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ムーンライトのシャロンとおれ

ムーンライトという映画が好きだ。
もうかれこれ、5回以上は通しで見ているだろう(シーンだけだったらいったい何度見たんだろう?)。

どうして、ムーンライトが好きなのか。
2017年、高校2年生の時に最初に見た時映像が綺麗だなぁって思って、ストーリーにもすごく引き込まれた。
ただ明確に「こうだから好き」とは言えなかった。
でも、今何度も見てみて分かる。自分を主人公のシャロンに照らし合わせていたから、こんなにも引き込まれていたんだと。

※以下、ネタバレと性的な描写が含まれますのでご注意ください。また、人種差別的表現も一部含まれますがアフリカ系アメリカ人のカルチャーに則って記し、原作を尊重し記載しているだけで、全く人種差別を助長する意図はありません、私はレイシストが大嫌いです。

リトル

第1幕リトルは、シャロンが子供の頃の物語です。
いじめっ子たちに追いかけられ、彼は廃墟の中に逃げ込みます。
少し時間が経ち、いじめっ子たちが去るとそこには、いかつい恰好をしたフアンがいました。
「ここで何してる?」
シャロンは何もしゃべりません。
「ここはやばい地区だ。これから何か食いに行くが、一緒に来るか?」
「...」
「安心しろ、ここよりはるかにマシだ。」

シャロンはフアンの家に行き、フアンの嫁テレサに会います。
彼らは食事をした後、シャロンに家を教えるように言いますが、彼は家に帰りたくないと言います。
テレサは「じゃあ泊っていく?」と言いますが、フアンは「テリィサ」と止めます。
シャロンは黙って頷き、泊っていくことにしました。

翌朝フアンがシャロンを家まで送っていくと、シャロンの母親は「シャロン!心配したんだよ…で、誰あんた?」とフアンに言い放ちます。
「昨日やばい地区にいたんだ、子供たちに追いかけられて怖がってたよ」
「そうかい、いつもは上手くやり過ごすんだよ」
「じゃあな、リトルメン」
母親は彼からリトルを引き離すようにします。

家に戻ったシャロンは母親から心配していたんだよ、と優しい言葉をかけられますがテレビを見ようとすると
「Ahh, TV priviledge is revoked. there's something for you to read(あー、テレビはダメ。本でも読んで。」
と制止されてしまいました。

シャロンの母はよく男を家に招き、ヤクに浸っていました。
そういう時彼女は決まってシャロンに目もくれませんでした。

シャロンはまたフアンの元を訪ねます。
この時フアンが履いていた真っ白なエアフォースIはとても印象的でかっこいい!
フアンはシャロンを海へと連れて行きます。
彼らは海で泳ぎ、開放的な時間を楽しみました。

ある時、フアンは自分のシマを視察に行きました。
そこには、車の中でヤクをやっている男女が。
「ここでは吸わせるなって言ったろ」とトラッパーに一言漏らし、彼は車へと向かいます。
そこには、男とヤクに浸っているシャロンの母がいました。

「何考えてる!」とフアンは言いますが、
「アタシにヤクを売ってるのはあんただろ?」と反撃されます。
「Mxxxxxxer, I'll get it from you!(クソったれ、あたしはあんたから買うからね!)」

シャロンがフアンの家を訪ねます。
フアンはシャロンにドアに背を向けて座るな、襲われる危険があるだろ、と教えます。

「実は昨日お母さんに会ったんだ」
「ママなんて嫌い」
「俺もそうだったさ。でも今は恋しいよ」
・・・
「ママはヤクをやってるよね」
「…あぁ」
・・・
「あなたはヤクを売ってるの?」
「…あぁ」
・・・
シャロンは徐に立ち上がり、部屋を後にしました。

シャロン

シャロンは学生に成長します。彼にはケヴィンという友達がいました。
ケヴィンは女性と学校でヤッた話をし、シャロンに誰にも言うなよと釘を刺します。
「お前は信用できるからな」とケヴィンは言いました。

シャロンはいじめっ子たちに呼び出されたり、帰り道に絡まれたり、辛い思いをします。
「こいつは、テレサと親しいんだよ」
「あぁ、フアンの未亡人か、いい女だよな」
シャロンは嫌な気持ちになります。
「こいつの母親はフ◯ラがめちゃくちゃうめえんだぜ」
「なんだと!」シャロンは憤りますが、「てめえ、何のつもりだ、オカマが調子に乗んじゃねえぞ、おかまは嫌いだが俺にたてついたら犯す」
と、クソ野郎に圧倒されてしまいます。

母親は依然としてヤク中で、ヤク欲しさにシャロンから彼がテレサにもらったお金を巻き上げてしまいます。
「私があんたの母親だよ、あのクソ女、ニセのママにそう言いな!」

シャロンは辛い思いを抱えて、海へ行きます。
やがてそこにはケヴィンの姿が。
「よぉ、ブラック何してんだ?」
「お前こそ何しに来てるんだよ?」
「ハッパ吸うのにはいい場所なんだよ、ここは」
・・・
「Why do you call me that?(なんで、そう呼ぶんだ?)」
「ブラックか?」
「あぁ」
「お前の愛称だよ」
「男を愛称で呼ぶやつがいるかよ」
・・・
二人はハッパを吸います。
そして、やがて二人はキスをし、ケヴィンがシャロンに手淫を行います。
・・・
車でケヴィンがシャロンを家まで送ります。
「今までにああいうことは?」
シャロンは首を横に振ります。
「じゃあな、ブラック」

ケヴィンは食堂で飯を食っていると、シャロンをいじめているクソ野郎が話しかけてきます。
「よお、ケヴィン!」
「おお」
「お前昔ぶっ倒れるまで殴るゲームで強かったよな?今は誰もやらねえ。今日俺が相手を選ぶからお前が殴ってくれねえか?」
ケヴィンは乗り気ではありませんでしたが仕方なく、「殴ってやるから、お前が責任とれよ」と言います。
「おお、分かった!」

放課後、ケヴィンが呼ばれた場所に行くとそこにはシャロンの姿が。
「やれ、ケヴィン、オカマだ」
ケヴィンは、嫌な気持ちを抑えながらシャロンを殴ります。
「Sharon, Stay down!(シャロン、倒れたままでいろ!)」
しかしシャロンは立ち上がり、一歩も下がろうとしません。
ケヴィンは痛む心を押し殺しシャロンを殴ります。
その後シャロンはいじめっ子たちに取り囲まれてボコボコにされてしまいます。

シャロンは、心を決めて学校に行きます。
やがてクラスルームにつくと、木のイスを持ち上げて、あのクソ野郎めがけて振り落とします。折れた木もたたきつけますが、周りに止められてしまいます。
「Fxxk off me, nxxxa! fxxk off me!(離せよ!離せ!)」

ケヴィンは警察に連行されるシャロンを見つけます。
シャロンもケヴィンを見つけ、そして見つめていました。

ブラック

時は流れ、シャロンはムショを出た後家を離れてトラッパー(売人)になっていました。
子供のころのシャロンとはうって違い、筋肉は隆々、えげつない金歯をつけています。

シャロンには再三、母親から家に戻るようにと電話がきていました。
母親の留守電を聞き、眠りにつきます。
真夜中にまた電話がかかってきたので、「ママ、夜中だ明日かけなおすから」と電話口に話します。
「Hello? hey,Black. Nah, Sharon(もしもし、よぉブラック。いや、シャロン)」
それはケヴィンの声でした。
「シャロン久しぶりだな。・・・まて、俺のこと覚えてるか?」
「Yeah, I do.(あぁ、覚えてる)」
「シャロン、あの時のことを謝りたい。俺は臆病者だった。」
「...
「今俺はコックをやっててな。・・・ある日店に来た客がお前に似てた。こっちに来ることがあれば顔を出してくれよ。お前に飯を作る。」

シャロンは更生施設の母を訪ねます。
「久しぶりだね。」
「母さん、いつ家に戻る?」
「ここが家だよ、人を助けて自分も救われる」
・・・
「テレサとは会ってるの?」
「あぁ」
「元気?」
「あぁ」
「…それだけ?」
・・・
「まだ、売人をやってるの?」
「…」
「逮捕されるためにまたシャバに出たのかい?」
シャロンは立ち上がり、その場を後にしようとします。
「待って、話を聞いて!」
「誰の話をだ?俺に説教する気か?」
「お願い、聞いて。」
・・・
「I was messed up. … Fxxkin' all the way up.(アタシはめちゃくちゃだった。本当にどうしようもない母親だった。)」
・・・
「アタシを愛さなくていいよ。愛が必要な時にあなたに与えなかったから。でも、これだけは分かっていて、アタシはあんたを愛してる。」
・・・
「Do you hear me, Sharon?(聞いてるのシャロン?)」
シャロンは涙を禁じ得ませんでした。
彼は母親がなかなか点けられないタバコを点けてあげ、彼女の涙をぬぐってあげます。
「I'm Sorry, Babe. I'm sorry(ごめんよベイビー。ごめんね。)」
「もういいよ母さん、大丈夫だ」

シャロンはレストランを訪れ、席に座ります。
「少々お待ちくださいね」
ウェイターは仕事を片付け、シャロンの元へ向かいます。
「こんばんは、今夜はお楽しみで?」
・・・
「シャロン?...おい、久しぶりだな!お前なぜここに?…いや、違う。来てくれて本当にうれしいよ。」
「俺に飯を食わせるんだろ?」
「そう思っていたが…飢えてなさそうだ。」
笑い。
「何にする?あぁ、Chef's Specialが気に入るぜ。」
One Chef's Special, Coming right up-

ケヴィンは、ワインを開け、旧友との会話を楽しみに席までやって来ました。
「シャロン、サマンサを覚えてるか?」
「あぁ」
「見ろ、ケヴィンベイビーだ、若くして親になったよ、若すぎた。」
「今も付き合ってるのか?」
「いや、別れたよ。でも、仲は良い。子供のためってことで」
・・・
「お前のこと聞かせてくれよ、何やってる?」
シャロンはだんまり決め込みます。
「Hey, Grandma's Rule.(おばあちゃんのルール。)  食べたら話してだ。」
「正直に?」
「あぁ、正直にだ」
「…トラッパーだよ」
「なんだって?」
ケヴィンは怪訝な表情を浮かべます。
「少年院の仲間に仕事を世話され、のし上がったんだ」
「シャロンに限ってそんなはずないだろ」
「Nxxxa, you don't know me?(俺の何を知ってんだ?)」
「…I don't know you?(知らないと思うか?)」
・・・
「なぜ俺に電話を掛けた?」
「言ったろ、お前に似てたやつが…」
「あぁ、」
「そいつがこの曲をかけたんだ」

・・・
シャロンはえぐいアメ車にケヴィンを載せて家まで送ります。
家に入ると、ケヴィンがこう切り出します。
「Who is you, Sharon?(お前は何者だ、シャロン?)」
「俺は、、俺だよ。」
「…そうか、強くなったか?」
「…」
「違うよ、責めてるんじゃない。何というか予想外だったんだ。」
「…俺はアトランタで自分をゼロから鍛えなおしたんだよ」
・・・
やがて、シャロンが切り出します。
「You're the only man who ever touched me.
 …You're  the only one.(俺に触れたのは一人。...お前だけだ。)」

・・・
子供のシャロンが海から、私たちを見つめています。
まるで、あなたは誰なのか。とでも言うように。

最後に

私がこの映画に惹かれたのは、冒頭でもお話しした映像の綺麗さと、大好きなアフリカ系アメリカ人のカルチャーの一部に触れられたように感じたためです。
ただ、それだけでなく子供の頃から性的志向や母親のヤク中について苦しい思いと生きづらさを感じてきたシャロンが、大人になって生まれ変わったように見えたからでしょう。
大人のシャロンはもう人にいじめられるような人間ではありませんでした。身体を鍛え、人に馬鹿にされるよりも恐れられる存在になりました。
そんな姿に私は心を惹かれたんだと思います。

私はずっと考え方がネガティヴでした。そして行動もできず、親の意見に逆らわず、先行きも見えない日々を水中で犬かきをする犬のように必死でもがきながら自分なりに苦しんできたと思っています。
でも、頑張ればシャロンのように変われるかもしれない、あんなかっこいい姿になれるかもしれないと未来を悲観せずに済んだんだと思います。
つまり私はシャロンに自分を投影することで、一種の安心を得ていたんです。

そして、自分がアイデンティティを失っていることに気づけたのも、この作品があったからです。
今も、自分とは何なのかまだ確立できていないし、人の顔色を常に伺わないと生きられない人間であることに絶望もします。

シャロンのアイデンティティもずっと失われたままだったのではないでしょうか。
例えば、ケヴィンという存在に自分を認めてもらえたけれど、その後残酷にも傷つけられたこと。
シャロンには自分を確立できない理由はあり過ぎました。
ただ最後に、ケヴィンに思いを打ち明け再び認められたことにより、彼のアイデンティティは回復していくのではないかと思います。
映画はそこで終わってしまうので分かりませんが、私はこの後シャロンが自分を確立し、トラッパーから足を洗う世界線もあるのではないかと思います。

アイデンティティは誰かに認めてもらえる経験なしには、確立できないと思います。
でも、
「私は誰かに認めてもらえるような存在だろうか?」
そう考えてはダメなんじゃないでしょうか。
そう考えてしまったら、ありのままの自分を変えてでも人に認めてもらおうとしてしまう。
ありのままの自分を認めてくれる人は必ずいます。
だから、その人に出会いましょう。
それはもしかしたら、まだまだ先の話かもしれません。
でも、自分を変えてどうにかして誰かに認めてもらったところでそれは本当の自分ではありません。
ありのままの自分を認めてもらってこそ初めて、自分が何者であるかを分かっていくんです。

そんなことを考えさせられるような物凄い映画がムーンライトだと思います。

Amazon primeでも見れるので気になった方は是非ご視聴ください✨

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