コロナ特需のパソコンの需要も一服している。また、ウクライナ戦争に起因して原材料費が上がり、製品価格も上がっている。世界的なインフレ加速で消費者の電子機器の買い控えも起こっている。
さらに、一番大きな要因は米中対立で、中国以外のメーカーが巨大な中国市場にアクセスできていない。中国並みに半導体の成長を促す市場は他にないため、中国市場が閉ざされると半導体の消費は増えない。一方、中国はゼロコロナ政策によるロックダウンで、工場の製造量が落ちている。仮に需要があっても供給できないため、電子機器の生産が増えず、半導体の消費量も増えない。
23年は半導体の成長に楽観的な要素はほとんどない。

手堅いパワー半導体
しかし、もう少し視野を広げれば、新たな景色も見えてくる。23年は新たな景色への胎動も始まってくるだろう。半導体市場は短期的には落ち込んでも、長期的には間違いなく伸びていく。
まず、これから世界経済がリセッション(景気後退)に入ると、20世紀初頭の世界恐慌時の米国と同様にニューディール政策のようなグリーンインフラ投資が推進されるだろう。中国は関係国も含めて巨大経済圏構想「一帯一路」を推し進めるが、中国に対抗するように米国を中心とした自由主義圏の国はASEAN(東南アジア諸国連合)への投資を行っていく。
この場合のインフラは、道路などではなくデジタルインフラであり、スマートシティーの建設が進む。

【賢者の選択】
スペシャル講演②
日本政府が推し進める日本半導体再興プランとグローバルAI半導体戦争のリスクを検証する~AI半導体の更なる需要を喚起するスマートシティの未来は?~
アーキテクトグランドデザイン株式会社 ファウンダー兼チーフアーキテクト
一般社団法人サイバースマートシティ創造協議会 代表理事 豊崎 禎久氏
いまや半導体最先端技術は中国が米国を凌駕する勢いで、米国政府の制裁もなかなか効かない状況です。2023年のデータによると、中国では、稼働中の半導体FABが44、建設中か検討中が33と言われており、それ以外にも公になっていないFABも含めると100近くあるだろうと見られています。また、新規開発プロジェクトは350以上進められていることが確認されています。中国市場における日本を含めた世界的な半導体製造メーカーも軒並み売上を伸ばしており、企業の売上全体に占める中国市場の割合は4割を超えています。つまり、最終的にビジネスとして消費させる構造がこれらを支えているとも言えるでしょう。

現在、私が参画しているインドネシアでのスマートシティ開発でも、ビッグデータを活用した未来予知社会を前提としたデジタル・サイバースマートシティのグランドデザインを描き、各機能が確定し、それを半導体に落とし込んでいくというロジックで計画が進んでいます。将来的にスマートシティの頭脳は量子コンピュータになり、各端末と宇宙基地局が直接繋がることになります。そうなれば、将来的に地上の基地局は不要になり、そこに依拠している企業や政策は破綻する方向に向かうでしょう。新産業としてのスマートシティのデータサイエンスプラットフォーム市場は約42兆円規模となっており、スマートシティのビッグデータを制する者が世界のデジタルプラットフォームを制すると言っても過言ではありません。
一方、日本が現在、官民一体となって取り組んでいる半導体再興政策は、それを活かすビジネスセンスや新しい技術を統合するノウハウがなく、いまだプロダクトアウト型の戦略を取っています。「ものづくり」政策が利権構造の温床となり、そこで完結してしまってはグローバル競争に打ち勝つことはできません。海外の半導体企業では、マーケット・インやシステム・レベル・インテグレーションやプラットフォーム型によるトータル・システム・ソリューションの思考で企画開発を行う戦略を取っています。
日本においても、真の日の丸半導体再興のためには過去の失敗を分析し、グローバルな視点での冷静な現状分析と認識が不可欠です。そのうえで、世界的な半導体市場における先を見据えた戦略、将来的なグランドデザインを描く台本づくりやストーリーが必要です。また、インテリジェンスの能力やサプライチェーンの構造をどう作っていくのかも非常に重要な課題です。米中半導体戦争の渦中にあり、デジタル赤字が拡大し続ける中において、日本の半導体政策の舵取りは非常に難しいですが、党派を超えた国策として、日本のデジタル戦略を進めていかなければなりません。

リッツ・カールトン大阪会場
基調講演

【半導体はAIとデータセンタ&エッジで牽引】
~引用~
今月初め、サンフランシスコで開催された年次半導体展示会「SEMICON West (セミコン・ウエスト)」において、アナリストらは世界の半導体売上高が早ければ2030年に1兆ドル(約153兆7000億円)に達すると報告した。ニーダム・アンド・カンパニーのチャールズ・シーとガートナーのガウラブ・グプタが同意見を示しているが、グプタは2031年から2032年頃にこのマイルストーンに達すると予測している。
グプタはさらに、2024年と2025年の二桁成長を予測し、20年代終わりには半導体生産能力が50%以上増加するとしている。
AIや自動車から、スマートスペース(高度に自動化された空間)や商用ドローンの台頭まで、自律性、労働力、電力、地政学的要因が今後の展開をかたち作る中、半導体の需要は高止まりすると予想されている。
今後数年で稼働開始予定の70以上のファウンドリを運営するために必要な熟練労働者が100万人不足している。SEMIのクリスチャン・グレゴール・ディーゼルドルフは、この人手不足が差し迫った脅威になると見ている。
アクセンチュアのイライアス・エリアディスは、この問題に対してAIが重要な役割を果たすと考えている。彼は、人間の介入をほとんど必要としない生成AIを搭載した完全自律型スマートファブ(高度に自動化された工場)が開発中であると報告している。グプタは、今後5年間でロボットとの人間の連携が80%まで跳ね上がり、これがファウンドリの生産性を向上させるという。
世界中の国々が国家安全保障の強化と経済的繁栄のための基盤構築を急ぐ中、ディーゼルドルフは、中国、日本、インド、スペイン、ドイツ、英国、シンガポール、台湾、イタリア、韓国、マレーシアにおいて、すでに数十億ドル(約数千億円)が半導体製造の国内回帰に投じられていると述べている。米国は、CHIPS法(米半導体製造支援法)を通して520億ドル(約8兆円)を投入して半導体生産の国内回帰を図っているが、現在の市場シェア10%を大きく上回ることは難しいかもしれない。


【世界半導体市場統計(WSTS)予測】
~引用~
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics/世界半導体市場統計)は2024年6月4日、2024年春季半導体市場予測を発表した。2024年の世界半導体市場規模は2023年に比べ16.0%増の6112億3100万米ドルとなり、再拡大すると予測した。多くの製品がマイナス成長となる中で、メモリや一部のロジック製品などAI(人工知能)関連の需要が急拡大する。
今回の春季市場予測は、2024年3月までの実績値を基に作成された。WSTSには現在、48社の半導体メーカーが加盟している。加盟各社は、WSTS半導体市場統計を参照して作成された予測値を基に、予測会議を2024年5月21~23日の3日間、神戸で行った。会議では、マクロ経済や主要な電子機器の動向も加味しながら予測することになっている。
2023年の世界半導体市場は2022年に比べ8.2%減の5268億8500万米ドルとなった。「世界的なインフレやそれに伴う利上げ、地政学的リスクの高まりなどが個人消費や企業の設備投資に影響を及ぼした」とみている。AI関連や自動車向け以外の半導体需要が低調に推移した。
2024年の世界半導体市場は、前年比16.0%増を見込む。AI関連でメモリや一部ロジック製品の需要が急拡大しているためだ。一方で、それ以外の分野では急回復が期待できないと判断し、多くの製品でマイナス成長と予測した。
2025年については、前年比12.5%増の6873億8000万米ドルと予測した。AI関連の需要に加え、環境対応や自動化といった領域で、半導体需要の継続的な拡大を見込んでいる。

【米国SIA調査】
~引用~
米国の半導体生産は向こう数年で大幅に増加し、リスクの高い東アジアへの依存を弱めることが可能になりそうだ。米半導体工業会(SIA)がそうした予想を示した。
SIAの委託によりボストン・コンサルティング・グループが実施した調査によれば、米国における半導体製造能力は2032年までに3倍となる見通し。これにより、業界における米国のシェアは14%と、現在の10%から拡大するという。リポートは8日公表された。
米国内の半導体生産は減少傾向が続き、ここ数十年にわたってアジアにシェアを奪われてきたが、今回トレンド反転の見通しが示されたことになる。2022年に成立したした国内半導体業界支援法(CHIPS法)のような政府の資金援助プログラムがなければ、米国のシェアは8%にまで縮小していただろうと、調査は指摘した。
CHIPS法の制定に向けて積極的にロビー活動を展開したSIAとしては、同法が成果を上げていることを示したい考えだ。SIAはまた、政府が補助金をさらに増やすべきだと指摘する。
SIAのジョン・ニューファー会長はインタビューで、「CHIPS法は強力な第一歩だったが、さらなる支援が必要だ」とし、「われわれの業界は、製造が東アジアに過度に集中していると十分理解している」と語った。


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