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「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」混沌の中に、拳で守る秩序あり

九龍城砦×カンフーアクション 観たいものを詰め込んだ香港映画

(あらすじ)
80年代香港。マフィアとのトラブルにより、治外法権であった九龍城砦へ流れてきた不法移民のチャン・ロッグワン。彼は九龍城砦で匿われ、3人の男たちと兄弟の契りを交わし、次第に家族のように受け入れられる。生まれて初めて居場所を見つけたチャンだったが、やがて九龍城砦を巡る激しい戦いに巻き込まれてゆく――。

近年観たアクション映画ではトップクラスの面白さ。
香港映画のレジェンド達の凄みと、次世代スター達の共闘、そして中堅どころがしっかりと脇を固める感じも素晴らしい。
九龍城砦を再現したセットは役者も観客も完全にその中に入っていけるような完成度だった。

レジェンドと新世代スターの共演

待ってたぜ、サモ・ハン!

サモ・ハンが出てるっ!と思ったのが最初に観たいと思ったきっかけである。
御年73歳。ブルース・リーの時代を知っている人のアクションを映画館で観られるのは幸せなことだと思う。

俊敏な動きは健在。永遠の動けるデブ(尊敬)

アクション監督は谷垣健治氏

「るろうに剣心」など数々の作品でアクションを手掛けた谷垣さん。
武術にあんまり詳しくない人間が見ると目にもとまらぬスピード感と迫力があるが、それでも何をやってるかはなんとなく分かるように作ってくれている気がする。徒手空拳だけでなく、ナイフや日本刀などの武器を使った格闘もあり幅が広い。

少年漫画のような城砦四人組の絆

誰を主人公にしても良さそうな個性あふれる四人組。
闘いの中で絆が深めていく感じをとてもうまく描いている。
自分たちの居場所のため、仲間のために強敵に堂々と挑んでいく姿が胸を打った。
ベテランスターたちの役回りは彼らを後方から支える側だったり、強敵として迎え撃つ側だったりする。
香港映画の未来はお前たちに任せた、でも俺たちもまだまだ負けないぜ。
こんな会話が聞こえてきそうだった。


主役は『九龍城』なのかもしれない

混沌の中に秩序あり――。
19世紀初頭、海賊の襲撃に対抗するためつくられた要塞が、後の戦争で訪れた混乱に飲まれ、1950年代半ばには乱立した高層の違法建築に難民たちが押し寄せるようになった。
人口は爆発的に増加し、畳1枚に3人が暮らしていたと言われるが、97年に行われる英国から中国への香港返還の決定と共に、取り壊しの計画が進むようになる。
93年にはすべての住民が退去。独自の空間として発展した「東洋のカスバ」は94年に完全に撤去された。これはアクション監督の谷垣氏が単身香港に渡った頃だったりする。

変わっていくものと、変わらないもの

プロデューサーのジョン・チョンは「この作品の始まりから終わりまで見届けてきた。子供が成長し、18歳になった瞬間を目にしているような気持ちだ。」と語った。
時代が変わっても、場所が変わっても変わらないものは何だろう?
守りたい人や、その人との絆。それが壊されそうになった時に、それぞれの拳、それぞれの心に宿る力なのかもしれないと思った。

余談。
新宿のバルト9で、割と遅い時間に観たが老若男女問わず席が埋まっているのが印象的だった。往年の香港映画ファンだけでなく、かつての九龍城のように、意志を持つ者への懐の深さで全方位を呑み込んでいく作品だと感じた。


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