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どれほど願ったら、誰も苦しまない世界はくるのだろう
コロナ
色々調整をして、仲間で水族館に行くのは14日に決まった。
予約をしないと入れないアトラクションもあって、親友はとても楽しみにしていた。
親友はある病気で、長い治療中。
その治療が、辛く、時間の制限があり、親友の不安定の原因だと分かっていたので、このような息抜きは彼女のためにもいいと喜んでいた。
今日は私は体調がよく、北本の原稿の最後の追い込みに入っていた。
昼過ぎ、親友のために下田さんに頼んでいたブレスレットが届いた。
14日に渡すことは決めていたので、「着いたよ」と連絡。
「コロナになってしまった…」
親友からの返事は、思ってもみないものだった。
痛みを変わってあげられたら
親友は、元気そうに見えて、持病かと疑うほど毎年肺炎になる。
今回も、肺炎だろうと思って受診したら、コロナだったと。
肺炎もそうだが、彼女が現在治療中の病気に、コロナは最悪だ。
また、彼女はちょっと特殊な結婚生活を送っていて、普段は実家で過ごし、ご主人も職場にしている自分の実家で暮らしている。
2人の新居は、もとはご主人の祖父母が建てた二世帯をさらにリフォームしたもので、祖父母が亡くなった今、その家はほとんど空き家だ。
しかし、実家のお母さんやご主人に移す訳にもいかず、彼女は今、一人きりであの広い家にいる。
「さみしい」
そんなLINEを、悲しい気持ちで見つめる。
彼女はとても寂しがり屋だ。
遠距離恋愛をしたことがあったが、破局したのは寂しかったからだろう。
ご主人が、自分の時間を優先する人で、付き合いだした当時は親友が望むときに会えなくて、寂しくなって、いきなり、私と北を誘って夜遅くまで遊んだものだ。
彼女が負担にならないように、明るい話題で気を紛らわせる。
「苦しくなる前にお風呂に入ってくるね」
夕方になり、彼女がそう言うまでLINEを続けた。
私の予定は全て駄目になったが、そんなことはどうだってよかった。
仲間への対応
14日まで日はある。
仲間のひとりが
「14日には外出できるだろう?」
とグループLINE。
彼は悪くない。
治療中の病気のことは、北にさえ詳しく話していない。
県外の彼には、伝えていない。
「あの子病院勤めだからさー、その辺めんどくさいかもね」
「お土産買っていって、玄関前放置か」
「何買う?」
話をそらして、場を取り繕う。
北は、中途半端に事情を知っているので(親友の通院先が私の家の近所なので、北が運転手を務めることがある)、黙っている。
個人LINEに
「あの子は不参加で本当にいいの?」
と来た。
「体調次第で、気晴らしになるようなら声をかけてみる。でも、今日は聞けるような状況じゃない」
「了解」
誰も彼も、私よりしっかりしているのに、こういう調整役はいつも私。
「君がいなかったら、このグループはとうに解散していた」
北が昔そう言ったが、そうなのかもしれない。
親友のブレスレット
下田さんに、親友に今すぐ届けることが出来ないが、石の欠けなど今すぐチェックした方がいいか、それとも親友に渡すときでもいいか聞いた。
「しっかり浄化してございます。封を開けられて、確認されるだけなら大丈夫です」
親友にも確認を取って、封を開いた。
写真で何回も見たのに、初めて見るような煌めきで親友のブレスレットは青く輝いた。
![](https://assets.st-note.com/img/1693993770275-3eLXpOeAPn.jpg?width=1200)
こだわっていた「グリーンがかったアクアマリン」も、しっかり使ってある。
ラリマーも、「夏の空のような」という希望通り。
写真をLINEしたらとても喜ぶので、私は自然に言っていた。
「日曜日、ブレスレット、ポストインしようか?」
「いいの!?」
「うん。いい加減実家に給料も取りに行かないと」
「嬉しい」
「前に欲しがっていたモッカイトも持って行くね、木の実」
![](https://assets.st-note.com/img/1693993882211-em9DHmfZsO.jpg?width=1200)
「いいの!やったー」
「こんな時だもん、早く欲しいよねブレスレット」
LINEしながら、ブレスレットやビーズを梱包していく。
短い手紙を書いた。
親友も個人的に下田さんにオーダーしたブレスレットが届いたようだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1693993799026-TKg3cfX5eW.jpg?width=1200)
「とっても甘そうって言われるの」
確かに、普段の親友の趣味ではない。
オーダーをする時から相談を受けていたが、石の意味を知っている私はまた悲しくなった。
「日曜日、持って行くブレスレットとも相性よさそう。重ねづけも可愛いと思う」
「そうだね!」
石を握りしめて、平和を祈った
親友のブレスレットの試作品で没になったものを私が気に入り、自分用に購入した。
![](https://assets.st-note.com/img/1693993839414-Jd0pzxYJWo.jpg?width=1200)
あまり石の意味を考えず、見た目で選んだが、今の私には必要なものだったかもしれない。
ラリマーとアイオライトの組み合わせ
「蓄積されたネガティブな感情を洗い流し、心の混乱と怒りを静める」
ラリマーとアクアマリン
「癒やし」
アイオライトとアクアマリン
「ストレス解消」
最近、ピリピリすることが多く、それで北を巻き込んで苦しめた。
私は透明感のある石が好きで、ラリマーは好まなかったのに、こうやって私のもとにやっていきたラリマーを見ると、深呼吸出来る感じがした。
大粒の透明感があるのに色が濃いアクアマリンも、見ているだけで癒やされる。
「誰も傷つかない世界はどうやって出来るのかな」
北の言葉がリフレインする。
「世界は、こんなに美しいと気がつけば、きっと」
ブレスレットを握りしめて、そう思った。