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縁とは
最後の内定を蹴ってほぼ一か月、何もしたくなかった。
段々と気づいてはいたが自分の持つ縁がクソであることに程々飽き飽きしていたのだ。
知りあったり、付き合いのある人間は少なければ少ないほど良いとは前から思っている。普段の自分とその人と話す時の自分の差にストレスを覚えるのでそれができるだけ少ない人生を送りたいと願っている。
そしてこんな状況の時にいけ好かなくなった小学校の頃の親友だった奴から連絡が来たりするものだ。決まりの悪いのも大いにあるが自分にとって切れてもいい縁が動き出したりする。
そんなことを思っているうちに町を歩いていると縁切り神社にたどり着いた。どうも有名なところらしく本人が切りたくない縁でさえも『向こう』が判断したら切ってしまうというところだった。
クソな転職エージェントに、老人カウンセラーに老害社長とひどい目に合わされてきたこのクソッ就活のクソ縁を断ち切るために私はそこにある種の使命感とともに入っていった。
中に入ると長い行列ができていた。しかもほとんどが女性だった。
神社の説明をよく読むと縁を切ってもくれるし、結んでもくれるのだそう
でも絵馬みたいなやつを読んでみるとほとんど切ってほしい方向の内容ばっかりだったので同志がたくさんいてなんというか安心した。
のど元過ぎれば熱さを忘れるというが実際行ってみて気分が良かった。その時はもう自分に関わってくるめんどくさい人間とはおさらばしたのだぐらいの気持ちでいた。
しかし自分の置かれている状況が好転したわけでは決してない。もともと患っていた不眠が悪化していたと思う。全然寝られなかった。ストレスの原因は常に現状なのである。「もっとこうあるべきだ」「こうあってほしい」という向上心にも似て非なる現実への受け入れられなさが招いたことだと思う。
また眠れないことによって体中に湿疹ができた。これも大変ストレスフルなイベントである。
就活→不安→ストレス→不眠→湿疹→ストレス これが私の中で起きてから寝るまでのサイクルだ。夜が来るのが怖かった。どうせ寝たくても寝られないのだから。
今度はそういった病気との「ご縁」を切りに行った。同じ神社に。そういった甲斐もあってか湿疹に関しては切れた。しかし不眠は残っている。もう縁どころか病気かもしれない。本当に毎日が不安である。