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壊れた鼻と丁寧な暮らし

3 日前から嗅覚がどこかへ行ってしまった。
12 月頭から鼻や喉の様子はおかしかったのだけれど、特に高熱が出るでもなかったため、「きっとライノ ウイルス由来の風邪だろう」 程度に軽く考えていた。

大人の風邪の大多数はライノ ウイルスが原因で、発熱することは少ないらしい。鼻水から来て、喉や咳に移行する場合があるということだ。多分、風邪にかかっているという意識もないまま行き過ぎることも多いのだと思う。

私は毎年何回かこれにかかっている気がするため、特に気にしていなかった。慢性上咽頭炎持ちでもあるため、症状の原因が風邪なのか上咽頭炎なのか特定できないことも多い。


年末年始、旅行に出ていたのだけれど途中怪しいときがあった。熱はないが体がだるかった。ただ疲れただけかもしれないが。
ホテルで安静にしてからあまりウロウロせずに帰宅して、特に風邪の症状も強く出ていなかったのに、突然においを感じなくなった。

正確に言えば、嗅ぎ取れるにおいが 6% くらいになった。
何かにおいをかいでもすごく弱いというか遠い。幸い味覚に異常はないので食事の楽しみは皆無ではなくなったが、嗅覚は味覚への知覚にも大いに影響を及ぼすため、「総合的な味」 は結構分らない。
ゆえに食事の楽しみが半減したのは間違いない。

『ガキの使い』でやっていた 「きき 〇〇」 (たとえば目隠しして、あるひとつの缶コーヒーを飲んだ後、色んなメーカーの缶コーヒーを 1 口ずつ味わい、それが自分が最初に飲んだ缶コーヒーと同じものかどうかを逐一判断するという企画) などは絶対にできない自信がある。
なんなら目隠しで紅茶と緑茶を飲んでも、どちらがどちらか答えられないかもしれない。

それくらい今私の嗅覚はぶっ壊れてしまった。


そんな私がかねてから食べたかったものがある。
フムスだ。

簡単に言うと中東発のひよこ豆のディップである。
イギリスでベジタリアンの友人が注文していて、少し分けてもらったらものすごくおいしかった。

帰国して自分でもレシピを見ながら作ってみたのだが、どうも違う。
ひよこ豆、にんにく、オリーブオイルが入っているところまでは同じだと思うのだが、レストランで食べたものの方が断然おいしかった。
多分もっと色んなスパイスが入っていたのではないか。

よく見るレシピで使われている材料は大体下記のとおりである。

  • ひよこ豆

  • 白ごま

  • オリーブオイル

ひよこ豆を茹でたあと (または水煮缶を使う)、すりゴマ状にした白ごまとひよこ豆 (とそのゆで汁) をフード プロセッサーなどでペースト状にし、オリーブオイルと塩で調味する。

これでできあがるものは、上記の材料で想像したとおりの味だ。
「ものすごくおいしい!」 と言うには淡白である。豆腐みたいなものだ。もちろん、豆腐にもものすごくおいしいものは存在するので、この表現は正確ではないのだが、言わんとするところは伝わるのではないかと思う。

過去に 1 度フムスを作ったのだが、どうも違った。
けれども今もそう簡単においしいフムスが食べられる環境にいないので、自分で作るしかないのだ。
確か前回のときに余ったひよこ豆があるはずだ。

富澤商店で買えないものはないんじゃないかと思うくらい色々売っている。
……あ、でも意外とフィロ生地は売っていなかった。そうか、富澤商店でも買えないのか。


結構前から食べたい食べたいと思っていたので、「ひよこ豆を 1 晩水に漬ける」 などという作業を待っていられない。
したがって圧力鍋でゴリ押ししてその時間を無視することにした。

30 分も圧力をかけ続けると、8 時間程度の時間を圧縮できるらしい。すごい。宇宙的だし未来的だ。
だから私は圧力鍋が大好きなのだ。おでんもすぐできるし、もちろんコメも圧力鍋で炊いている。
炊飯器も持っていたのだが、圧力鍋で炊くご飯がおいしすぎるし保温も必要ない (ラップにくるんで冷蔵し、レンジで温めた方がおいしい) ので最終的にお払い箱になった。

現在の家に引っ越す際、自分でコンロを用意しなければならなかったため、少しだけ奮発してタイマー付きのものを買った。
これが圧力鍋と大変相性がいいので買ってよかったと思っている。
これでキッチン タイマー要らずになったが、カップ麺のときはコンロのタイマーが使えないので、Google アシスタントにお願いしている。


さて、ゴリ押しでひよこ豆を無理やりやわらかく茹でてみた。
味見をしたところ、少し硬い豆もあった。

そしてここで嗅覚がぶっ壊れた。

夕飯を食べたときに明らかになった。
今まで味わっていた味がしない。昨日食べたエビの佃煮 (東京のどこかの老舗らしい) から甘辛い味しか感じない。

私はこう言ってはなんだけれど、おいしいものを食べることに人生のいちばんの喜びを感じている。
ドラクエ 5 をやったことがある人なら分ると思うが、

ルラフェンという町のある村人が下記のセリフを言う。

人間 やっぱり うまいものを食べてるときが いちばん 幸せだよな。
まっ あとの人生は オマケみたいな もんだよ

ドラクエ V ~ 天空の花嫁 ~


これをプレイしていた当時、私は小学生だったがこの村人が言うことは正しいと思った。
ドラクエ V は私がプレイした最初のドラクエであること、またストーリーの完成度も相まって私の中で最高傑作であることは間違いない。ピエール (仲間のスライムナイト) も大好きだし。
ドラクエ Ⅷ は何回も途中で止まってしまうのに、V だけはスーファミ・DS・プレステ 2 併せて 5 週くらいは遊んでいる気がする。

ドラクエ V は大袈裟でなく、人生の過酷さを教えてくれるゲームなのだ。

ネタバレになるので下記閲覧には注意して欲しい。








  • 主人公母 (実はある国の王妃) が、主人公を産んですぐに魔物にさらわれる

  • 主人公父 (ある国の王)、妻を救い出すために身分を隠して世界中を旅して手がかりを探す。妻を取り戻すためには 「天空の装備」 を身につけた勇者が必要だと知り、天空のつるぎだけは見つけるが、父はこれを装備できなかった

  • 息子 (主人公。自分が王子であることは知らない) と父は一緒に旅を続ける。父親はめちゃくちゃ強いが、ある日別の国のイザコザに巻き込まれ、主人公は自分が人質に取られたせいで父親が目の前で殺されてしまう。父親はおそらくこの敵を倒すことができた

  • 主人公はその別の国の王子とともに、10 年間奴隷の生活を強いられる

  • なんとか奴隷施設から抜け出し、父と母の本当の身分、および父の旅の本当の目的を知る。天空のつるぎも譲り受けるが、主人公はこれを装備できなかった

  • 10 年以上寝食を共にした王子と別れる。ちなみに父親が殺されたのはこの王子のせいでもあるが、彼も気の毒な身の上ではある

  • 母親を取り戻すため、各地に散らばった天空の装備の回収を進める

  • 回収をすすめる間、自分が選んだ花嫁と結婚し、男女双子の子供が生まれる

  • 今度は自分の嫁が魔物にさらわれる

  • 妻を取り戻すため、ダンジョンに向かうがそこには父親の仇がいた。一部、仇はとったのだが最終的にいやらしい中ボス (?) に夫婦で石にされてしまう

  • なんと自分と妻の石像が競売にかけられ、夫婦別々で引き取られてしまう

  • 今度は石像になってお金持ちの家の庭に 9 年…… しかも途中、家主に八つ当たりで暴力を受け、引き倒されて地面に横たわったまま季節が過ぎる……

  • 双子の子供が育ち、自分の石化を解くためにやってきてくれる。感動の再会。そして出し抜けに息子に言われる

「お父さん、聞いて! お父さんが残していった天空の剣。僕、装備できたんだよ!」

と。




「踏んだり蹴ったり」 という言葉をそうおいそれと自分には (おこがましくて) 遣えなくなるくらい踏んだり蹴ったりである。

母親がさらわれてから、父と自分も併せて何十年も旅をしてきたのに、まさか自分が結婚して子を設けない限りはこの世に生まれ得なかった勇者をずっと探していたなんて。

最近のものは知らないが、ドラクエ シリーズで、主人公が勇者じゃない (伝説の血を引いていない) なんてほかにもあるのだろうか?
大体、主人公が勇者なのでイージーに 「ギガデイン!」 とかいって勇者しか使えない魔法を放ったりするのだが、この主人公は息子の方が強いのだ。


あ、ドラクエ V が好きすぎて大幅に脱線してしまったが、そんなわけで小学生の私に色々と人生について教えてくれた作品であった。

ちなみに、ドラクエの主人公は基本喋らない (と思う)。
しかしこの作品では、幼少期の主人公と青年後の主人公がひとことずつ喋るシーンがある。
ここには書かないがそのセリフを思うといつも泣きそうになってしまう。

これだけの過酷な人生を経験してきた主人公が言うからこそ、重みのあるひとことと思うのだ。本当によくできているゲームだ。


でもその中で 「あとの人生はすべてオマケみたいなもの」 と言っている村人がいるのもまたいいではないか。何だか悟りきった感じがする。

さて、私はまったく悟りきれておらずおいしいもの食べたい欲求にまみれ放題だが、そんな私から嗅覚が消えてしまってどうにもこうにも楽しくない。

そんなわけでひよこ豆はゆでたものの作る気が失せたので 2 日間放置してしまった。急いでゆでた意味がまったくなくなった。
腐るのを危惧して昨夜無理やり作ってみたけれど、白ごまが古かったらしく古い油のにおい & 味がするらしい。
嗅覚がどっかへ行ったことの弊害である。腐ったものも嗅ぎ分けられないだろう。

パートナーはもともとゴマが好きではないので、このフムスもきっと食べてはくれない。めちゃくちゃ大量にできてしまったがゴマ 50g は数日間で摂取しても大丈夫な量なのだろうか。
釈迦は 1 日に 1 粒だった気がしたが……。


鼻がバカになったのならと、ちょうど 1 年前の今頃、慢性上咽頭炎を相談の上もらってきたけれどマズすぎて放置していた煎じ薬の漢方をこれ幸いと今飲むべきだと思った。

なるほど煎じているときもほとんど分らない。色々と 10 種以上の生薬が入っているはずだが、分った匂いは鬱金 (ターメリック) くらいである。

最初の処方は特に甘草 (リコリス) が入っているので、飲みたくなかったのだ。途中から抜いてもらった。

嗅覚は不在だが味覚は健在なので、甘草がやたらに舌に絡む感じも 「ウワー😵‍💫」 と思いながら飲んだ。
これでも飲みにくい漢方、おそるべし。
しかし以前はすぐに口直しのお茶飴を食べないと我慢ならなかったのに、今回は特に必要としていなかったので確かに飲みにくさの引き算はおこなわれていた。


嗅覚がないのはまずいのではないかと思って、年始明け早々でごった返している耳鼻科に行き、抗生物質や点鼻薬など、様々な薬をもらってきた。
漢方の当帰芍薬散も処方されたので、当面は煎じ薬から免れることになったが、鼻がおかしくなっている時期に飲み切りたかった気もする。

いつもと違う医師のように見えたけれど、なんとなくマスクから出ている残りの顔に面影があったような気がして 「??? イメチェン??? ((Ꙭ ) チラッ チラッ)」 と何回も医師を見てしまったが、どうも主治医の弟さんだったようだ。

「この人は知っている人か?」 ということがそんなに私に大事だったとは思わなかったが、何回も確認しようとしていたのでよっぽど気になったのだろう。


薬を飲み始めて 2 回分過ぎたが、特に格段に感じるにおいが増えた気はしていない (当たり前)。

「長くかかるかも」 と医師に言われ、2 週間分の薬が出ているので気長に治そうと思う。


しかし、こんなときに限ってタイミング悪く (?) 鉄瓶などを購入してしまった。


旅行先の松島で、岩鋳というところの素敵な鉄瓶が売っていた。
重かったし、サイズも小と大、どちらがいいか決めかねたので、ネットでも買えるのだろうと思ってよく見ずに &  買わずに帰った。

調べてみると、私が欲しかったのは鉄瓶ではなく、鉄の急須であった。鉄の急須は中にほうろうが引いてあるので直火では使えない。
そして急須ならば私はキントーのティーポットを使い倒しているのだ。

かわいいティーポットはもう 10 年前からイギリスやら日本やらで探してはいたのだけれど、↑ が便利すぎてこれに代わるものを使うとは思えない。


でも松島で ↑ を見たとき、アイボリーっぽい鉄瓶 (本当は鉄瓶ではなく鉄急須) なんてあるんだと知り、にわかに欲しくなってしまった。

でも手入れ方法を見ていたらとてもじゃないがキントーのものから代えようと思えなかった。
でも見た目の面ですごく欲しい。
私はあまり物欲はない方だし、今まで色々と買い揃えたので現在ファッションやコスメにかけるお金はほとんどない。
しかし食器やキッチン ツールには結構財布の紐がゆるむタイプだ。

食器は美術品としての側面がある上に実用的だ。
焼き物は特に釉薬が作り出す偶然が唯一無二の価値を生み出していて美しいしおもしろい。


とりあえずなんとなく鉄瓶は欲しいような気がしていて、現在はティファールの電気ケトルで沸かしているが、ていねいにお茶を淹れたいような、そのために鉄瓶が必須であるような気分になってくる。

とりあえず白い鉄急須が直火で使えないことは動かしようのない事実なので、同じ模様の鉄瓶をまず買おう。
しかし欲しい (眺めたい) のは白い鉄急須なので、あれは観賞用に買っておこう。

鉄瓶は錆させないように水気を取る必要があるのだそうだが、これは鉄のフライパンと同じでそのまま火にかけて水を飛ばしてしまえばいいようだ。油も塗らなくていい分、鉄のフライパンより手入れがラクだ。

めんどくさがりの私は 「洗剤で洗わなくていい」 ことが大好きなので、鉄のフライパンや鉄瓶と相性がいいのだろう。

鉄急須 (Amazon では 4 万近くするが、公式オンライン ショップでは 1 万円前後で買える) の 3 号と 5 号、どちらにするか悩みに悩んだ。
店頭で詳しく見てこなかったので、サイズ感や重さなど、文字で見る以外に実感することができなかったのだ。
とりあえず 5 号の鉄瓶が届いてから決めることにした。


↑ 空色 × 銀もかなり悩ましい。

鉄瓶が Amazon から翌日に届き、5 号は結構大きいことが分ったので 3 号を購入した。

フタをして沸かすとフタに水蒸気がたくさん付く上に乾かしづらいので、フタを取って沸かしている。
今のところ問題なし。


あと ↓ も買ってしまった。

漢方薬は 2 日分を 1 回で煎じるのだけれど、2 日目の分はレンジで温めないよう言われている。
金属のパンだと味がしみそうでいつもホーローの子鍋で再加熱しているのだが、ちょっと大きいのだ。
↑ くらいのサイズだとホット ミルクやチャイ、ホット ワインなんかも作りやすそうで買ってみた。


野田琺瑯の ↓ の方が美しいのだけれど、納期と価格で ↑ のにしてしまった。どうしても 10cm が欲しくて 10cm にしてみた。


あと ↓ も美しいのだけれど、150 ~ 200ml 用らしく、さすがにホット ミルクには少ないので見送った。


ちなみに 10cm は 「ミニ五徳」 がないと安定しないらしい。
だから ↓ も買ってみた。


ミルクパンは今日届くが、ミニ五徳は明後日だ。
鉄瓶の底が 9cm くらいなので意外といけるのじゃないかと思っているが、いけなかったらそのまま購入、いけたら (キャンセルが間に合えば) キャンセルしようかなと思っている。

牛乳を切らしたが木曜に届くので昨日 500ml を買い足したが、1L にすべきだったと少し後悔している。

(嗅覚がないせいで) 味が分らないからおにぎりでよくない? みたいな感覚に陥ってしまっている (外食も高級食材ももったいない感じ) が、実際痩せてしまったり栄養失調になったりするパターンもあるらしい。

しかし鼻がぶっ壊れてもきっと丁寧な暮しをしていたらストレスが緩和されていろんな面でプラスになるのではないか。
と、また冬季うつに陥っている気がしたのでいたわる目的も兼ねてキッチン用品を買ってみた。
ホット ミルクやチャイで暖かく過ごすのだ。葛湯なんかもいいに決まっている。

松島で 「萩焼」 と書かれていた素敵な器があったので、「萩はえーと、萩の月 (仙台銘菓) があるから、宮城の焼き物ってことでいいんだっけ?」 と買ってきてしまった。
今回、仙台にも行ったので、仙台最大の銘菓であるこの菓子名は数日前から何度も目にしていた。お土産にも本当によくもらうし。

帰ってからパートナーに 「山口の萩じゃないの?」 と言われて、ああそう言えば山口に行ったとき萩にも行ったのになぁと、ここで私の 「社会科の知識に関して著しく無知」 という欠点が出てしまった。

では 「 萩の月」 とは何なのだ (Ꙭ )?

と思ったら植物の 「萩」 なのか。
「萩に猪」 ならぬ 「萩に月」 なら誤解は生まないが、「萩の月」 と言われると 「琵琶湖の鯉」 みたいな関係に聞こえる。


でも店頭で 2 つの茶碗を見比べ、レジに持って行ったらレジでも最後の在庫を出してくれ、その最後のものがすごく良くてそれにしてもらったので、萩では手に入らなかった一品かもしれない。

松島はさすが日本三景にも選ばれ古くからの観光地であるせいか、またもちろん瑞巌寺の参拝客が来ることからか、元旦から営業しているお店も多く、年末年始に関係なく楽しむことができた。

東北の焼き物はあまり聞いたことがないように思うが、今度は調べてから行きたいと思う。


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