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見えざるもの⑥
コラム「冒頭から暴投」で2024年7月から連載中の物語です。 最新話のみを読まれた方が「意味わかんねー」とならないように、バックナンバーを読めるようにしようかと・・・。 ちなみに・・・ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。 それではどうぞ^^
フリーペーパーでの連載は今回で強制終了しました。
今後は、noteでのみの連載となります。
字数制限の呪縛から解放され、自由に書ける幸せよ^ ^
「三浦さん…それって陰謀論なんじゃないの?ニュースで見たことがあるわ、科学的根拠が無いデマの類だって」
「そうだと良いのですが、実は少し前に、兄から『予防憑依は受けるな』と連絡があったんです」
彼女は声をひそめて話し始めた。
「三浦の兄は、地元で開業医をしているのですが、ここ半年くらい、妙な症状を訴える患者さんが増えているらしいのです」
「妙?…ってどんな?」
「はい、簡単にいうと『原因不明』の症状らしいのです。頭痛や吐き気、不安感やイライラ感、動悸や圧迫感、耳鳴り…とにかく症状は患者さんによって様々で、いずれも原因らしきものが見当たらないという」
「……」
「兄の話によると…医師仲間で、情報を共有しあって統計をとっているところらしいのですが、原因不明の症状を訴える患者の急増は間違い無いと…それと…」
「それと?」
「どうも自◯者の数が増えているらしくて…」
彼女は更に声をひそめた。
「…いや、ちょっと、何それ怖いんだけど」
「統計を取り始めて数ヶ月だし、有志が集まって統計をとっているだけで医学会全体でのものでもなければ、政府の公式発表もされていないので、まだなんとも言えないらしいのだけど」
「それって、本当なの?」
「今のところあくまで仮説…という事なのですが、兄が三浦に嘘をつく理由も考えられません」
「それは、そうね。仮に…仮によ?もしもそれが事実だとして、予防憑依とどんな関係があるの?」
「アニ玉(アニミズム水晶)を使った予防憑依が始まった直後から、原因不明の症状を訴える患者が増えた事が一番の理由のようです」
彼女の兄の話によると…そもそもアニ玉は、それに宿った無害化された人工霊を事前に被施術者に憑依させ、厄災の原因となる霊の憑依を防ぐための道具とされていた。
アニ玉に宿る人工霊は、被施術者に憑依するとアニ玉自体は、単なる水晶玉になるのだが、憑依がしっかり定着するまでは、自宅のどこかに置いておく事が推奨されていた。
多くの人々は、お守り代わりや、インテリア気分で、寝室や神棚に置いていたようだったが、そもそも霊の存在を信じていない彼女の兄はそのアニ玉自体に原因があるのでは?と疑っているとの事だった。
「海老塚さん、『Bristol Hum』ってご存知ですか?」
「ブリストル ハム?何それ?」
「人の耳にはほとんど聞こえない低周波音の一種らしいのですが、どうやら、それが体調不良の原因ではないかと…風力発電の風車の近隣に住んでいる方が体調不良を訴える…というのは聞いたことありますか?」
「ええ、それはなんとなく聞いた事があるわ」
「最近体調不良を訴えている方々の症状って、『低周波騒音』による健康被害の症状に酷似しているらしいのです。つまりアニ玉が何らかの低周波音を発していると疑っているようなのです。