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生徒指導の一案②〜「自尊感情」と「自己肯定感」の育成〜
榎本 博明先生の『自己肯定感という呪縛 (青春新書』というほんがあります。自己肯定感という言葉が使われだした保はここ数年の話で、この世界比較を見るだけでは、日本文化とはなじまなきところがあると言われていました。
この書籍では、自己肯定感を高めることが必ずしも良い結果をもたらすわけではないと指摘されています。特に、「実力が伴わない人ほど自己肯定感が高い」という心理学的調査結果を踏まえ、安易に自己肯定感を高めようとする風潮の危険性を論じています。また、欧米人や中国人・韓国人と比較して日本人の自己肯定感が低いとされる背景についても分析し、上辺だけの自己肯定感に振り回されず、真の自信を身につけるための心の持ち方を提案しています。
また、総じて、榎本氏は「自尊感情」と「自己肯定感」を明確に区別し、前者は個人の内面的な自己評価であり、後者は外的な要因によって影響を受けやすいとしています。そして、真の自尊感情を育むためには、安易な自己肯定感の追求ではなく、自己の価値を客観的に見つめ、現実的な自己評価を持つことが重要であると提言しています。
さて、生徒を指導する際に、このよく見かける「自己肯定感」と「自尊感情」徒をどう扱うべきなのでしょうか?Aくんといろいろ論議しました。
ちょっとの認識がまたがっていたようです(いまのところ)。
ではさっそく…
修正版(改訂版):中学校における「自己肯定感」と「自尊感情」の違いとその育成方法
1. 自己肯定感と自尊感情の違い
心理学的定義
自己肯定感(Self-Acceptance)
自己肯定感は、「自分を無条件に受け入れる感覚」です。成功や失敗にかかわらず、「このままの自分で価値がある」と感じる力です。自尊感情(Self-Esteem)
自尊感情は、「自分の価値や能力に対する評価」を指します。他者との比較や達成経験が大きく影響する、相対的な感覚です。
違いのポイント
自己肯定感
特徴:
無条件の自己受容
影響:
内面的で絶対的な感覚
主な形成要因:
自分を否定しない心理的安全
自尊感情
特徴:
他者との比較による相対的な評価
影響:
他者との比較による相対的な評価
主な形成要因:
達成体験や他者からの評価
自己肯定感に関する調査: 文部科学省(2021年)による調査では、日本の中学生の約40%が「自分を価値ある存在だと思えない」と回答しています。
自尊感情に関する研究: Harter(1988)は、自尊感情が他者からの承認や成功体験を通じて形成されることを明らかにしています。
2. 中学生で育成する必要性と意義
思春期の心理的特性
中学生は、自己評価が大きく揺れ動く時期です。特に以下の発達課題が影響します:
自己認識の深化: 他者との比較が活発化し、自己評価が揺らぎやすい。
社会的承認の欲求: 周囲からの評価が自己感情に大きな影響を与える。
アイデンティティの確立: 自分の価値や存在意義を見つけようとする。
自己肯定感の育成意義
自己肯定感が育つことで、ストレス耐性や失敗から立ち直る力が強化されます。
無条件の受容感があれば、生徒は「挑戦」する意欲を持ち続けやすくなります。
自尊感情の育成意義
自尊感情が高まると、生徒は「成功への自信」を持つようになります。
他者との比較をポジティブに捉える姿勢が形成され、競争の中でも自分の価値を認識できます。
3. 具体的な育成方法
自己肯定感を育てる方法
心理的安全の確保
教室で失敗や間違いを責めない文化を作る。
例: 生徒が発言しやすい雰囲気を作り、「間違っても良い」と明言する。
感情を受け入れる指導
生徒が自分の感情を表現し、それを否定しない環境を整える。
例: 感情日記や心のストームボードを活用し、生徒が自己理解を深められる場を提供。
努力やプロセスの評価
成績だけでなく、努力や工夫を評価するシステムを導入する。
例: 学期末の授業で、生徒自身が努力の過程を振り返るプレゼンテーションを行う。
自尊感情を育てる方法
小さな成功体験を積ませる
生徒が達成感を得られる目標を設定し、それを繰り返し体験させる。
例: 学習アプリを使った達成目標の可視化(進捗バーなど)。
役割の割り振りによる成功の共有
チーム活動で、生徒が貢献しやすい役割を担う。
例: 文化祭や体育祭で、各自の得意分野を活かした役割分担を行う。
現実的な挑戦を促す
無理のない挑戦を設定し、失敗しても学びにつながる場を提供する。
例: 部活動での練習計画を生徒自身が作成し、目標達成を図る。
4. 多文化的視点からの考察
日本社会の特徴と課題
日本では、集団主義が根付いており、他者との比較や社会的役割が自己評価に大きく影響します。そのため、自己肯定感を育てる環境が弱くなりがちです。
他国との比較
欧米では、個人主義に基づき、自己肯定感が早期から育成されます。一方、成功や成果を重視する文化は日本の自尊感情と類似しています。
提案
日本独自の「集団活動」を通じて、自己肯定感と自尊感情を同時に育むプログラムを推進する。
5. 現場の実践事例
自己肯定感の育成事例
感謝活動: クラス内で「感謝の手紙」を交換する活動を実施。
結果: 生徒同士が互いの良さに気づき、安心感が高まった。
自尊感情の育成事例
個別達成目標の導入: 体育の授業で「自分のタイムを縮める」個別目標を設定。
結果: 成果が他者との比較ではなく、自分の努力に基づいて評価されることで、挑戦意欲が向上した。
6. 提案
多様な評価システムの導入
努力、創意工夫、過程を評価する枠組みを学校全体で採用する。
心理的安全の向上
生徒が失敗を恐れず挑戦できる文化を作る。教師が「失敗しても良い理由」を示す。
多文化的アプローチの応用
欧米の「個人目標」と日本の「集団目標」を融合させた指導法を構築する。
結論
「自己肯定感」と「自尊感情」をバランスよく育てることは、中学生の心理的安定、人間関係、社会適応力を高める上で不可欠です。ここでは、具体例や研究データ、異文化の視点を取り入れることで、より実践的かつ説得力のある内容に仕上げました。このアプローチが、日本の中学校教育における新たな指導法の一助となることを願っています。
どうもしっくりこない部分があるが、双方育成する必要はありそうだ。
ただ、安易に海外との比較を持ち出すことは控えたほうがいいと考える。
日本若も抜く幸福度が低いと言われるが、果たしてその数字はそのまま受けとっていいものでしょうか?文化的背景、社会的背景まで踏み込む必要が感じられます。
また議論しましょう。榎本先生の本をもう一度読み返したいと思います。