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原作(漫画)「恋は雨上がりのように」(恋雨)を読んでみた感想。【ネタバレ】

先日映画「恋は雨上がりのように」を観たので、今回は原作(漫画)を読んでみました。

原作(漫画)は2017年11月時点で累計発行部数が約175万部を突破した人気作です。
今後200万部、300万部と部数を伸ばしていく漫画でしょう。
原作で注目したのは九条ちひろです。


原作では九条ちひろの出番がやたら多い。


4巻から九条ちひろが登場します。
劇中ではトリックスターの役割です。
ちひろの登場で物語が大きく展開していきます。
見出し おちゃめな九条ちひろ
印象に残ったちひろがらみのシーンをあげておきます。
まずは10年ぶりに居酒屋「どんでん」で近藤と出会う場面です。
「まだ、書いてるんだろ?」と近藤をけしかけます。
このシーンは映画でも採用されています。
次にファミレス・ガーデンに突然「店長さんいる?」と現れるシーン。
白のインナーに黒のニットセーター、ホワイトジーンズといういでたちでファミレス・ガーデンに現れます。
ファッションがいいですね。
このシーンは映画でも採用して欲しかったです。
その後、茶々を入れに近藤宅を訪れます。

もう一人の17歳、町田 翠(あきら)


「僕は17歳だった。それが人の一生でいちばん美しい年齢だなどと、誰にも言わせまい。」

(漫画本編より引用)

ポール・ニザン『アデン・アラビア』篠田浩一郎・訳を引用している点が微笑ましいですよね。
町田 翠は17歳の高校生作家です。
高校生で文壇デビューした作家は、「Mの世界」の三田誠広さん以外に知りません。
作家としてはかなり早熟です。
村上春樹さんでさえ作家デビューしたのは、30歳ですからね。
九条ちひろは、町田 翠との出会いにより小説家として新たな刺激を得ます。

原作は高校2年生「橘 あきら」の日常生活を描いた物語


「恋雨」は高校2年生橘 あきらの日常生活を描いた物語という側面もあります。
日常生活の出来事や人間関係を丹念に描いていく手法をミニマリズムと言います。
アメリカだとレイモンド・カーヴァー、日本だと村上春樹さんですね。
ただそれだけだと、日記になるので高校2年生と中年男性45歳の恋という非日常な出来事を入れて来ます。
レイモンド・カーヴァーや村上春樹さんの小説を読むと離婚や不倫というのがよく出て来ます。
題名は忘れましたが、村上春樹さんの小説で、妻がその場の気まぐれで他の男と情事に及んだ事を生々しく告白する場面があります。
これは、レイモンド・カーヴァーの『頼むから静かにしてくれ』(原題:Will You Please Be Quiet, Please?)まんまです。
ちょっと話がずれましたが、読者は浮気という非日常から今度はあの貞淑な妻はどんな生活をしていたんだろうと日常に目を向けるわけです。
あきらの両親も離婚していますし、近藤もバツイチ子持ちで人間関係は希薄です。
そこから新たな人間関係を築いていこうとします。
が中々うまくいきません。
結局、二人は非日常からそれぞれの日常に戻っていきます。
最後は年齢の離れすぎた恋愛は成立しないという結論で終わっています。
レイモンド・カーヴァーも後期になると、人間関係や愛情を肯定的に描くようになっています。
漫画でも恋愛関係に発展しなくても、二人の人間関係が続いていくようなラストならよかったなと思います。
映画のラストシーンはそんな感じで終わってますからね。
やはり人間関係や愛情に対する暖かい眼差しは必要です。
当然、「うさぎドロップ」のように真逆の方向に着地する手法もあります。

まとめ

「恋雨」は、主人公に感情移入して読む手もありますが、バイプレーヤーに注目して読んでも面白いです。
それだけ、脇役が丹念に描かれています。
原作的には、店長が一人の女性としてあきらを受け止めるシナリオがあっても良かったんじゃないかと思います。
一般的には満18歳以上であれば、男女の交際に関しては大人です。
年の差があっても、その年齢に達していれば他人がとやかく言う必要はありませんからね。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。

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