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VUCA時代のアントレプレナーシップのススメ
元々アパートの一室から創業したスタートアップ出身の私にとっては、勝手な親しみを感じる創業ストーリー、アントレプレナーシップについて、Goodpatch代表の土屋尚史氏にお話を伺った。
土屋氏曰く、デザイナーというより、アントレプレナーシップというアイデンティティの方が強いようて、お話からも、起業家魂をひしひしと感じた。
目次
1)根っからのアントレプレナー、起業に目覚めたある言葉
2)アントレプレナーシップ思考のススメ
①WHYからはじめる
②領域を超える
③逆張り思考
④不撓不屈の精神
1)根っからのアントレプレナー、起業に目覚めたある言葉
土屋氏は、ずっと起業家になると決め、22歳で大学を中退し、デジタルハリウッド大学で、デザインを学んだ。その後、まとまった資金が入ったタイミングで、何から始めるか迷っていたところ、DeNA代表の南場氏に出逢い、こんな言葉をかけられ、いきなり渡米した。
「多国籍軍を作りなさい」
それからは、初めての海外にも関わらず、スタートアップのピッチを毎日のように山のようにみていたそうだ。当時、サンフランシスコでは、UBER、Instagram、Airbnb、Twitterといったスタートアップが勢いづいてきたタイミング、世界の最先端を知ることができた。
そして、海外のUIデザインの美しさに魅了され、日本にもこの波はやってくるだろうと、起業した。初めからデザイナーがいる体制が、日本とは大きく異なっていたよう。
2)アントレプレナーシップ思考のススメ
そのように、Goodpatchを創業された土屋氏に、アントレプレナーシップについて、詳しく伺った。
①WHYからはじめる
WHY
Purpose 目的
Belief 信念
Cause 大義
Story ストーリー
Dream 夢
人は、最終的には「感情」で意思決定をしている。情緒的な価値が重要になっている現代では、Whyがなければ人は動かない。そのため、目的、背景にあるストーリー、信念が大事だと、土屋氏は説く。Goodpatchでも、経営者のWhyを聞くことから始めていると言う。
Simon Sinek氏がTEDで「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」をテーマに語ったゴールデンサークルについて、ご紹介くださった。
Sony創業者の井深大氏も、「革新は、実はたわいのない夢を大切にすることから生まれる。」という言葉を残しているのが、興味深い。
②領域を超える
領域を超えることで、世界を変えられるようになる。例えば、AmazonのAmazon web servicesなどがそうだ。領域を超えるには、コンフォートゾーンから出るチャレンジ精神が必要だ。
これは、Takram田川氏の「越境性」と「超越性」にも繋がるよう。
(参考:イノベーションを起こすチーム・個人の特徴は越境性と超越性)
③逆張り思考
人が考える逆をいくという、逆張り思考。土屋氏は、周りが「スタートアップ案件はお金にならないから避けた方がいい」という時に、むしろ、スタートアップにフォーカスして、受注したそう。時には、ツケで仕事するときもあるほど。でもそれが価値になったと言う。
また、自社オフィスをベルリンに出したのもそう。当時、海外オフィスというと、サンフランシスコか中国か、東南アジアとかだった中、自分が気にいるアプリがあったからという理由で、ヨーロッパに拠点を設けた。すると、ドイツ人がグッドパッチに入社。今では、ベルリン、ミュンヘン、パリに展開し、30名規模に成長した。
こうした逆張りの結果、7年間でビジネスは急拡大。グッドアイデアとバッドアイデアのリンクする箇所がスイートスポットだと言う。
④不撓不屈の精神
「人はトライアンドエラーの数だけ成長する」と、実体験をもとに言う。
例えば、ベンチャー界隈では知らない人はいない、また大企業でも多くの人が利用しているコミュニケーションサービスのSlackも、実は、元はゲーム会社だった。2度のゲーム開発を失敗し、50人いた社員を解雇、残り8名というところで、ゲームからチャットツールへ事業ドメインをピボットし、大成功を収めている。
土屋氏の体験談に基づく、アントレプレナーシップは、チャレンジをするにあたっての勇気を貰えるようなお話だった。私もベンチャーマインドを忘れずに、アントレプレナーシップを養い、これからを生きたいと思う。
情報元:
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第7回 土屋尚史氏 2019/05/29