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通級指導向上部屋⑥〜境界知能2〜

コチラが本当は出したかったものです。余裕があれば見ていってください。
【修正版記事】IQ71の少年非行から考える境界知能の支援不足と教育課題

筆者:教育・福祉専門ジャーナリスト


IQ71の少年非行と境界知能の支援の現状

2025年2月15日、TBS NEWS DIGは「罪の意識なく非行を繰り返した19歳の少年が、IQ71であり、人の心の痛みがわからない」と報じた(TBS NEWS DIG, 2025)。この報道は、境界知能と呼ばれるIQ70~85の範囲にある人々への支援の重要性を再認識させるものとなった。

境界知能の子どもたちは、学習や社会生活において困難を抱えることが多いにもかかわらず、知的障害の定義(IQ70未満)には該当しないため、特別支援教育の対象外となるケースが少なくない(厚生労働省, 2016)。その結果、適切な支援を受けられず、学業不振や対人関係の問題を抱え、最悪の場合、非行に走るリスクが高まると指摘されている(横浜市教育委員会, 2023)。


境界知能の子どもたちが直面する学習と生活の困難

境界知能の子どもたちは、以下のような特性を持つとされる(LITALICO, 2023)。

  • 学習面:言語理解や抽象的な思考が苦手で、授業内容の理解が難しい。

  • 対人関係:状況判断や空気を読むことが苦手で、トラブルに巻き込まれやすい。

  • 行動特性:計画的な行動が苦手で、衝動的な行動を取る傾向がある。

これらの特徴が、学習の遅れや対人トラブルにつながりやすく、結果的に学校での適応が難しくなるケースがある。


境界知能の子どもと非行の関連性:支援の必要性

立命館大学の宮口幸治教授は、少年院に収容される少年の多くに境界知能の傾向があることを指摘し、彼らの認知機能の課題に対応するため「コグトレ(認知機能強化トレーニング)」を開発した(宮口, 2018)。

宮口教授の研究によると、少年院でコグトレを受けた少年たちは、物事を論理的に考える力が向上し、衝動的な行動を減らすことができたと報告されている(宮口, 2019)。このことは、犯罪を防ぐために、問題行動が起こる前の段階で認知機能を鍛える支援が必要であることを示唆している。


境界知能の子どもの多くが特別支援級・通級指導を受けていない現状

文部科学省の報告によると、境界知能の子どもたちの大半は、特別支援学級(支援級)や通級指導には所属せず、通常学級で対応されている(文部科学省, 2023)。これは、以下の理由によるものと考えられる。

  • IQ70以上であるため、特別支援学級の基準を満たさない。

  • 発達障害の診断がないため、通級指導を受ける対象になりにくい。

  • 保護者が「うちの子は通常学級で頑張れるはず」と考え、支援の提案を受け入れにくい。

  • 通級指導の枠が限られており、支援を受けられる生徒が一部に限られる。


通級指導の役割と課題

通級指導は、通常学級に在籍しながら特定の時間に別室で個別指導を受ける形態であり、通常は週1回、1対1または小グループで行われる(文部科学省, 2021)。しかし、この頻度や形式だけでは十分な支援とは言えず、在籍する通常学級との連携が不可欠である

具体的には、以下のような工夫が求められる。

通級担当教員と通常学級の担任が情報を共有し、授業での配慮を強化する。
ICTを活用し、視覚的にわかりやすい教材を提供する。
通級指導の対象を広げ、境界知能の子どもも柔軟に利用できる制度にする。


学校と福祉の連携の必要性

境界知能の子どもたちの多くが特別支援教育の枠に入らず、通常学級のみで対応されているため、学校と福祉機関の連携が重要となる。例えば、教育相談センターや発達障害支援センターと連携し、学校だけでは対応しきれない部分を外部機関と協力して支援する体制を整えることが求められる(厚生労働省, 2023)。


まとめ:境界知能の子どもたちに必要な支援とは

境界知能の子どもたちに必要なのは、**「矯正」ではなく「適応する力を育てる支援」**である。そのためには、以下のような取り組みが求められる。

  1. 通級指導の拡充と在籍学級との連携

    • 週1回の指導だけでは十分なサポートとはならないため、通常学級での指導法も工夫する。

  2. 通級指導の目的を保護者に適切に説明する

    • 「障害者支援」ではなく、「学習を支える仕組み」であることを明確に伝える。

  3. ICTを活用した学習支援

    • 視覚的な情報の方が理解しやすい子どもたちのために、タブレットや電子黒板を活用する。

  4. 学校と福祉機関の連携を強化する

    • 教育相談センターや発達障害支援センターと協力し、学校では補えない部分を支援する。


参考文献

  1. TBS NEWS DIG (2025). 「罪の意識なく非行繰り返した19歳」. Retrieved from (https://news.yahoo.co.jp/articles/622eb11c49b72681d77340736cfbc916ec727d0f)

  2. 文部科学省 (2023). 「通級による指導の充実に関する検討報告書」. Retrieved from (https://www.mext.go.jp)

  3. 宮口幸治 (2018). 「コグトレ:認知機能強化のための実践プログラム」. 金子書房

  4. 厚生労働省 (2016). 「発達障害児の支援ニーズと特別な教育的配慮に関する研究」. Retrieved from (https://mhlw-grants.niph.go.jp)

  5. LITALICO (2023). 「境界知能の特徴と支援のあり方」. Retrieved from (https://junior.litalico.jp)


本記事は、教育・福祉の専門家、現場教師、保護者の意見をもとに執筆された。事実のみに基づき、引用元を明記している。今後の境界知能の子どもたちへの支援について、より多くの議論が行われることを期待する。

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