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ショートショート「仕事」
薄暗い宇宙船の中、私はホログラフィックコンソールを操作していた。先月発見された惑星から届いたデータを解析するためだ。その惑星は、無数のエネルギーフィールドが絡み合う奇妙な場所で、どんなテクノロジーでも思い通りに動かない。そのため、解析を行うのは高いスキルを持つ者だけに許された仕事だった。
「これで最後だな」
解析が終わると、船内AIが通知を送ってきた。
"作業完了。今回の報酬を決定してください。"
現在の法律では、自分の報酬は、自分で決めるルールだ。何を評価するか、どう計算するかも。高度AIによりシミュレートしながら選択することができた。
今日はいくらにしようかと悩みつつ、椅子に体を沈めた。膨大なデータを処理する集中力と、惑星の電磁フィールドによる体調不良。自分の貢献を正当化する理由はたくさんある。しかし、決めるのは簡単ではなかった。自分でジャッジするのは思いのほか難しい。 考え込む私に、AIがさらに通知を送ってきた。
"他のクルーとの対話が推奨されます。"
対話、か。
私はコンソールを閉じ、船内の休憩室へ向かった。
そこには、別のクルーが数名いた。
「お疲れ。面白いデータが取れたね。」
「ここをさらに分析すると何か見つかるんじゃないか。」
「次のアクション会議が設定されたよ」
仕事の内容はリアルタイムに共有されている。
「いくらにするか決めた?」
隣のクルーが声をかけてきた。
「まだだよ。どうやって決めるべきなんだろうね。」
皆それぞれ違う基準を話し出す。一人は家庭のために必要な金額を重視すると言い、別の一人は船の限られたリソースを考慮して慎重に進むべきだと主張した。仕事の難易度や分析結果から相場を探す者もいる。 どの方法を取っても全員賛成とはならない。
休憩室を出た後、私は最も難しい仕事を放棄し、昨日と同じ数字を入力した。
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