自称”本好き”の呪い
プロフィールカードや履歴書にある「趣味・特技」の欄は何を書いてもしっくりこない。人によって温度感は異なるのだから、せめて「興味関心のある分野」程度にとどめておいてほしい。
ちょうどいいの代表例「読書」という答えでさえも、何十年と自分を縛り続けている。
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自分を本好きだと思ったのは、いつからだろうか。幼稚園の頃から絵本は読んではいたが、当時(1990年代)の未就学児にとっての娯楽はテレビアニメか絵本かぐらいなので、ほとんどの未就学児が本好きと言えるだろう。
確実に覚えているのは、小学1年生の時には「かいけつゾロリ」の虜になっていたこと。クラスメートのやんちゃな男子もゾロリファンだったので、大きい声では言えなかったが、新刊が出るたびに購入していたくらいにはハマっていた。
そして小学2年生の時には青い鳥文庫を読み始めた。私には5歳上の姉がおり、家の本棚には絵本の他に単行本や文庫本といったものが既に並んでいた。同年代と比べると少し早めのデビューだったと思う。1冊目は「パスワード」シリーズ。その次は「いちご」。そして大好きな「夢水清志郎」。大人になった今でも、長身で細身の社会不適合者、つまりは教授が私の好きなタイプだ。ちなみに赤い夢は何のことかよく分かっていない。(所詮その程度の本好きなのである)「若おかみは小学生」「黒魔女さん」も好きだったなぁ。この2作品はご飯や服装の描写が細かくて好きだった。
小学3年生ごろに友達と一緒に「蛇にピアス」のワンシーンを読み、口淫を初めて知った。(ちょっとトラウマ)
小学6年生の時には、将来の夢に「出版社で働く」と書いていた。具体的にどう働きたいか、とは当然ながら考えてはいなかったが「働きマン!」の影響は大きかったと思う。
この頃にはもう本好きだと自称していたような気がする。
中学校では「カラフル」きっかけで森絵都さんにハマり、運動とは縁遠い人間にも関わらずスポ根青春小説「DIVE‼︎」を読破。
中学2年生からは「阪急電車」きっかけで有川浩さん「図書館戦争」シリーズにどっぷりハマる。
綿谷りささんの「蹴りたい背中」もこの頃に読んで、主人公ハツのにな川への感情がいまいち分からなかったが、芥川賞受賞作品を最後まで読んだという達成感のせいかよく覚えている。ちなみに綿谷りささんは社会人になってからハマった。
高校では小説を読む機会が減ったが、漫画は友達と貸し借りしながら読んでいた。少女漫画よりもギャグ漫画が好きだった。ギャグ漫画以外でなら「うた恋い。」という百人一首の超訳漫画が好きだった。話は逸れるが、高校の授業でも古典は暗号を解いてるみたいで好きだった。
大学では学部が文学部だったからか、読書が趣味と話す友達が多かった。辻村深月さんが人気だったが謎の反発心から、ここにきて太宰治を読み始める。本好きというよりも「これ読んどきゃ間違いない」みたいな、一般教養としての読書を始めた気がする。みんなにすごいって思われたい、みたいな。入り口はそんな浅はかな考えではあったが、太宰治の小説は好きだった。「駆け込み訴え」と「皮膚と心」がお気に入りだった。
大学卒業後は出版社ではないにしろ、本に携わる会社で働くようになり、まわりには“真”の本好きがいっそう増えた。本好きを自称できなくなったのはこのへんだろうか。本を読んで「あー楽しかった」だけで終われなくなった。どう楽しいのか、どう良かったのか、語れないと意味がない空気感。書店で本を買うも、自宅の本棚に積んでしまう積読もこの頃から。昔は寝る間も惜しんで読んでいた本なのに。
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今はもう、自分のことを本好きだとは思わない。
書店や図書館を見てワクワクする気持ちはあっても、もう純粋に読書を楽しめなくなっている。
その程度なんだろう。
文章を書き終え、ふと隣の座席に目をやると、競馬四季報を読んでいる幼稚園児がいた。
やはり私の本好きはまだまだだなと思った。
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