地域の交流の場をつくる!岐阜県の限界集落でアースバッグを建てた男の想い
みなさんこんにちは!
前回始まったインタビュー企画「アースバッグ&YOU」ですが、たくさんの方に読んでいただけたようで、とても嬉しいです!
さて、今回は第2回目のインタビュー。聞き手は引き続きスギシタとなっちゃんのふたり
インタビューをさせていただくのは「ようへいくん」です!
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ようへいくん:こんにちは、久米 庸平です
スギ:ようへいくんは、2021年の春のワークショップに参加されてましたよね。今はどんな活動をされてるんですか?
ようへいくん:今は、岐阜県郡上市の母袋で「ひねもすのたり」と名付けた自分のフィールドをエコビレッジにするために、いろんな準備を進めているところです
なっちゃん:母袋って郡上市の中でも山の方ですよね
ようへいくん:そうです、山の中にある人口100人くらいの集落ですね。昔から交通の便が悪く、開発も進まなかったことで人口は少ないですけど、裏を返すと母袋には未開発の自然がそのまま残っている。そんな場所です
ようへいくん:この母袋を拠点に2020年の4月から地域おこし協力隊として活動を始め、2023年4月に、その任期を終えたところです。
スギ:任期中にはどんな活動をされてましたか?
「地域おこし」としてのアースバッグ
ようへいくん:僕が3年間の任期を通じて取り組んだのは、地域に新しい交流拠点を作る「ほったて小屋プロジェクト」です。このプロジェクトの一環として、作業小屋からコンポストトイレ、遊具、キャンプ場など、いろんなものを作りました
アースバッグハウスも、その一つです
スギ:地域おこし協力隊の活動の中で、アースバッグハウスを建てた人は、かなり珍しいです!どうしてアースバッグを選んだんですか?
ようへいくん:これは正直にいうと、アースバッグを建てたかったからです(笑)
アースバッグのことは協力隊の活動前から知っていて、いつかやりたい!と思っていたんですが、その活動の中で作る予定はなかったんですよね。
協力隊の活動では、地域の間伐材を利用した小屋作りをやろうと考えていたんですが、ここ数年で間伐材は木質チップなどのバイオマス燃料として活用されることが多くなって、簡単に手に入らなくなってしまったんです
そうなった時に「じゃあアースバッグで小屋を作ろう!」と思い立って、協力隊の会議で承認をもらった上でアースバッグを建てることが決まりました
なっちゃん:アースバッグで地域の交流場所を作ることになったんですね
ようへいくん:そうです、当初の予定とは変わりましたが、結果的にとてもよかったなと思うことは、アースバッグで建てたことで、いろんなメディアに取り上げられ、地域の注目度が高まったことです
おかげで、たくさんの人が「母袋で何か面白いものを作っている家族がいるらしい」って、このフィールドまで足を運んでくれるようになりました
スギ:それはよかったですね!アースバッグやようへいくんのフィールドを見るために人が集まって、そこで新しい交流が生まれたら、まさに描いていた理想そのものですね
ようへいくん:そうなんです
アースバッグを建ててよかったのは、作った後からではなく、作っている途中から人の交流が生まれてきたことです
なっちゃん:それはどういうことですか?
ようへいくん:母袋のアースバッグプロジェクトは、作りはじめの頃こそ全国各地からいろんな人が手伝いに来てくれたけど、後半になるにつれ地域に住む家族やお友達が手伝ってくれるようになったんです
そういう人たちは「アースバッグを学びたい」っていうモチベーションよりは「なんか面白そうだから手伝いに来た」っていうモチベーションで、とても新鮮でした
これが木造軸組の建築だったら、ある程度知識がないと手伝ってもらうのは難しいけど、アースバッグは未経験の人とも一緒に作れるから、そこで自然に交流が生まれやすい
スギ:アースバッグは一種の「土遊び」だから、未経験の人も参加しやすいのがいい点ですよね
ようへいくん:そう、自然に囲まれた土地で子供も大人も一緒になって土を触って、お昼ご飯も一緒に食べる。アースバッグの魅力は作る過程にもあると思いました
内壁もみんなで塗ったから、部分的に色が違うけど、個人的にはそこも気に入ってます
なっちゃん:地域のみんなで作った建物が、将来的にも大切にされていくといいですね
ようへいくん:今でも一緒に作った人たちはよく遊びに来てくれますよ。やっぱり自分で作ったものには思い入れが生まれるからかな。
そういうものは、自然と人に大切にされていくし、地域の中で息づく場所になっていくと思います
スギ:アースバッグを建てるうえで、大変だった点や苦労した点はありましたか?
ようへいくん:とにかく大変だったのは下準備と屋根!
ユンボを借りて整地したり、道具を揃えたり、アースバッグの原料の赤土も合計で20tは必要だったので、それを往復1時間かかる場所に取りに行く作業を10回以上繰り返したり。意外にも準備が大でした
あと、僕はなるべく自然素材を使ったアースバッグを建てたかったので、躯体に防水塗料は塗らず、木で屋根をかけることで防水する予定でしたが、その屋根を「レシプロカル構造」で組みたかったんです
なっちゃん:レシプロカル構造は荷重にも強いし、見た目もかっこいいですよね
ようへいくん:ただこれを作るのは見た目以上に難しかった!(笑)
材料になる丸太を山から切り出してくるのはもちろん、作り方のノウハウが全くなかったので、完成写真を参考にしたり、手に入れられる情報は全部調べて、とにかく手探りでやりました。
なかなか構造が安定せず、組み方を変えたり、丸太の接点を削ったり、いろんな角度から工夫を加えた結果、二週間ほどかかって完成しましたが、その時の達成感はすごかった!!
スギ:苦労した分だけ、完成した時の喜びは大きいですよね
ようへいくん:そうなんです、それが完成しても嬉しいし、その成果が人にも評価されるともっと嬉しくなる。ちなみに、お二人は「ドゥーパ!」っていう雑誌をご存じですか?
なっちゃん:知ってます。DIYのアイデアとか工法を紹介している雑誌ですよね
ようへいくん:実は、僕たちが建てたアースバッグがその「ドゥーパ!」の2023年のDIY大賞でグランプリをいただいたんですよ!
スギ:それはすごい!!
ようへいくん:いろんな仲間たちと苦労して建てたので、これはすごく嬉しかったです
スギ:ちなみに、やらしい話、副賞などもあったんですか?(笑)
ようへいくん:立派な電動工具を一式いただきました、これでまたDIYが捗ります(笑)
なっちゃん:素敵ですね〜、これからはどんなものを建てる予定なんですか?
母袋の大自然の中にサウナを建てる!
ようへいくん:これからは、母袋にサウナを建てる予定です。このサウナは鉄筋なども組み込んで、これまでのDIY経験を活かしながらも、新しいチャレンジになるので、とてもワクワクしてます
なっちゃん:豊かな自然に囲まれた土地で入るサウナは格別でしょうね!
ようへいくん:しかも、サウナを建てる場所のすぐ隣には栗巣川という清流が流れていて、そこがほぼ源流に近いことからすごく冷たいんですよね・・・つまり・・・
蓄熱性の高いアースバッグで建てたサウナを母袋の薪でしっかりと温めて、輻射熱で体の奥から汗をかき、そのまま自然の中に飛び出した勢いで・・・
スギ:キンキンの川に飛び込む・・・
ようへいくん:そういうことです
そして清流のせせらぎと虫たちの合唱を聞きながら、まどろみの外気浴を堪能する。そんなサウナです
なっちゃん:なんて贅沢!
ようへいくん:そのプロジェクトに取り組んでいます、今から完成が楽しみでなりませんよ
スギ:今回のアースバッグはどんな人たちと一緒に建てる予定ですか?
ようへいくん:今回は、僕がワークショップに参加していた時に講師をしてくれた「きっしー」さんや、同じくワークショップ参加者だった方ですね。その時の繋がりで、今もものづくりができるので、本当に参加してよかったと思っています
なっちゃん:アースバッグのワークショップに参加する人たちは、基本的にものづくりが好きな人ばかりですからね
ようへいくん:そうですね。だから、期間中も他の参加者の方とものづくりの話ができるのが嬉しかったです。みんながどんなものを作っていて、どんな生活をしているのか
他にも、ワークショップに来る人の多くは自然が好きだったり、環境保護についてもいろんな意見を持っているので、刺激になりました
スギ:前回インタビューに協力してくれたナミちゃんも、他の参加者との交流が印象に残ったと言ってましたね
ようへいくん:次のサウナ作りのプロジェクトも、ワークショップで知り合った人たちのご縁ですから、そういった意味でも、他の参加者との繋がりができたのは大きかったです
アースバッグ協会のワークショップについて
なっちゃん:では最後に、そのワークショップに参加する人たちに向けてのメッセージをいただいてもいいですか?
ようへいくん:近頃はネットや本を駆使すれば、セルフビルドの情報はたくさん集まりますが、実際に作ってみると上手くいかないことってたくさんあるんです。なので、ワークショップに参加しようと考えている人は、実際に自分のフィールドで作る時のイメージをしながら作ってみるとより身につくはず
ワークショップに参加する時間を作るのが難しい人も多いでしょうけど、行こうか迷っているのであれば、絶対に参加しておいて損はないと思います
あとは、人との出会いを大切にしてほしいですね
せっかく同じタイミングで、同じ目的のために集まった人たちですから、そこから学ぶものはたくさんあるはず。
ものづくりの話から、生き方の話、あるいはリアルにアースバッグを建てるためのお金の話。みんなが真剣にそこに参加しているからこそ、真剣に話し合うことができるし、得るものがある
スギ:ありがとうございます!
なっちゃん:いつか、ようへいくんの母袋のフィールドにも遊びに行かせてもらいますね!
ようへいくん:ぜひ!
アースバッグ協会が主催するワークショップの情報はこちらから!